後山は主に兵庫県側から登っていたので、久々に岡山県側から登ろうと向かったのは2016年10月の第三土曜日のことだった。朝から澄んだ青空の広がる、まさに秋晴れと呼ぶのが相応しい空だった。鳥取道を大原ICで降り、国道373号線から国道429号線へと走った。車道が山中へと入ると後山キャンプ場の標識が現れたので、後は標識に従ってキャンプ場に向かった。林道走行となり、9時50分にキャンプ場の駐車場に到着となった。広い駐車場には他に車は見えず、どうやら静かなハイキングになりそうだった。登山口は駐車場から100mほど離れた位置で、船木山登山口となっていた。船木山まで2kmだった。始めに階段の道がありその先は植林地だったが、すぐに終わって自然林の中を歩くようになった。程なく沢沿いを登るようになり、良い雰囲気の中を登山道は続いていた。但し石ころが多くあって易しく歩けるとは言えず、足下に注意を払いながら歩くことになった。登るうちに沢を横切ることがあり、それが二度、三度とあった。その後は沢筋を離れて植林地を登るようになったが、一度沢に近づくことがあった。植林地を抜ける頃には尾根歩きとなり、船木山までの距離は600mほどとなった。尾根歩きとなって登山道はほぼ真っ直ぐ北に向かっており、右手が自然林で左手が植林となることが多かった。足下は丸太の階段道になっていたが、丸太はほぼ朽ちようとしていた。その古びた丸太も確か23年前に登ったときは真新しさを感じて登ったことを思い出した。登るうちに周囲にクマザサが見られるようになり、そのクマザサは始めはほぼ枯れようとしていたのに、登るうちに青々と茂るようになってきた。尾根が緩んでくると稜線が間近になってきた。そして稜線に出て僅かな距離で船木山に到着した。そこまでキャンプ場から80分が経っていた。涼しさを感じる季節になったこともあり、ほぼ休憩をとらずに歩いて来られた。この日は快晴の上に視界は良く澄んでおり、普段ならほとんど見えない瀬戸の島々も眺められた。小休止の後、後山に向かった。ここまで木々に色付きはほとんど見られなかったのだが、稜線のブナの木は多くが色付き始めており見頃のものも見られた。また歩くうちに北の方向に展望が現れて、氷ノ山や三室山がくっきりと見えていた。その風景を眺めながら、また前方に見える後山が次第に近づく様を眺めながらの稜線歩きは楽しかった。後山山頂が間近になると、山頂の祠が見えて来た。そして後山到着は船木山から23分だった。山頂には他に一人のハイカーを見るのみで、静かな山頂だった。山頂に着いて東の展望が現れると、そちらも粟鹿山まではっきり見えており、本当にこの日は素晴らしい登山日和だった。木陰こそ少しひんやりとしていたものの、三角点の辺りは陽射しを十分に受けて暖かく、その陽射しを受けながら昼休憩とした。その間に先着者はいなくなり、後から来る人も無くパートナーと二人きりで昼どきを過ごすことになった。そして40分余りの休憩の後、下山に移った。下山は往路を戻るのみ。再び展望と色付き始めた稜線の木々を楽しみながら下った。船木山までで数人のハイカーとすれ違ったが、船木山から先ではもう出会う人は無かった。どうも快晴の後山を楽しむ人は少ないようだった。沢沿いまで下りて来ると石ころが多くなって足下に注意を払ったものの、下る一方とあって気楽な下りだった。おかげで下山は1時間半で駐車場に戻ってきた。下山後は日名倉山のベルピールの丘へと移動して、改めて後山の姿を眺めて余韻に浸った。
(2016/11記)(2018/5改訂)(2020/5改訂2) |