氷ノ山三ノ丸から戸倉峠へは長い尾根が緩やかなまま続いているが、その一角の三角点ピークに宮ノ奥山と山名が付いている。地形図で見る限りでは山頂のイメージは湧いてこないが、見る角度によっては山らしく見えるために名付けられたと考える。ともかくどのような所かと興味を持って、2003年5月連休の最終日に訪れた。このピークの後に足を延ばして氷ノ山登山も視野に入れていたので、戸倉側から氷ノ山林道に入り、坂ノ谷登山口近くまで車を進めた。そしてそこから林道歩きを開始した。この日の朝は某所で山菜取りをしていたため、スタート時は9時半過ぎと遅くなっていた。晴天が5日続きとあって、この日は一段とモヤの強い空になっており、近くの山もはっきりとは見えていなかった。また朝の戸倉峠で気温は既に17度を超えており、今年一番の暑さかと思えた。林道を歩いて宮ノ奥山への最適な取り付き点を探したが、林道の陽射しは強く、歩いているだけで汗がにじんできた。十数分歩いてピークから南に延びる小さな尾根に取り付いた。その地点とピークとの標高差は100mしかなかった。山中に入ったと言うよりも、森の中に入ったと言うのが相応しい長閑な雰囲気が広がっていた。一帯は新緑が萌えだしたばかりの自然林で下草は無く、いたって歩き易かった。それとこの森の中に入った途端、さっと涼しくなってくれたのは良かった。その優しげな雰囲気が三角点まで続いてもらいたいと思いながら歩いて行った。程なく北へと向かっていた尾根が北西方向に向きを変えた。もう僅かな距離で三角点に着くはずだった。辺りにはブナの巨木が点在していた。それに合わせてクマザサも増えてきた。そして次第にクマザサは密生しだした。そのクマザサをかき分けて進むうちに、一帯は平坦地になってしまった。どうやらピークを越してしまったようである。辺りはネマガリダケの様相も帯びてきた。少し戻って三角点を探してみたが、やはり簡単には見つからなかった。色々とうろついたので現在地が分かり辛くなってきた。そこで一度林道に抜け出すことにした。北へ向かって下ったのだが、冬の豪雪を示すように、残雪が一面に残っている所もあった。林道に出て、改めて取り付き点を探した。今度は北側からの最短距離で三角点を目指した。尾根上に出てまた色々と探っていると、目印が付けられている所が見つかった。それを追って行けばと辿ると、何のことはない一度通った所に戻ってしまった。気を取り直して少し尾根の北寄りを探ることにした。するとクマザサが途切れて天然ヒノキの巨木のそばに出た。その辺りだけ平たく開けていた。そしてそこに三等三角点(点名・宮ノ奥)がボツンとあった。何とも呆気ないほどはっきり見えていた。30分程度で見つかるかと考えての三角点探しだったが、結局倍以上の時間がかかってしまった。それにしてもその木陰の快いこと。爽やかな風が渡っており、文句のない涼しさだった。そこで早めの昼食を採ると、涼しさに誘われてまどろんでしまった。そして気が付いたときは既に13時を回っていた。すっかり氷ノ山登山のことを忘れていた。もうこの時刻では遅く、諦めざるを得なかった。まあこういう日も有っても良いかと帰路についた。何とも登山と言うよりもオリエンテーリングになってしまった。
(2003/7記)(2023/9写真改訂) |