TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
赤谷山 落折山) 1216.6m 宍粟市
若桜町(鳥取県)
 あかたにやま    おちおりやま
1/2.5万地図 : 戸倉峠
 
【2008年11月】 No.3 2008-103(TAJI&HM)
 
    阿舎利山より  2007 / 11

 三室山から氷ノ山へと続く兵庫鳥取県境尾根が戸倉峠で一度高度を下げるとき、その手前でピークを作っているのが赤谷山。2008年4月に宍粟市によって宍粟50山が制定されたとき、これまで「赤谷の頭」や鳥取側の名である「落折山」と呼んでいたこの山を「赤谷山」で選んでおり、どうやら兵庫ではこの名で定着しそうである。その赤谷山を二度登っていたが、いずれもヤブコギで登っており、一般的な登山コースのようである戸倉峠側からは登っていなかった。そこで紅葉の季節にそのコースを歩いてみようと考えていたのだが、赤谷山と呼ばれるようになった2008年に実行とした。ただじっくりと練っての計画では無く、急な思い付きのようなものだった。前日に仏ノ尾に登っており、そのときに奥但馬の山々が程良く紅葉していたため、奥播州の色付きも気になってきた。そして赤谷山を登るのも悪くないと思った次第である。そのコースとして往路は戸倉峠コースとするものの、ピストン登山はしたくなかった。そこで下山ルートはどこが良いかと「戸倉峠」の地図を開いた。戸倉スキー場への尾根は戻るのに時間がかかると思ったとき、三角点記号が目に止まった。点名・宮向(標高998m)である。その三角点記号のある尾根は赤谷山の北にある小さなピークから始まっており、うまく歩けば戸倉峠に近い位置に下り着けそうだった。これでコースは決まったと思い、赤谷山の初めてのコースを歩くことにちょっぴりうれしくなった。
 11月2日の天気予報は晴れ。国道29号線を北上して戸倉峠へと順調に向かっていたが、どうも空模様が天気予報と違っていた。薄曇りから薄晴れと言った感じで、青空は見えなかった。新戸倉トンネルが近づくと、ガードマンが立っていた。トンネルは舗装工事が行われており、一方通行規制をしていたためだった。そのトンネルの手前より旧トンネル跡へと使われなくなった旧国道が分かれている。戸倉峠コースをピストンするのであれば、車を旧トンネルの手前まで進めれば良いのだが、この日は周回コースをとるため、旧国道に入ってすぐの空き地に駐車とした。そして一車線の舗装路として残っている旧国道を歩き始めた。気温は11℃と少し低めで、晩秋の清々しさがあった。ただ辺りの紅葉は遅れているようで、色付きは浅かった。旧国道は旧トンネルのそばより林道につながっていた。その林道は通行止めとなっており、その位置から地道に変わっていた。その林道を歩いて峠へと向かう。駐車地点の位置から峠までは標高差で200mほどあるので、林道を歩く頃には、周囲の木立の色付きも進んでいた。そして峠が近くなったとき、登山口の標識を見た。ごく最近に立てられたようで、新しさがあった。その位置から尾根へは本当は分かり難いはずなのだが、ピンクの目印テープが付けられており、特に地形を気にせずとも登って行けた。急坂にはロープも付けられていた。尾根を歩くようになると、冷たさのある南風を受けるようになった。気温も少し下がって10℃を切ろうとしていた。尾根の木立は最初は植林が目立っていたのだが、程なく尾根の東側は自然林に変わった。前方右手に1150mピークが見えてくると、そちらは紅葉の見ごろを迎えていた。その頃には空はうっすら青空も見られるようになったが、全体としては薄晴れの印象だった。標高が1000メートルに近づいてくると、尾根は緩くなって歩くのは楽になった。それにしてもこのコースはヤブの様子は無かった。登山コースとして多少は整備されたかもしれないが、それよりもクマザサが枯れてしまったと言うのが正解のようで、この山もヤブ山から自然林の広がるのどかな山に変貌しようとしているようだった。これはハイカーにとってはうれしいことだが、少し寂しい気持ちもあった。尾根の紅葉は更に進んでおり、八分程度の色付きに思われた。その様を眺めながらのんびり歩いているとき、左手の山肌が赤くなっているのが見えた。その一角はカエデの木が多いようで、それが見事な色付きを見せていた。思わず足を止めて見惚れてしまった。また尾根にはブナの大木が点在しており、色付いたブナがあると足を止めて暫し見上げていた。山頂が近づくとネマガリダケの多い所も現れたが、そこも切り開かれており、ヤブコギをすることは無かった。そして良い雰囲気のまま山頂に近づき、登山口の標識の位置から1時間半での山頂到着となった。まさに手頃なハイキングだった。山頂には一組の夫婦が先に着いて休んでいた。ネマガリダケが刈られて切り開かれた山頂となってからは、これで二度目の山頂。ここに立って眺めるのはやはり氷ノ山だった。薄晴れの空に稜線をくっきりと見せていた。この赤谷山から眺める姿はどっしりとしており、氷ノ山の好きな姿の一つと言えた。他の方向はネマガリダケにじゃまをされながらも、西に東にまずまずの展望だった。3年前の前回は薄ぼんやりとした視界で展望を十分に楽しめなかったが、この日は薄曇りから薄晴れの天気ながらも、視界は悪くはなかった。陰影の少ない視界だったが、山の形ははっきり見えていた。ネマガリダケに視界を妨げられる方向は、手頃な木に登ればすっきり眺められて、この赤谷山山頂を楽しんだ。それにしても残念なのはこの山頂の主だったブナの大木が切られてしまったことで、それが山頂に分断された姿で横たわっているのは哀れだった。そのブナの上に立ったとき目を惹いたのが、北東に見える尾根だった。その尾根が鮮やかに色付いており、まさに赤谷山の名に相応しい色をしていた。その尾根はと地図を広げると、それが下山で予定していた点名・宮向のある尾根だと分かると、ちょっとうれしくなった。この赤谷山山頂で過ごしたのは1時間ほど。12時を15分過ぎた時間に離れることにした。その頃には氷ノ山の上にうっすらと青空が見えており、南の空には太陽が淡く輪郭を見せるようになっていた。県境尾根を引き返す形で歩き出す。手前の1190mピークが近づいたとき、東の方向へと適当に県境尾根を離れた。程なく尾根の形がはっきりして東へと尾根上を歩くようになった。ヤブではないかと心配していたのだが、そのようなことは全く無く、至って歩き易い尾根だった。灌木も少なくクマザサもほとんど無く、ごく気楽に下って行けた。ときどき測量用の目印テープも見えた。これは歩き易いと安心していると、ちょっとヤブっぽくなって傾斜がきつくなってきた。きつい所は無いはずなので、知らぬうちに尾根を外れたようだった。正しい尾根が右手に見えており、軌道修正する。その尾根に戻ってからは、本当に気楽なハイキングになった。赤谷山山頂から見えた通りに木立の紅葉は素晴らしく、まさに紅葉ハイキングだった。その木立に取り囲まれるため展望は無かったが、赤や黄に染められた木立をただ眺めているだけで楽しかった。尾根もひたすら緩やかで言うこと無し。陽射しは現れたり消えたりで、現れたときは森がさっと明るくなった。その自然林を通り抜ける形で東へと歩いて、小さなピークに立った。そこは一帯の木が切られて広やかになっていた。そして中央に小さな三角点が置かれていた。点名・宮向のピークだった。そこに着いて一休みとする。さほど展望は無かったが、南西に赤谷山の山頂が見えていた。そこまでは気楽に歩いて来られたが、その先は尾根が二手に分かれている。一度「戸倉峠」の地図を開いて地形を頭に描いた。そしてイメージを作ってから北への尾根を下って行く。漸く下り坂となったが、尾根筋はすっきりして相変わらず歩ける尾根だった。また測量の目印テープも続いていた。ただ周囲の木立は植林地になっており、もう後は下ることに専念することにした。下りきった鞍部で標高は810m。そこから少し登り返して北西への小さな尾根に入った。この尾根は下るほどに傾斜がきつくなり、また尾根筋もはっきりしなくなった。ただ植林地とあって掴まる木が多くあったので、ゆっくり下ることを心がけたこともあったので、無難に沢そばに下り着いた。後は沢そばを歩いて国道に出れば良いのだが、こういう小さな沢ではうまく沢沿いを歩けるかがポイントとなるが、この沢には幸い小径が付いていた。もう国道までは近いはずなので、この小径は続いているものと確信する。その通りで、何度か沢を横切ったり小さな滝のそばを通ることもあったが、小径は細々とながらも消えること無く続いてくれた。そして願い通りに国道29号線に無事合流した。そこには工事用の看板が立っており、300mの文字が書かれていた。工事中の新戸倉トンネルまで300mの位置と言うことで、駐車地点までごく近い位置だった。計画通りに歩けたことにほっとするとともに、この日のコースが赤谷山を周回で楽しむのに一番無難であり、また楽しいコースではとの考えを強くした。
 ところでこの日の赤谷山山頂では楽しい出会いがあった。着いたときに一組の夫婦がいたことは先に書いたが、こちらが着いて程なく東の戸倉スキー場からの尾根で、二人の登山者が賑やかに登ってきた。どこかで見たような姿と思いながら見ていたのだが、途中からひょっとするとHP「山であそぼっ」で見る島田さんではと思えてきた。声をかけるとその通りで、もう一人はコンビでよく登山される向井さんのようだった。二人とも山大好きの楽しい人たちでした。
(2008/11記)(2021/2改訂)
<登山日> 2008年11月2日 9:20新戸倉トンネルそばスタート/9:51戸倉峠登山口/10:43[1143m]ピーク/11:15〜12:15山頂/13:37〜50点名・宮向/14:30〜36尾根の鞍部/14:48沢に下り着く/15:00エンド。
(天気) 薄晴れ。ときに陽射しが現れたり、逆に薄曇りになることもあった。気温は朝のうちは11℃ほど、昼には14℃まで上がる。尾根を歩き始めたときは少しあった風も、山頂に着く頃には弱まっており、少し肌寒いかと思える程度になった。視界はまずまず良し。但し陽射しが無いので、うっすらとして鮮やかさは無かった。
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旧国道の分岐点から歩き始めた 旧戸倉トンネルを見る トンネルを見る位置を過ぎると、林道歩きとなった
林道を歩いて行くと左手に登山口が現れた 尾根への道ははっきりしておらず目印テープを
追う
尾根に出ると、落ち着きのある雰囲気となった
この辺りの木立は紅葉が始まりかけだった 南西に見る1150mピークは紅葉が進んでいた 尾根は植林地になることもあった
ブナの大木を目にするようになった 黄色く色付いたブナの葉を見る 左は自然林、右は植林の尾根を歩く
鮮やかなカエデを見るようになった ブナの大木が風景に落ち着きを与えている ブナとササの尾根を歩いて行く
左手にはっとする紅葉が目を惹いた 近づくと見事に色付いたカエデの群落だった 見れば見るほどきれいだった
落ち葉の散り敷いた尾根道を進む ササの茂る所も切り開かれていた 山頂が近づいて振り返ると氷ノ山が覗いていた
山頂が目前になった 山頂は前回より落ち着きが出ていた 北に見る氷ノ山は大きかった

 山頂から西の山並
 みを見る ネマガ
 リダケを越して三
 室山から東山まで
 が眺められた
山頂より東に少し下った位置に手頃な木があった それに登ると東に向かって大展望が開けた
上の写真の右に続く風景を見る 方向は南東から南西となる
氷ノ山山頂を大きく見る 阿舎利山を大きく見る 西の東山を大きく見る

 山頂の切り倒され
 たブナの上に立つ

 北東に見える尾根
 がすっかり紅葉し
 ていた

 その尾根をよく見
 ると、下山で予定
 していた北東尾根
 だった
氷ノ山を眺めながら山頂を離れた 北東尾根に入るとヤブの様子は全く無かった さっそく紅葉のお出迎えだった
尾根には優しい小径が続いた まさに紅葉ハイキングだった 周囲は紅葉のスクリーンが広がる
尾根ではブナもよく見かけた ブナを見上げるのも楽しかった 紅葉のカエデを見る
三角点ピークに着く 一帯の木は切られていた 三角点(点名・宮向)を見る 三角点ピークからは赤谷山山頂が望めた
赤谷山山頂を大きく見る 三角点ピークを離れると植林地を下った 下山途中での一度東に展望が開けた
急斜面の植林地を下って沢に下り着いた 小さな滝のそばを通る 国道に合流するとトンネルまで300mだった