TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
落折山 赤谷山) 1216.6m 宍粟市
若桜町(鳥取県)
 おちおりやま    あかたにやま
 
1/2.5万地図 : 戸倉峠
 
【2005年11月】 No.2 2005-76(TAJI&HM)
 
    南西の1180mピークより  2005 / 11

 2005年の晩秋は宍粟の山に浸った。11月5日に音水渓谷側からハサリ山に登り、そして鳥取兵庫の県境尾根を落折山との中間点まで歩いたのだが、その尾根の自然な佇まいに惹かれて、時間が許せばそのまま落折山まで歩いておきたかったの思いで下山した。その思いは翌週も続いており、早速、次の週末となる11月13日に向かった。ところでこの日、現地に着くまでに痛いミスをしてしまった。前週と同じ時間に自宅を出たのだが、20分ほど車を走らせた所で、地形図を忘れてきたのに気が付いたのである。登山靴ぐらいなら忘れて来てもよかったが、地形図は致命的なので、あわてて取りに戻った。約1時間程度のロスである。。それでもたいしたことは無いと気を取り直して、宍粟市へと向かった。この朝もハサリ山登山と同じく快晴で、音水林道を気持ちよく進んで行く。ただ林道周囲の木立が幾分空いたように感じられた。落葉が進んだようである。駐車地点も前週と同じく、音水林道の奥詰めに近い栃谷橋を渡った広場とした。これは下山路としてその広場の奥に延びる支林道で戻ってくることを考えてのことだった。広場には林業関係の人がおり、この一週間の間に霜が降りて、紅葉は見頃を過ぎたことを教えられた。音水林道に戻って歩き始める。前週の下山コースを辿ることにする。最奥の支林道へと入り、その終点からは沢沿いの小径を伝う。但しこの日は沢を奥まで詰めることはせず、途中より県境尾根から派生した支尾根を辿ることにした。この尾根は始めこそ植林地で無理なく登って行けたが、次第にクマザサが現れた。それも疎らなので安心していると、傾斜が増すと共に密生し出した。いずれまた疎らになるのではと期待しながら登って行くと、易しくなるどころか笹は太くなって、ネマガリダケへと変わって来た。更に力を込めてのヤブコギとなった。とうとう県境尾根までその状態で続いた。その県境尾根もネマガリダケだったりクマザサだったりするものの、笹の密生は続いており、遅々として進まない。ただ尾根自体は緩やかな登りで、笹ヤブに雑木林が点々と混じっており、風景としては落ち着いたものだった。木立を通して、音水の山並みも眺められた。 漸く1180mほどのピークに着いたときは12時を回っており、県境尾根に出てから300mに満たない距離に1時間近くかかっていた。まだこの日に歩く県境尾根の1/3しか進んでいない。原因としては密生した笹ヤブのためだが、どうもそのヤブコギで男女の体力差が出るようで、僅かな距離でパートナーが10分ほど遅れてしまうことがあり、そのパートナーの歩く速度に合わせるために、更に時間がかかってしまうわけだった。こうなると朝の1時間のロスが響いてきたが、仕方がない。まずはその1180mピークで一息ついた。そこは杉とブナの巨木が林立しており、いかにも山深さを感じさせる所だった。またこのピークに着いて、この日初めて落折山のピークを目にすることが出来た。山頂にブナの大木が1本見え、その周囲は青々とした笹原である。優しげな山容なのだが、その笹がネマガリダケと考えると、この日の登頂は難しいのではと思えて来た。ただこの先がどうなるのか分からず、14時をタイムリミットとして、ともかく進むことにした。尾根はそこより東方向に折れるのだが、ヤブが濃くて尾根の形がつかめない。そこで適当にヤブコギで下って行くと、笹はクマザサ程度となって尾根が分かり易くなった。また笹の疎らな所も現れて、一息つくことが出来た。そこで一気に進みたいところだったが、パートナーがガス欠(腹ぺこ)状態となっており、焦る気持ちを持ちながらも、コンロに火を起こし、暫しの昼食時とした。昼食を手早く済まして、すぐに尾根歩きを続ける。幸いなことにクマザサが疎らになってきて、歩度が上がって行く。山頂から南東に延びる尾根に合流するやや急坂となった所は、尾根筋がはっきりしており、一気に進めた。そのまま南東尾根までと考えたとき、急にネマガリダケ帯に突っ込んだ。一気に歩度が落ちて、再びネマガリダケとの格闘となった。南東尾根に出ても状況は同じで、時計を見ると14時が迫っていた。このまま山頂までネマガリダケ帯が続くようでは1時間以上かかりそうで、そうなると登頂を断念せざるを得ない。タイムリミットを14時15分として、今少しがんばることにした。出来るだけ進み易いように、足元の僅かなケモノ道を辿るも、その上のネマガリダケはしっかり前方を塞いでいる。ともかく無心になって進んでいるとき、唐突に切り開きに出た。ネマガリダケ帯が2mほどの幅で刈られており、どうやら山頂まで続いている様子である。目印も付けられており、測量のために切り開かれているようだった。切り株の跡を見ると新しくも無く、少し前から出来ていたようである。この突然の開放感にただただ唖然として一度に肩の力が抜ける思いだったが、こうなると一気に山頂に向かう。そして最初に決めていたタイムリミットの14時きっかりに山頂に着いた。山頂も三角点を中心に直径10mほどが刈られており、ネマガリダケ帯にぽっかりと大穴が開いたと言う風だった。これで素晴らしい展望が広がるはずだが、やはりネマガリダケは丈が高いだけに、あまり展望が良いとは言えなかった。そしてここで気が付いたのは、山頂中央の大ブナの無いことだった。遠くから見えていた大ブナは少し離れたブナだったようで、以前にあった中央の大ブナはと言うと、無惨に切り倒されて、ズタズタに寸断されていた。少し寂しい思いでその太い幹の上に立ってみた。5,60cm高くなっただけだが、一気に展望が広がった。やはり大きく見えるのは北の氷ノ山で、ずいぶんと近くに見えていた。そして北東から南東にかけては1000m級の山並みが広がっている。翻って南西を見れば三室山がひときわ高い。この日の苦労した分だけの十分な展望を得て、登頂の充実感がじんわりと湧いてきた。ただこの日は黄砂の影響なのか視界は濁っており、薄ぼんやりとしていたのは残念ではあった。下山のことを考えて、山頂は15分ほど過ごしただけで後にする。下山路としては南東尾根で戻ることを考えていた。再び切り開き道を歩くのだが、下り坂とあって展望は良く、黒尾山から三室山までがすっきりと見えていた。そして南東尾根を辿るべく、切り開き道を離れてネマガリダケ尾根に突っ込んだ。ところで切り開き道のことだが、分かれた位置からも東の方向に向かっており、どうやら戸倉スキー場側から延びて来ているように思われた。(この切り開き道は山頂を過ぎて更に北へと続いていた。)南東尾根に入ってからは、1162mピークまではこの尾根を辿ろうとネマガリダケをかき分けていたが、その密集具合にこの日の下山はかなり厳しいと思われた。そこで往路で歩いた県境尾根を戻ることにした。少し下ってネマガリダケ帯を抜け疎らなクマザサ帯に変わると、程なく南方向への小さな尾根が始まった。その尾根を下ることにした。その尾根の先は沢の源頭部だが、やがて林道につながることになる。尾根はクマザサに覆われていたが、さほど密生しておらず、そこに大杉が点々と立っていた。大杉を伝いながら適度なヤブコギで下ることになり、この日ではけっこう楽な尾根だった。次第にクマザサは少なくなり、楽な所を選んで歩くうちに沢に下り着いた。後は沢筋を伝って行く。沢の中を歩いたり、右岸と左岸を行ったり来たりと変化があって、この沢歩きもけっこう面白かった。ただ二個所ほどナメになった所があって、そこは高巻きをする必要があった。30分ほどの沢筋歩きで林道終点に着く。後は音水林道から分かれたその支林道を歩いて行く。林道は深くえぐられた所やクマザサが茂って元の姿に戻っている所もあって、とうてい車が進めそうには無かった。そこに落葉したばかりの枯れ葉が敷き詰められていた。沢音だけが聞こえる中を、サクサクと落ち葉を踏みしめながら、駐車地点へと戻って行った。百名山など有名山の登山も楽しいが、この日のようにヤブコギの苦労の後に辿り着く山も達成感があって、本当に楽しいものである。ただパートナーは暫くネマガリダケは見たくもないと言っていたが。
 落折山登山のコースのことだが、この日の経路を翻って思うに、山頂近くで見た切り開き道を起点から歩くのが一番簡単なことなのだが、この日の下山で歩いた経路はなかなか面白いのではと思われた。つまり音水林道の栃谷橋の位置より歩き始め、林道が終われば沢歩き、そして大杉の尾根を登りつめて県境尾根に出る。そこからは疎らなクマザサがあって、やがてネマガリダケのジャングルに突っ込む。それも長くはなく、やがて切り開き道に出て一気に山頂に着くというコースである。登山時間も片道2時間までと思われ、読図さえ出来れば充実感が味わえるのではと思われた。
(2005/11記)(2010/3改訂)(2021/2改訂2)
<登山日> 2005年11月13日 10:05スタート/10:22本谷橋/10:40林道終点/11:12県境尾根合流/12:06〜21[1180m]ピーク/尾根の途中で昼食12:54まで/13:40南尾根合流/13:53切り開き道合流/14:00〜15山頂/14:40大杉の尾根に入る/15:25林道終点/15:51エンド。
(天気) 朝は快晴。南の空に薄く掃いたような雲が見られるだけで、上空は青空が広がっていた。風も無く、爽やかそのものの朝だった。ただ視界は少しうっすらとしていた。昼頃より空は濁って来て、薄晴れから次第に薄曇りへ、そして山頂に着いたときはよどみの強い曇り空になっていた。この空のため気温は上がらず、ほぼ10℃ほどで推移していた。ただ山頂でも風は無く、少し肌寒く感じる程度だった。
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始めに登った尾根は、終始笹ヤブだった 県境尾根に出てもネマガリダケのヤブコギが続いた 前方が見えても、はっきりと位置をつかめなかった
どこまでササヤブが続くのかの思いだった ときおり視界が開けて音水の山並みが眺められた 登り坂が続いてピークに出ると、大ブナに出会った

 そこは1180m
 ピークのようで、
 ブナの大木が林立
 していた

   1180mピークに
   来て漸く落折山を望
   むことが出来た
1180mピークを越すと、落折山を見ながら尾根を歩いて行けた ササヤブが切れて、のんびり歩ける所もあった 付いてくるパートナーを見る また厳しいササヤブと出会ってしまいこの日の山頂を諦めかけたとき、突然切り開きの道に出会った
切り開きの道は、とうとう山頂まで続いていた 山頂のネマガリダケも広く刈られていた 山頂の二等三角点を見る
 山頂を象徴していた
 ブナの大木は、なぜ
 か無惨に切り倒され
 ていた

      切り倒されたブナの
      上に立って展望を得
      る 北に氷ノ山を望
      む

 東に展望を得る モ
 ヤの強い生憎の視界
 だったが、広く眺め
 られた

   東に三久安山を見る
南西から西にかけてを見る 左の写真の三室山を大きく見る

 下山は同じ道を
 辿るべく、切り
 開きの道を引き
 返した

  このとき南の方向
  に展望を得た
尾根を離れて沢に下り着いたときは一安心だった 帰路では音水渓谷で終わりに近い紅葉を楽しんだ やはりカエデの紅葉が美しい