初めて赤倉山の山頂に立ったのは2003年6月のことで、そのときは氷ノ山を登った序でに立ち寄ってのことだった。二度目は3年後の2006年5月のこと。その日の目的は鳥取県若桜町での山菜採りだった。その山菜採りの前に簡単な山歩きを楽しもうと、八東町の城山を登った。標高わずか350mほどの低山でもあり、小径でごく簡単に山頂に立てるものと考えていたのだが、それが見事外れてヤブコギ登山になってしまった。下山を終えたときはもう11時前だった。その城山登山が少々消化不良気味であったため、朝のうちは雲の広がる空だったが、次第に晴れて来た空を見て、もう一山登ってみるのも悪く無いと思えてきた。山菜採りだけでは1時間もすれば飽きるとも思えて、2時間程度で往復出来る山は無いかと考えた。ただ若桜の山はけっこう厳しい山が多いため、簡単な山はすぐには決められなかった。それも氷ノ山の方向を見るうちに、赤倉山を登るのも悪く無いと思えてきた。標高は1300mを越えるが、氷ノ山越まで登ればそこから僅かな距離なので、2時間では無理でも、2時間半以内ではピストン出来るのではと思えた。そこで早速、舂米集落へと向かった。国道482号線を走って舂米集落を抜けると、まだ雪解け期とあって、国道は氷山命水の近くで通行止めになっていた。その位置から旧道に入って氷山命水の前を通ると、すぐに氷ノ山越コースの登山口に出た。そこで近くの路肩に駐車とした。早速登山道を登り始めるも、いきなり登山道は雪に隠されてしまった。雪と言っても30センチも無かったが、登山口からもう雪とは誤算だった。ただ雪は固くなっており、潜る心配は無かった。少しコースが分かり難くなっており、前方を見極めながら進んで行った。やがてキャンプ場からの道と合流すると、雪はほとんど無くなり、コースもはっきり見えて楽になった。後はぬかるみや所々に残る雪に注意するだけで、気楽なハイキングとなった。登ることでは問題は無くなったが、上空が怪しくなってきた。てっきり晴れてくると思っていたのだが、昼を過ぎて雲が再び増えてきた。登山コースは登るほどに楽になり、丸太の階段道もあってすっかり遊歩道の雰囲気だった。そして40分少々で氷ノ山越に到着となった。氷ノ山を見ると、心配していた通り山頂にはガスがかかり出していた。これでは前回の赤倉山登山の二の舞になりそうだった。ただ天気には逆らえないので、ここまで来た限りは予定通り赤倉山を目指すことにした。その前に氷ノ山越の避難小屋前にあるベンチに座って、軽く昼食とした。辺りには雪が多く残っており、登山口で見た雪と言い、冬に降った雪の量がは多かったように思われた。その雪も赤倉山に向かう登山道には残っていなかった。その登山道は赤倉山のピーク近くを横切っており、ピークに一番近いポイントに氷ノ山越から数分で着いた。後は山頂を目指してネマガリダケに覆われた斜面を登るだけだった。距離は大したことは無いので、一気に登って行った。ヤブとは言ってもさほど密生していなかったので、手でかき分ける程度で登って行けた。そして10分ももがけば、もう山頂のそばだった。このピークには三角点が無いので、山頂に近づいて一番高い所を山頂と考えるしかなかった。その最高点と思われる所に立つと、そこには赤テープが付いており、三角点もどきの標石も置かれていた。その辺りのネマガリダケは減っており、アセビなどの灌木やブナの木があって、場所を選べば展望が有りそうだった。そこで少し山頂一帯を探ってみた。すると標石に近い所で北に展望を得た。そこは樹林にぽっかりと穴が空いたような空間で、広くは無い展望だったが、扇ノ山から青ヶ丸、仏ノ尾と、北に並ぶ高峰がすっきりと望まれた。そちらは陽射しもあって、青ヶ丸の山腹が照らされていた。そのうちに赤倉山の上空の雲が割れて、陽が射してきた。氷ノ山はどうなっているのかと木々の隙間から眺めると、山頂のガスは消えようとしていた。今少しすっきり見たいと尾根を西へと歩いてみた。すると数十メートルも歩かないうちに、南が急斜面となって少し展望が開けた。そこからはまずまずと言った感じで氷ノ山が眺められた。山頂ははっきり現れており、三ノ丸から大段へと続く尾根も眺められた。氷ノ山はやはり北から眺める方が雄大さがあると思えた。陣鉢山も眺めたかったが、そちらは木々の隙間からでしか眺められなかった。もう目的も達したので下山に向かうだけだったが、この下山で少し手こずってしまった。すんなり最短距離で登山道に出れば良かったのだが、尾根なりに氷ノ山越へ下るのも悪く無いと思えて歩いたところ、次第に急峻な舂米集落側に逸れてしまい、登山道に戻るのに、登りの倍の時間ほどネマガリダケのヤブコギをしてしまった。漸く登山道に出たときは、氷ノ山越の間近だった。後は疲れた身体を登山口へと向けて、元気なく戻って行った。ところでこの日の目的はあくまでも山菜採りだったが、麓が近づいた頃より急に上空に黒雲が広がってきた。そして車に着くのを待っていたかのように小雨が降ってきた。何とも気まぐれな天気である。その雨を見て山菜採りの気持ちは萎んでしまった。もう気持ちは帰る方向に向かってしまい、若桜の山を後にした。結局この日は、登山のために若桜町を訪れたことになってしまった。
(2006/6記)(2025/8写真改訂) |