扇ノ山は見る角度によっては大ズッコとの双耳峰のように見えることがある。その大ズッコにも登ってみたいとなると河合谷高原からの県境尾根コースとなる。三度目の扇ノ山はこのコースで、01年11月23日と10年前と同じ日に訪れた。雲一つ無い快晴の日だったが、好天が続いていたためかこの日は一段とモヤがかっており、視界は薄ぼんやりとしていた。温泉町海上の集落を抜けると、車道はそのまま林道・海上線となって上山高原、扇ノ山に延びて行く。この道は終始舗装路で走りやすかった。兵庫県側の登山口そばの空き地に駐車して歩き始めたのは10時前。登山口より遊歩道と呼べるような歩きやすい道(中国自然歩道)が終始続いていた。急坂も無く、全くファミリー向けと言いたいようなコースだった。登り始めてすぐに小ズッコ小屋が現れた。車道が間近まであるので避難小屋としてはさほど意味は無いように思えたが、海上集落からの登山のときや冬期を考えるとなかなか良い場所にあると思えた。ただ小ズッコの名に値するピークはどの辺りを指しているのかがよく分からなかった。暫く緩い上り坂が続いていたが、周囲の木立ははごく普通の雑木林からブナ林へと変わってきた。ブナは既に落葉を済ませていたが、裸木の様も独特の曲がり具合があって面白いものだった。やがて前方にブナ林を通して、大ズッコの丸やかなピークが見えてきた。そしてはっきりとした登り坂となった。大ズッコのピークに着くと、そこはすっかりブナの林で覆われており、展望はほとんど利かなかった。そのまま休まず扇ノ山を目指した。前方の山頂に小さく小屋が見えて来た。この扇ノ山への登りも大したことは無く、階段状の遊歩道を登って行く。山頂手前に展望台が作られており、この日初めての展望を得た。但しそこから見えるのは鳥取方面のみであり、あいにくのモヤのきつい視界で海は全く見えなかった。程なく山頂に着いた。のんびりと歩いたのだが、1時間とかかっていなかった。山頂の避難小屋は建て替えられており、二階建ての明るい建物に変わっていた。山頂には誰も着いておらず、小屋の前のベンチで休憩とした。休憩場所としては十分な広さがあり、明るく開けているのだが、周りを取り囲むブナなどの雑木が育っており、展望は良いとは言えなかった。はっきり分かるのは氷ノ山ぐらいか。そこで小屋の二階に上がって展望を得ることにした。上がってみると東の展望が良く、水池から論山の尾根が眺められたが、仏ノ尾、青ヶ丸、鉢伏山は樹林の上に山頂部を覗かせているだけだった。すかっとした展望は諦めて、外のベンチに戻って休憩を続けた。程なく途中で抜いた登山者や他のコースの登山者が着いて、山頂は賑わい出した。その後も続々と人が訪れてベンチも一杯となって来たので、それを潮時に下山とした。同じルートで戻って行ったのだが、山頂で出会った人数と同じぐらいの人と大ズッコまでですれ違った。久しぶりの扇ノ山だったが、少々オーバーユースぎみではと思えた。これも登山コースが簡単なためであろう。このコースを歩いての感想は、とにかく森林浴と徹して、ブナ林を愛でながらの遊歩道歩きを楽しむのが一番かと思えた。
(2001/12記)(2008/4改訂)(2022/2改訂2) |