TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
藤無山    ふじなしやま 1139.4m 宍粟市・養父市
1/2.5万地図 : 戸倉峠
 
【2010年5月】 No.5 2010-49(TAJI&HM)
 
    須留ヶ峰の尾根より  2007 / 6

 藤無山を初めて登ったのは1992年4月のこと。兵庫の山の情報がまだ少ないときだったが、この藤無山は昭文社の登山地図「氷ノ山」の中に登山コースが記されていた。それを参考にして大屋スキー場から登ったのだが、標高の割には樹相が寂しく、また山頂展望はほとんど無かった。ただ尾根にクマザサがけっこう茂っていたことが印象として残った。その登山コースの印象が今一つだったこともあり、その後の藤無山を登るときは、大屋スキー場コースを避けて、不動滝側から登ったり、一宮町の公文側から登ったりと、出来るだけ自然さの味わえるルートをとっていた。その藤無山だが、北へと延びる尾根の途中にある三角点ピーク(点名・若杉)が以前から少し気になっていた。標高千メートルに近い位置にある三角点との理由だが、そこで久々に大屋スキー場から登ってみることにしたのは2010年5月の新緑の季節だった。
 この日は快晴。視界もけっこう澄んでいた。大屋スキー場の駐車場に着いたのは、9時を回った時間だった。スキー場からは音楽が流れてきていたが、この大屋スキー場は無雪期もグラススキーが出来るようになっており、そのためこの日は営業しているようだった。車はスキー場の入口近い位置、ゲレンデからは一番離れている位置に駐車とした。その位置からはこれから目指す北尾根が間近に見えていた。まずは点名・若杉を目指して、西へと歩き出した。別荘地があり、そのそばを抜けるようにして植林地の斜面に取り付いた。けっこう急な斜面だったが、登っていると足下にイッポンコゴミの新芽が多く見かけられた。その途中で林道に出ることになった。別に無理やり斜面を登らなくとも、少し遠回りになるがスキー場から始まる林道でも来られたようだった。その林道もただ横切るだけで、また急斜面の登りを続けた。その急斜面の木々が程なく人工林から自然林へと変わってきた。一気に周囲は明るくなり、雰囲気が良くなった。そこはまさに新緑の世界だった。淡い緑に包まれた山肌は美しいの一言だった。そのうちに自然と尾根を登るようになり、傾斜も幾分緩んで歩き易くなった。自然林に包まれているため展望は良くはなかったが、木々の隙間からながら左手には藤無山が、右手には氷ノ山が覗いていた。登るうちに足下が落ち葉に覆われ出すと、程なく北尾根に出た。そして南へと僅かに登った位置が、最初の目的地の992mピークだった。測量のためか立木が少し切られているようで、すっきりとした感じになっていたが、特に展望が良いとは言えなかった。木々の空いた所から妙見山が見える程度だった。ただ落ち着いた雰囲気があり、少しの間、休憩とした。もうそこからは南へと尾根歩きを続けるだけだった。尾根は緩やかな上に尾根上の木々は疎らとあって、ごく気楽な感じで歩いて行けた。ときおり木々の間から藤無山が眺められたが、どっしりとしたその姿は頼もしく見えた。その歩き易いままに進んで行けるものと思っていたのだが、植林地を歩くようになったとき、倒木があって少し煩わしくなった。植林は手入れがあまりされていないようだった。前方が見え難いため、方向に注意しながら下って行くと、特に尾根を外れることも無く鞍部に下り着いた。そこには林道が来ており、林道の終点になっていた。またそこは登山口になっており、大屋スキー場コースの登山道はそこから始まっていた。始めはやや急斜面の植林地を登山道が細々と言った感じで続いていたが、急坂を登りきると一気に緩やかになった。登山道もはっきりとしてきて、ぐんと歩き易くなった。そしてクマザサが登山道を囲むようになった。それなら以前と変わらぬ風景と言いたいところだが、クマザサがすっかり枯れていた。鹿の食害なのか葉はかじられて無くなっており、茎のみが茶色く枯れて立つ様は、寂しい光景だった。以前は登るほどに登山道に被さるササを煩わしく思ったものだが、歩くのは何とも気楽なものだった。もう一つ変わったと思われるのは、倒木によるものか周囲の木々に切れ目が多くあり、以前よりも展望が良くなっていた。東の風景がすっきり開けたり、妙見山が全姿を見せたりした。ただ全体としては茶枯れたササによって、藤無山の姿に若々しさが感じられず、もの悲しい感じを受けた。尾根ではまだ新緑は始まったばかりのようで、その新緑の少ないことがもの寂しさを倍加させているようだった。ただ視界が澄んでいたことは救いで、登るほどに氷ノ山が背後に現れて、くっきりとした姿を見せてくれた。尾根には小さなピークがあって、緩いアップダウンもあり、最後にばらけたクマザサの中を歩いて山頂に着いた。歩き始めてから2時間少々、登山口からだと50分ほどだった。この日は快晴とあって、ハイカーとどれぐらい出会うのかと思っていたが、山頂までですれ違ったのは三人ほど、そして山頂は無人だった。意外と少ないと言えそうだった。それも程なく東の尾根側から登ってきたグループが到着したので、少しは賑わうことになった。その山頂からは東の方向に展望があり、須留ヶ峰や段ヶ峰が眺められて、それを見ながら昼食とした。空の色はやや薄かったが、視界はくっきりとしており、良く澄んでいると言えそうだった。その展望を楽しもうと食後は尾根を北に戻って氷ノ山を眺めたり、ササヤブに入って西の方向を眺めたりと、久々の藤無山を楽しんだ。その山頂だが、クマザサはまだ残っているものの、かつての勢いある姿には遠かった。木々も弱々しい感じで、全体として退潮しているように思われた。下山は歩いてきた尾根を引き返した。この下山では展望の良い所を見つけては休んだのだが、氷ノ山や妙見山が眺められるのはもちろんとして、赤谷山がすっきり見えたり、西の尾根が一望出来る場所があったりと、以前と比べると植生が寂しくなったのに反比例して展望は良くなっているようだった。鞍部にある登山口に着くと、後は林道を歩いてスキー場へ下りて行くことにした。その林道がいただけなかった。新しく作られた林道のようで、幅広い道を作ろうとしたためか大規模に山を削っており、赤い地肌が広くむき出しになっていた。それがいたる所で崩壊しており、とても車の通行出来る状態では無かった。その林道が以前からの古びた林道になると、道幅は狭くなって崩壊は見られなくなった。道の雰囲気も落ち着いたものになった。その古い林道部分に入って程なく、スキー場の一番高い位置に着いた。そこからはショートカットコースとしてスキー場の中を下って行った。左手前方のグラススキー場から音楽が聞こえており、グラススキーを楽しむ人の姿が見えていた。始めはゲレンデの縁を歩いていたが、途中からは駐車場方向へとゲレンデの中央を突っ切るようにして下った。空は昼を回った頃より薄雲が西から広がり出していたが、下山を終える頃にはほぼ薄曇りの空に変わっていた。もうずんずんと言った感じで下ったので、林道終点位置からだと30分とかからず駐車場に戻って来た。
 藤無山を大屋スキー場側からこの日は登ったが、往路で通った992mピークを経由して尾根歩きで山頂を目指す方が、一般に紹介されているスキー場のエリアを通るコースよりもハイキングらしさがあって良かったのではと思われた。但し、次に登るとすれば一宮町側のコースが良いのではと思ったりもした。
(2010/6記)(2021/10改訂)
<登山日> 2010年5月15日 大屋スキー場駐車場スタート/10:22〜30点名・若杉/10:54登山口/11:42〜12:35山頂/13:20〜25県境尾根の見える展望地で休憩/13:32登山口/13:大屋スキー場エリアに入る/13:56エンド。
(天気) 朝の空は快晴。一部に薄く雲が見られる程度だった。気温は低めで、始め13℃ほど。尾根に出ると一時は12℃まで下がったが、山頂では陽射しをたっぷり受けて20℃以上には感じられた。空気は爽やかで文句なし。また視界も良く澄んでいた。昼を回ると西から薄雲が広がり出して、薄晴れの空となってきた。下るうちに更に雲は広がって、下山を終えたときは、ほぼ薄曇りとなっていた。気温も13℃まで下がっていた。
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大屋スキー場の入口に近い駐車場に駐車する 西の方向を見ると、992mピークが望まれた 西へと歩き出すと、別荘地内の道に入った
適当に植林地の斜面に取り付いた 一度林道に出たが、横切るだけで植林地に入る 植林地の傾斜はきつかった
植林地ではイッポンコゴミをよく見た 登るうちに植林地は終わり自然林が広がってき
自然と尾根を辿るようになった 新緑がまぶし
かった
傾斜はきつい所があったが、新緑を楽しんだ 木々を通して南に藤無山の山頂を望む ときおり見かけた白い花はヤブデマリのようだった
木々が密になった所を登る 北にも大きな山が見えてきた 氷ノ山だった 尾根が緩やかになったとき、赤テープを見た
主尾根に着くと、落ち葉が積もっていた 992mピークは明るく開けていた 992mピークでは木々を通して妙見山を見る
992mピークを離れて北へと主尾根を歩き出す 植林の切れ目から藤無山がすっきりと望めた のんびり歩ける尾根だった
尾根から大屋スキー場を望む 尾根からは東に須留ヶ峰の尾根を眺められた 次第に倒木混じりの植林地を歩くようになった
尾根の鞍部に着くと、そこまで林道が来ていた
またそこから藤無山の登山道が始まっていた
登山道は始めに植林地を登ることになった け
っこう急坂だった
急坂を登り切ると一気に緩やかになった また
木々が空いてきた
前方が開けて、山頂が望めた 一帯のクマザサは哀れにもすっかり枯れていた クマザサのヤブが消えたので、歩くのは楽だった
    
ときおり倒木が道を塞いだ その辺りの新緑は始まったばかりだった 山頂がだいぶ近づいた
登るほどに新緑から遠のいた 小さなピークを越すとき、背後に氷ノ山が現れた 山頂が間近になると、弱々しいササの中を歩く
山頂が目前になる 山頂には二つの山名標識が立っていた 一宮町に下るコースの方向を見る
山頂では東から南にかけて好展望が広がっていた 左の写真の千ヶ峰付近を大きく見る
須留ヶ峰の尾根を大きく見る 僅かに残るササをかき分けて西に展望を求める 木々の隙間からかろうじて三室山が眺められた

 山頂から北に少し
 戻って、北の山並
 みを眺めた

 立つ位置を変える
 と氷ノ山がすっき
 りと眺められた

     氷ノ山山頂を大き
     く見ると、二つの
     小屋が見えていた
鉢伏山を大きく見る 瀞川山を大きく見る 妙見山を大きく見る
下山は登ってきた北尾根を下る 途中で赤谷山のよく見える位置があった 赤谷山を大きく見る

 下山の途中で
 東に展望が現
 れた

  御祓山を大き
  く見る
ヤブデマリがよく咲いている尾根だった 明るい尾根をパートナーが歩く 藤無山を振り返る

 尾根の鞍部にある登
 山口が近づいたとき
 西に下る小径を見た

 そちらに入ると、西
 の山並みが広く眺め
 られた
上の写真の三室山を大きく見る 登山口のある林道終点部が見えてきた 林道はいたる所で土砂崩れがあった
土砂が林道を寸断している所もあった 以前からある林道に入ると崩壊は無くなった 大屋スキー場の最上部に着く
始めはスキー場の縁を歩くようにして下った 下るうちに左手にグラススキー場が見えてきた 最後はスキー場の真ん中をどんどん下った