荒尾山には過去6回登っていたが、初めて登った1996年のときこそ荒尾集落側から登っていたのだが、その後は鳥ヶ乢コースか大甲山から足を延ばして訪れるかのどちらかで、とんと荒尾集落側から登っていなかった。その荒尾集落の入口に荒尾山の標識が立っているのを見たとき、改めて荒尾集落から荒尾山を目指したくなった。但し標識には「整備された登山道はありません」と書かれていた。
向かったのは2016年11月の第一土曜日で、朝から青空の広がる日だった。ただ天気は良いものの視界は良いとは言えず、国道29号線から見える山並みはうっすらとしていた。鳥ヶ乢トンネルを抜けて下り坂に入ると、右側に荒尾山の標識が現れた。それを見て荒尾集落への道に入った。集落を抜けて更に北へと向かうと林道走行となり、害獣避けゲートの前に出た。そのそばが広場のようになっていたので、そこに車を止めて歩き出すことにした。ゲートを抜けるとずっと北へと林道を歩いて行った。林道は荒尾川に沿って続いており、ごく緩やかな道だった。周囲の木々の紅葉はほとんど進んでいなかったが、歩くうちに色づきの良い木を見るようになった。その荒尾川沿いは製鉄遺跡が多くあるようで、案内板も立っていた。ゲートから林道終点まで30分。荒尾山に関する標識が立っているものと思っていたのだが、林道終点に着くまで見なかった。また終点にも立っていなかった。その先は有るか無きかの小径が荒尾川に沿って続いていた。それも歩くうちにはっきりしなくなり、ときに沢の中を歩いたりした。いずれ何らかの標識が現れることを期待していたのだが、気が付くと予定よりずっと北まで歩いてしまっていた。途中で右手の尾根を登って荒尾山を目指すつもりだったのに、そのままでは離れる一方だった。ただ戻る気にもならず、そのまま北へと登ってしまうことにした。そして標高にして750m辺りまで来たとき、沢筋歩きが難しくなったため右手の斜面に取り付いた。植林地の急斜面だったので、一歩一歩踏みしめて登ることになった。木に掴まりながらで、手を離すと滑り落ちそうな所もあった。ゆっくりとながら休まず登って行くと、途中で造林用の小径に出会った。小径に出会えたのは有り難かったが、それは水平な道だったので横切るだけにして北の方向へと登りを続けた。沢筋を離れてから30分ほど登ると支尾根に出て尾根歩きとなった。これでずいぶん助かった。その尾根は自然林が多く、沢筋とは違って紅葉が進んでいた。それを見ながらの登りとなり、気分的にもずいぶん楽になった。右手が開けて展望が現れると、そこに見えていたのはこの日の目的の荒尾山だった。けっこう離れて見えており、ちょっと気が重くなったが仕方がないと尾根歩きを続けた。支尾根は登るほどに木々が疎らになり少しは歩き易くなったが、傾斜はさほど緩くはならなかった。それでも紅葉を愛でながらの登りで、良い雰囲気で登って行けた。植松山と荒尾山を結ぶ主尾根に出たのは12時25分のこと。そこはヒルガタワが間近な位置だったので、すぐに荒尾山に向かわず、ヒルガタワで昼休憩をすることにした。そこで主尾根を北西へと歩いた。すぐに小さなピークに着くと、そこは少し展望があったものの、今少し西へと歩いた。次のピークが現れると、そちらのほうが一段と素晴らしい展望地だったので、そこで昼休憩とした。その辺りはヒルガタワのピークと言ってよい所で、4年前の冬にも立ったことを思い出した。ただ展望は良かったが薄モヤがかった視界のため、展望を楽しむとはいかなかった。それでも氷ノ山は近いだけにまずまずの見え具合だった。展望としては山並みを眺めるよりも、近くの尾根がすっかり紅葉していることに目を奪われた。ヒルガタワではその休憩地点より先へは歩かず、休憩を済ませると引き返す形で荒尾山を目指した。まずは荒尾山との鞍部まで220mほど下ることになった。途中までは比較的易しく歩けたが、次第にアセビが増えてきて、ときにかき分けるようにして歩いた。鞍部を過ぎると荒尾山まで150mの登り返しだった。荒尾山が近づくと紅葉の木が増えてきて、また目を楽しませてくれた。荒尾山が近づくと四等三角点(点名・岩野辺)が現れて、そこより7分で荒尾山の山頂に到着した。山頂の気温は12℃ほどだったが、少し強く風が吹いており肌寒かった。そのため小休止しただけで下山とした。下山は鳥ヶ乢コースを下った。こちらの尾根は植林が多いとあって紅葉を楽しむとはいかなかったが、それまでの道と比べると遊歩道を歩いているようなもので、何とも気楽な下りだった。その鳥ヶ乢コースが西の方向から南の方向に変わる地点で、コースを離れて尾根なりに西の方向へと歩いた。荒尾集落に近づくためだった。コースを離れると尾根に道は付いておらず、ヤブ尾根となった。それでも下る一方なので気分は楽だった。尾根ではときおり展望が現れて、植松山が大きく眺められた。まずまずの感じで下っていたところ、途中で倒木地が現れた。間伐された木が放置されている所で、そこを通るのはけっこう煩わしかった。そのうちに尾根ははっきりしなくなり、傾斜も増してきた。そのため歩き易い所を探しながら下ることになり、南の方向へと下った。そして沢筋に下り着くと、そこからは沢沿いを歩いたところ、長くも歩かず林道に合流した。林道は墓坂林道で、地図を見るとそのまま歩けば荒尾集落に出られるようだった。但し駐車地点とは離れてしまうことになるので、荒尾集落が近づいたとき、荒尾川をわたって対岸の荒尾林道に出た。そこから駐車地点までは僅かな距離だった。
こうして荒尾山を周回で歩いたため、トータルで5時間のハイキングになっていた。始めこそ紅葉は少しだけだったが、登るほどに紅葉は見頃となり、展望よりも紅葉を楽しめた一日となった。
(2017/3記)(2020/7改訂) |