兵庫の雪山で再訪したいと思うコースの一つは、赤谷山の戸倉スキー場コースだった。東尾根を登って県境尾根に合流すると、前方が一気に開けて真っ白な尾根が忽然にと言った感じで眼前に現れる。その白い尾根を踏みながら一歩一歩山頂に近づいて行くのだが。雪山に来て良かったとしみじみと思えるときだった。その思いを味わいたく2019年も残雪の赤谷山を目指した。例年残雪期の雪の量は分かり難いが、最近ではスキー場の営業期間から推測している。2019年は戸倉スキー場の営業は3月に入ってすぐに終わったようだった。そこで雪解けは早いと判断して、3月第二土曜日に赤谷山へと向かった。この日は快晴で澄んだ青空が広がっており、絶好の登山日和だった。雪は少ないと判断したのだが、波賀町に入って大甲山が見えると、その山頂はまだ白さが残っていた。これなら赤谷山山頂はまだまだ白いのではと考えを改めた。戸倉スキー場に着くと、数名の人影を見た。営業を終えていたが、どうやら設備の点検が行われているようだった。振子沢ゲレンデを見ると、雪は地表をうっすら覆う程度で、滑走は全く出来ない状態だった。但しこの日の朝は冷え込んでいたため雪だけでなく地表も凍っていた。滑らないように注意しながら振子沢ゲレンデの緩やかな所を登って、スキー場上部へと向かった。高丸ゲレンデも地表が多く現れており、さほど雪を踏まずとも登って行けた。スキー場を過ぎて戸倉基地局が建つ880mピークに出るとmその先から山頂へと尾根歩きを開始した。尾根にも雪は少なく無雪期と変わらず歩けたが、雪解け直後とあって斜面はぬかるんでおり、けっこう滑り易い状態になっていた。その尾根に徐々に雪が増えてきた。真っ白な雪で、前日にでも降ったのではと思えた。それでも積雪は数センチ程度だったので、潜ることもなく進めた。新雪とあって雪を踏むとキュッキュと音がしていた。その雪が10センチを越えるようになって靴が潜りだしたので、漸くスノーシューを履いた。但しスノーシュー嫌いのパートナーはツボ足のままだった。スノーシューを履くと雪面歩きは一気に楽になった。おかげで雪を気にせず登り易そうな所を登った。雪面にトレースは全くなく、あるのは小動物の足跡のみだった。また木の影が雪面に広がることもあった。尾根はほぼ緩やかな上にずっと自然林で、その自然林にブナが増えてきた。自然林を通して右手に見える白い山は氷ノ山だった。尾根の傾斜が増してきてしっかり登るようになり、前方に見える尾根へと近づいた。その尾根が鳥取県との県境尾根で、戸倉基地局から1時間半ほど歩いて合流となった。そこは1180m地点で、前方には期待通りに真っ白な尾根が山頂まで続いているのが眺められた。その純白の風景を眺めながら山頂へと一歩一歩近づいた。山頂に着いたのは歩き始めてから2時間20分後で、ほぼ例年通りだった。少しは地表が見えているのではと思っていたが、それは無くすっかり真っ白な山頂だった。ただ雪は少ないようで、積雪は30センチ程度ではと思えた。北からのコースにもトレースは無く、無垢の白さの中で展望を楽しんだ。澄んだ青空とあって視界も良く、氷ノ山がくっきりと眺められた。西にはくらますと東山の並ぶ姿を見たが、その右手後方には鷲峰山も見えていた。おそらく氷ノ山からならこの日は大山がはっきり見えていたのではと思えた。山頂は展望を楽しむには良かったが、風がけっこう冷たく感じられた。気温を見ると0℃まで下がっていた。その冷たさもあって山頂では20分少々過ごしただけで下山に向かった。下山は往路を戻ってピストン登山とした。下山は足は楽だったが、尾根の気温が上がってきたこともあってか朝よりも滑り易くなっていた。そのため雪が消えた辺りで二度ほど滑ってズボンを汚してしまった。まずは気楽な下りを続けて山頂から2時間とかからず駐車場に戻ってきた。ずっと快晴の下で登山を楽しめたことに感謝しながら戸倉スキー場を後にした。
(2019/3記) |