但馬の雪山を楽しもうと、2004年2月は1日の三川山に続いて月末の28日は妙見山に向かった。夏道で二度訪れたが、いずれも天気に恵まれず展望を楽しめなかったため、いっそ雪の季節に稜線からの展望を楽しもうとの思いであった。初めての登山時と同じく、八鹿町の日畑集落からのコースで登ることにした。その日畑集落への道を誤り、20分ほどのロスをしてしまった。それでも日畑集落の最奥に車を止めると、9時半過ぎにスタートとなった。集落までの道に雪は見なかったのだが、集落奧から始まる妙見道はすぐに雪を見るようになった。ただここ数日のものかうっすらとしか積もっていなかった。堰堤脇を過ぎて小橋を渡ると山道となった。雪が徐々に増えてきた。そのことよりも気温が上がってきたため、木に付いていた雪が溶け始めて小雨のように降っていた。中腹辺りにある休憩小屋に着いたとき、ワカンを履いた。雪が一気に増えたのは、植林地を抜けて妙見集落が見えてきた辺りで、50センチほどになってきた。集落は冬季は離村するのか、無人のようであった。集落を抜けて名草神社へと、黙々と雪面にトレースを付けながら登って行く。やがて陽に照らされて明るく輝く三重塔が見えて来た。本殿には下山時に立ち寄ることにして、まっすぐに峠への道へと向かった。無雪期ならどうと言うこともないのだろうが、雪で道はすっかり消えており、目印も少ないため、おおよその見当で登って行く。そして峠まで標高にして100メートルほどとなった辺りで、道筋がとうとう分からなくなった。仕方なく稜線までの急斜面を無理やり登って行く。斜面の雪はワカンを履いていても50センチは潜るので、これはかなりの厳しさだった。10歩ほど登っては休憩するの繰り返しをして、なんとか登りきって妙見峠に着いた。神社から50分かかっていた。そこからはスノーハイクの世界だった。クマザサはすっかり雪の下で、緩やかな尾根が山頂へと続くだけだった。歩き出すと、木の間越しに西の展望が覗け、氷ノ山から扇ノ山までパノラマで眺められた。このときの上空は薄雲が広がっていたが、まずまずの晴れで、雪を纏った高峰が白く光っていた。山頂が近づくと一帯はブナ林となり、雪山らしさが更に出てきた。尾根は風も無く暖かく、無垢の雪面に自在にトレースを付けながらの登りだった。まさにスノーハイクの楽しさを満喫している気分だった。そして峠から45分、歩き始めてから3時間15分で山頂に到着した。そこは一段と雪が深く、山名標識の柱は先端だけ覗かせていた。雪によってかさ上げされた分だけ展望は良く、北の蘇武岳方向がすっきりと見えていた。ただそれ以外の方向は、樹林に阻まれていた。まずは雪上で遅めの昼食とした。そして昼寝でもと横になったが、その頃には上空はすっかり曇り空になって少し風も出てきた。かまわず暫くうとうとする。その後、もう少し山頂展望は無いかと、辺りを探ると、冬だけに展望は良くなっており、須留ヶ峰から藤無山、三久安山へと続く尾根が、樹林に阻まれながらも少しは覗くことが出来た。それにしても氷ノ山でもすっきりと見えたなら、文句の無い山頂なのにと惜しまれた。山上でのんびりしていると1時間半ばかりも居たことに気付き、あわてて下山にかかった。同じコースを戻ることにしていたので、自分の歩いたトレースを追うだけなので楽なものだった。空は再び青空が広がり出していた。峠に着くと、その先の急斜面は呆気ないぐらいに楽々と下って行けた。そしてこの下山時では名草神社の境内に立ち寄り、すっかり雪景色となった神社の佇まいを暫し眺めていた。
(2004/3記)(2024/11写真改訂) |