暑い季節に登りたい山となると、木陰が多く標高もそこそこある山と考えるが、2008年は7月に入って一気に猛暑となった。そこで登ったのが千種町と波賀町の町境尾根にある竹呂山だった。その竹呂山は期待通りに森の美しい山で、木陰を十分に楽しむことが出来た。ただ竹呂山は展望の悪い山で、無理やり木に登って展望を得ることにした。そして北に見えたのが三室山だった。ごく近い位置に一段と高くそびえる三室山を見て、なぜか急に登りたくなった。考えてみると最後に登ってから6年経っていた。それも冬山で、雪の無い季節となると10年近く開いていそうだった。計画ではこの冬に三室山の再訪を考えていたが、無雪期も悪くないと思えてきた。また冬山の下見にもなりそうだった。
向かったのは2週間後の7月21日。このところ晴天が続いており、この日も当然晴れるものと早朝の6時半に自宅を出たところ、空は薄黒く曇っていた。どうせ土用の薄曇りでそのうちに晴れるだろうと考えながら車を進めて行くと、その通りに次第に青空も見えて来た。これで一安心と思って鳥ヶ乢を越えて千種町に入ったところ、天気が一気に変化してきて空はすっかり曇り空になってしまった。まず見えるはずの植松山はガスで全く見えなかった。次に見える笛石山も山頂をガスに隠されていた。そうなると後山も三室山もガスに包まれていた。これでは展望登山は期待出来そうもなかったが、この日の目的として冬山のコース下見があるので、予定通り登ることにした。またガスの中を涼しく登れることに期待した。車を三室高原へと進めて、三室山登山口へと向かった。これまでは三室ノ滝のそばとなる三室高原入口から歩いていたが、この日は今少し上の位置になる三室山登山口からとした。そこに着いてみると、何か雰囲気が違っていた。ただ緩やかな丘と駐車場があるだけだった。確か青少年野外活動センターがあったはずだが、それが消えてしまっていた。知らない間に取り壊されたようで、何か別の場所に来た感じがした。車は駐車場の一角に止めた。まだ時間は8時を過ぎたばかりとあって、駐車場には他に車は見えなかった。上空はガスの空で、三室山は中腹から上がガス帯だった。晴れそうな兆しは見えなかった。歩き出すと始めに緩い坂で遊歩道が続き、それが終わると坂が少しきつくなった。朝と言えども気温は27℃ほどあり、すぐに汗となった。程なくコースは東へと向かい、沢沿いコースに合流した。沢沿いを歩くようになると、そこは沢風があって一気に涼しくなった。気温も24℃まで下がってきた。沢音を聞きながらで雰囲気は悪くなかった。その沢沿い道は長くは続かず、沢から離れ出すと周囲は植林地とあって平凡な雰囲気になった。南西尾根を登るようになっても周囲は植林が続いた。そして中腹を過ぎるとガスが見られるようになった。どうやら天気は朝に見たままのようだった。それまでも涼しかったが、ガスの中となって一段と涼しさが出てきた。またクマザサが次第に現れてきた。標高1200m地点まで来ると周囲はすっかりガスで、気温は22℃まで下がっていた。ガスのためにクマザサが濡れており、ズボンの裾を濡らすようになった。登山道の周囲はまだ植林が見られたが、その先より次第に自然林が増えてきた。道そばに大きな岩が見られるようになると、その先で岩の一つにクサリがかかっていた。簡単なクサリ場だったが、巻き道も付いていた。山頂が近づくと草付きの斜面が現れた。そこからは好展望が得られるはずだがガスで何も見えなかった。そこより登山道に被さるネマガリダケを押し除けながら進むと山頂に出た。歩き始めてから95分だった。暑さに苦しむことも無くごく普通に登って来られた感じだった。山頂もすっかりガスで、ちょっと涼し過ぎると思われる風が吹いていた。ときに肌寒さも感じるほどだった。その山頂が以前の記憶と比べると北の方向がすっきりしているように思われた。以前はネマガリダケが視界を遮っていたはずだったが、いつ切られたのかすっきりと開けていた。雪の季節こそ好展望の山頂も無雪期は北の展望は悪いと思っていただけに、これは意外だった。ガスで全く何も見えなかったが、晴れた日には北に氷ノ山がすっきりと望まれるのではと思われた。山頂には20分ほど止まっていただけで、10時を回って下山とした。下山は往路を辿るのみ。この下山中に歩きながら思ったのだが、三室山は標高もあり登山道もはっきりして以前から有名な山だが、登山の楽しさとなると二週間前に歩いた竹呂山の方が尾根を歩く楽しさがずっとあったのではと思えた。最近は雪山としてしか三室山を登っていなかったので、こうして夏道で登ると植林の多さがどうも気になると感じながらの下山だった。
(2008/8記)(2014/4改訂)(2020/11改訂2) |