TAJIHM の 兵庫の山めぐり <北但
 
仏ノ尾    ほとけのお 1227m 香美町・新温泉町
 
1/2.5万地図 : 扇ノ山
 
【2007年3月】 No.2 2007-28(TAJI&HM)
 
    青ヶ丸より  2008 / 4

 但馬の高峰で遠くから見て一目で分かる山としては氷ノ山と扇ノ山が挙げられそうだが、この仏ノ尾と青ヶ丸の二つが並ぶ姿も多くの山から眺められ、北但馬の山岳風景の中では目立っているのではと思われる。この仏ノ尾と青ヶ丸は冬山登山でこそ面白い所で、豪雪地帯にあるだけに氷ノ山に劣らない雪山を楽しめる所になっている。2007年3月に入って但馬の山は雪化粧をし直したため、3月も後半の21日になって、この冬初めての雪山として氷ノ山を楽しんだ。そうなると急に雪山に目覚めてしまい、下山を終えるとすぐに次の雪山に登りたくなった。そして久々に仏ノ尾も悪くないと思ったものである。ところが週末の24,25日はどちらも雨の予想で、その次の週となると仕事で行けそうもない。そこで一日おいた23日に休暇を取って仏ノ尾登山を決行することにした。氷ノ山登山から二日後のことだった。前回1995年の登山は旧・美方町の最奥の集落、佐坊集落から始まる林道をアプローチにして登ったが、改めて地図を見てもどうもそのコース以外は日帰りは無理のようで、今回もほぼ同じルートを辿ることにした。
 姫路を離れたのは6時過ぎのこと。同じ兵庫県でも香美町はけっこう距離があり、佐坊集落に入ったときは9時が近くなっていた。足慣らしで林道歩きをする考えであったため、車は仏ノ尾林道に入って僅かに進んだ所にあった駐車スペースに止めた。林道には雪が残っていたが、車のワダチがあり、車の通行はもう出来ているようだった。スノーシューをザックにくくりつけてスタートした。連日晴れの日が続いていたためか、この日の空も快晴だったが、視界は薄ぼんやりとしており、すっかり春の空だった。歩き始めてすぐに南に展望の開けた所があり、そこから見えた鉢伏山は、白っぽい空を背景にうっすらとしか見えていなかった。林道は緩やかなまま続いており、少しずつ雪の量は増えたが、よく陽の当たる所はすっかり消えていた。進むうちに青ヶ丸と仏ノ尾が見えて来た。どちらも山頂こそ白いものの尾根は黒く見えており、3月に雪があったとは言え雪の量は少ないようだった。林道は次第に仏ノ尾の東側へと回り込んで行った。予定として仏ノ尾の山頂から南東に延びる尾根を登ることにしていたため、その尾根端と思える位置に近づいたとき、登り易そうな所を選んで山裾に取り付いた。そこは雪はほとんど付いておらず、クマザサがすっかり顔を出していた。そのクマザサを掴みながら登って行くと、尾根上に出た所で展望が良くなった。そして分かったのは一つ手前の尾根を登っていたことだった。北西に仏ノ尾が見えており、その山頂からの尾根を目で辿ると、今立つ尾根の北の尾根に続いていた。少しがっかりしたがたいして離れていなかったので、気を取り直してその北隣の尾根との鞍部へと下りた。そこはすっかり雪に覆われていたが、幅広の道が西へと続いていた。その道を辿ると農小屋の前に出た。道はその小屋の前を過ぎてジグザグに登り出した。一帯は段状になっており、雪に覆われていた。農地のように見えたが、もう耕作されていないのかススキが伸び放題だった。そのそばを道は続いていたが、どうも時間ばかりかかるので、途中からは仏ノ尾に向かって直線的に登って行った。やがて山中に入り、辺りは自然林の広がる風景となった。雪も増えて漸くスノーシューが履けることになった。始めはブナの混じる林の中を適当に歩いている風だったが、次第にはっきりと尾根を追えるようになった。マイナーな山だけにトレースとは無縁の登山で、一歩一歩を自分で付けて行くしかなかった。トレースは無くとも緩やかな登りだったため、ゆっくりと歩いておれば問題無く進んで行けた。やがて小さなコブを越すと、その先は杉の植林地を登ることになった。そして次第に傾斜が増して来た。そうなると俄然厳しい登りとなった。この日の雪質は湿雪で、急坂となるとスノーシューを履いていても一歩一歩が10センチ以上潜ることになった。しかも木に掴まりながらの登りで、それが長々と続いた。地図を見ると急坂は山頂の近くまで150mの標高差で続くようだった。数歩登っては一呼吸を入れるの繰り返しとなり、周りの様子に目を向けることよりも、ただ歩を進めることだけを考えて登って行った。やがて辺りの樹林が自然林に変わり、いくぶん傾斜も緩くなって来たので、もうそろそろ山頂かと期待していると、その緩い傾斜のまま今暫く登ることになり、いつ着くのかと焦りの気持ちが出だした頃に、漸く山頂到着となった。スノーシュー歩行を始めてから1時間半ほど経っていた。山頂と言っても仏ノ尾は三角点の無い山頂で、しかも地表はすっかり雪の下のため、一番高い所を山頂と思うしかなかった。その山頂は広く雪面の現れている所あり、ブナの木々の繁っている所ありと、見るからに自然のままの雰囲気だった。しかも風も無く暖かい陽射しに包まれていると、もうほんわかと心まで温かくなり、先ほどまでの登りの辛さなどすぐに消えてしまった。そして山頂に立っているうれしさだけが心に広がって来た。ひと息ついたところで山頂散策を楽しむことにした。仏ノ尾の山頂は東と西に分かれており、広く雪面の広がっているのが東側で、西側はブナの巨木が一帯を占めていた。もう急坂は無いのでスノーシューできままに歩き回ることが出来た。人の訪れの少ない山の持つ自然なままの雰囲気は良いもので、聞こえてくるのは小鳥のさえずりだけだった。ただ12年前に比べると木々が繁ったようで、展望は良いとは言えなかった。雪の量の少ないこともあるが、扇ノ山にしても青ヶ丸、氷ノ山にしても、木々の切れ目から眺められるだけだった。その展望のことよりも大きなブナを眺めての雪の散策は、雪山ならでは楽しさだった。このひたすら静かな仏ノ尾の山頂で昼のひとときを過ごした後、下山とした。下山は登って来たコースを引き返した。雪山の下山は楽なもので、自分の足跡を辿るのみ。急坂は逆に一気に下れることになり、楽々と下って行けた。この下りは展望を楽しめることになり、杉木立の切れた所からは鉢伏山から氷ノ山へと続く雄大な尾根が眺められた。そしてひたすら尾根なりに下って行った。樹林帯を抜けると段状の荒れ地に出て、そこを更に突っ切ると、雪に覆われた農道に出た。そしてその先で仏ノ尾林道に合流した。この下山コースが往路として考えていたコースで、これで次回は間違わずに登れそうだった。後は林道をひたすら歩いて戻るのみだったが、この一日で林道の雪は一気に減ったようで、朝と比べると半分近くに減ったのではと思えた。そのためでもないだろうが、道ばたにフキノトウがそこかしこで芽を出していた。
(2007/4記)(2015/1改訂)(2021/12改訂2)
<登山日> 2007年3月23日 9:05スタート/9:55林道を離れる/10:30尾根を間違えて谷に下りる/12:37〜13:20山頂/14:47車道に下り着く/14:54林道合流/16:00エンド。
(天気) 快晴、但し視界は春霞と呼べそうな淡いもので、遠くは薄ぼんやりとして判然としていなかった。気温は9℃、少し風があったが、ほとんど気にならなかった。陽射しは春のものだった。
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佐坊集落の外れまで来ると、仏ノ尾林道が始まった 林道入口に登山口標識を見た 木々の隙間からすぐに見えてきたのは青ヶ丸だった
程なく鉢伏山も望めた この日はモヤの強い視界だっ
林道に雪が増えて来たが、10センチと積もっていな
かった
また鉢伏山の姿が眺められた
林道の木々が減って、青ヶ丸が見えてきた 樹林が切れたとき、西にはっきりと展望が現れた 左の写真に写る青ヶ丸を大きく見る
林道を進んで行くと、前方に尾根が見えてきた その
尾根が仏ノ尾山頂に通じる尾根と思ってしまった
尾根に着くと手頃な所に取り付いた 後は適当に木々
の間を登って行った
雪の量は少なかった
展望の良い所に出てみると、登る予定だった尾根は一
つ北に見える尾根だと分かった
軌道修正で谷筋に下りると、西に向かう道があった 
その先に農小屋が見えていた
予定していた山頂から南東に延びる尾根の端に着いて
山頂を目指せることになった
少し登るとブナの林となり、ようやくスノーシューで
軽快に歩けるようになった
登るうちに尾根がはっきりしてきたが、次第に急坂に
なって来た
周囲は杉の植林地に変わって来た
山頂が近づくと、自然林に変わった 木々の隙間から近くの尾根を見る 山頂は雪とブナの世界だった
ササは雪に隠されているとあって、どこでも歩けた 山頂を気ままに歩き回った 山頂のブナ林を見る
ブナの大木を見上げる 山頂より北西に扇ノ山を見る 扇ノ山を大きく見る
山頂より南東に鉢伏山を見る 北へと続く尾根の方向を見る 南西に青ヶ丸を見る
下山は南東に下るとあって、鉢伏山から氷ノ山へと続く尾根が眺められた 鉢伏山の左手に瀞川山を見ることもあった
鉢伏山を大きく見る 下山中に山頂の方向を振り返った 下山の尾根で雪面に延びる木立の影を見る

 尾根なりに下って
 行くと、平らな所
 に出た 農地のよ
 うだったが荒れ地
 になっていた

   林道が近づくと真
   っ直ぐな農道に出
   た
林道を戻って行く 佐坊集落が近づいてきた 鉢伏山が朝よりもはっきり見えていた