TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨
 
氷ノ山三ノ丸 1464m 若桜町(鳥取県)
養父市・宍粟市
 ひょうのせんさんのまる
1/2.5万地図 : 氷ノ山
 
【2010年2月】 2010-22(TAJI)
 
    赤谷山の尾根より  2010 / 2

 氷ノ山は冬になると真っ白な姿を見せてくれるが、辺り一面が雪原となるのは氷ノ山山頂一帯と共に、三ノ丸一帯も負けてはいない。その三ノ丸へのコースは、播州側からだと坂ノ谷コースとなる。無雪期こそまずまず歩かれるが、冬期は氷ノ山林道が雪に覆われるため、国道29号線のそばから歩くことになり、片道5時間ほどのコースになってしまうので、歩く人はぐんと減って山スキー登山が主体となる。その坂ノ谷コースを冬期に何度か訪れていたが、それは林道の雪が少ない1月前半か4月に入ってのことで、2,3月の時期は歩いていなかった。そこでヤマメ茶屋を起点にスノーシューでひたすら歩いてみるのも面白いのではと考えて向かったのは、2010年2月の最終日となる日曜日のことだった。
 自宅を離れたのは少し薄暗さの残る6時半過ぎで、空は良く晴れていた。どうもパートナーは日曜日は用事が多くあってなかなか同行してくれないので、この日は単独行で向かうことになった。下山が遅くなることを考えて、ヘッドランプの準備は忘れなかった。順調に北へと走ったが、宍粟市の北部は曇り空だった。晴れてくることを期待して向かって行った。新戸倉トンネルが近づいたとき、氷ノ山林道に入ると、予想通りに除雪はヤマメ茶屋までだった。そのヤマメ茶屋より少し戻った位置に小橋があるが、そのそばの空き地に駐車とした。そしてヤマメ茶屋のそばよりスノーシューを履いてのスタートだった。雪は30センチ以上ありそうだったが、この一週間の暖かさでかなり溶けているようで、歩くと少し潜る感じだった。新雪の潜る感じなら良いのだが、残雪期の雪はいきなり潜ることがあり、少し足が疲れることになった。その雪も林道に水の流れが出来ている所では消えており、そうなるとスノーシューは邪魔だった。ただ雪の消えている距離は長くは無かった。そうやって1kmほど進んだとき、突然後から車がやって来た。オフロード仕様のジムニーだった。多い所では50センチ以上はありそうな雪を乗り越えてきていたので少々驚かされたが、すぐ先の位置で止まってしまった。やはり無理と言うものである。また静かになった林道を黙々と進む。その林道の雪面にはトレースが付いていた。スキーのトレースで二人分あったが、スキー跡が小刻みな感じだったので、ミニスキーかも知れなかった。トレースとしては歩かれたばかりのようで、こちらの先を進んでいるようだった。羊ヶ滝の入口を過ぎると、漸く上り坂になってきたが、雪は数十センチあるかと思うと陽当たりの良い所は消えており、どうもスムーズにスノーシュー歩きは出来なかった。その林道歩きの間に天気は確実に良くなっているようで、始めは上空に少しだけ青空が見られるだけだったのに、途中からは強く陽射しを受けるようになった。このまま快晴になる感じでもあった。そうなると木々に付いていた雪が溶けて、いっせいに雨粒となって落ちてきた。小雨の中を歩いているようなものなので、雨具を着て歩いた。ただすっかり晴れるとはならず、また上空をガス雲が広がったりした。坂ノ谷コースの登山口に着いたのは、スタートしてから2時間が迫る時間だった。一時間半ぐらいで着くことを想定していたのだが、少し歩き難い雪だったこともあって時間がかかってしまったようだった。登山口からは始めに植林の中を登って行く。傾斜地を登って行くが、スムーズに足を運べるので、林道よりも楽になったと言えそうだった。スキートレースが付いていたが、コースに入ってからは登り易そうな所を登って行った。コースには目印が付いていたので、ときおりそれを確認してコースから外れないようにと注意をした。植林地を抜けると傾斜は緩やかになり、自然林の風景へと変わった。標識が現れて、そこには氷ノ山山頂まで5.5kmと書かれていた。空は青空が現れているものの、雲が半分以上を占めており、なかなかすっきりとは晴れてくれなかった。前方を見ると、そちらはまだガス雲が残っていた。そのうちに快晴になるのではと思いながら進んだが、どうも雲が増えてくるようだった。陽射しの消えていることが多くなり、やがて上空は曇り空になってしまった。更に周囲にガスがうっすらとながら漂い出した。そのとき前方に2名の登山者が止まっているのが見えた。先行してスキートレースを付けていた登山者のようだったが、その様子から先へ進むのを諦めたようだった。追いついてみると、熟年の夫婦だった。これまでこの季節にその年代の登山者を見ることは無かったので、ちょっと驚かされた。そこからは自分が付けるトレースだけとなった。周囲はブナの大木も見られるようになって、雰囲気としては悪くないのだが、ガスは確実に濃くなってきた。やがて視界は数十メートル程度になってしまい、薄暗い中を登って行く。目印も見失いがちになったが、方向を定めて真っ直ぐに登って行った。そしてときおり標識を見て安心した。そのうちに見えるのは十数メートルまでとなり、ホワイトアウト状態になってきた。周囲は緩やかな丘状なので、どちらが山頂方向なのか掴み難い状態だった。方向だけを誤らないように登って行った。三ノ丸までどれぐらいの距離が残っているのか気になりだしたとき、突然スキーヤーに出会った。二人連れの若者で、この日に氷ノ山を登って、三ノ丸経由で下っているとのことだった。これでこの先は確実にスキートレースが付いていることになった。但しスキートレースはくねくねと付いているので、それを辿るわけにはいかず、やはり方向を定めて登って行くしかなかった。そしてときおりスキートレースと交差した。そのトレースだけで無く、登山コースの番号札が付いた木も見られて、行き先に間違いのないことを確認した。暫く進むともう高い木は見られなくなり、雪原にネマガリダケが覗くだけの風景となってきた。ほぼホワイトアウトの中を登って行く。これで風が強ければ吹き飛ばされた雪がトレースを消すので、けっこう無謀な登山と言えるのだが、トレースは確実に残る状態だったので、特に不安感は無かった。殿下コースの合流点を過ぎて、そろそろ三ノ丸に着く頃ではと思えたとき、東西に走るはっきりとしたトレースと出会った。若桜町からの三ノ丸コースのトレースだった。もう多くの人が歩いており、これで確実に三ノ丸に着けることになった。三ノ丸を目指しているようでも少し西に逸れていたようで、十数メートル歩いて坂ノ谷コースとの合流点に出た。そこからすぐ先が避難小屋の位置だった。小屋の中には数人の登山者が休んでおり、みな若桜町の三ノ丸コースで登って来たとのこと。その若桜町コースならスキーリフトを使えばここまで一時間半ほどなので、ひょっとすると、冬の氷ノ山はこちらのコースがトレンドではと思えた。小屋からほんの目と鼻の先が三ノ丸頂上だった。相変わらず濃いガスが漂っており、展望台が見えるだけだった。氷ノ山へはよく踏まれたトレースが出来ていたが、この天気では先に進む気にはなれなかった。三ノ丸に着いたことで良しとして、この日の登山は三ノ丸で終えることにした。ただ上空は少し明るい気がしたので、天気の変化を期待して、今少し三ノ丸にとどまってみることにした。ついでに展望台に上がってみたが、そこは強い風があって長居をする気になれず、すぐに展望台を下りた。時刻は昼どきになっており、そこで立ちながら軽く昼食をとった後、相変わらずのガスを見て三ノ丸を離れることにした。下山はただ自分のトレースを追うのみだった。相変わらず十数メートルぐらいしか視界は利かず、これでトレースが無ければ、どちらに向かえばよいのか迷ってしまいそうだった。そして殿下コースとの合流点を過ぎてブナ帯へと入って行ったとき、空が薄れて太陽の輪郭が見え出した。少しは良くなるのかと思っていると、一気に周囲のガスが消え出した。もう呆然とする思いで見ていると、周囲の風景が鮮やかなばかりに眺められた。上空もどんどん青空が広がっていた。それを見てもう一度三ノ丸の山頂に立ってみる気になった。一度下山に向かった体を登るモードに切り替えても、足の運びはスムーズにはならなかったが、程なく避難小屋も遠くに見えて来ると、漸く足も目覚めて小屋に向かってまっしぐらに登った。再び山頂に戻って来たのは、下山を始めてから45分後だった。北を見るとそちらはまだガスが漂っていたが、どうやら氷ノ山は姿を見せているようだった。そこで良く見ようと展望台に上がると、ほぼ時を同じくして北の方向をガスが閉ざし出した。氷ノ山は一瞬見えただけだった。南や西の方向はまだ見えており、そちらは雲海の風景だった。それも程なくガスに閉ざされて、三ノ丸は再びガスに包まれてしまった。展望がまた現れるのではと期待して暫く三ノ丸にとどまることにした。やはりガスの流れに波があり、濃くなったり薄くなったり、ときに上空に青空が広がって周囲の風景が現れた。但し氷ノ山の方向はガスに閉ざされたままだった。今少しの変化を期待するままにずるずると一時間ほど過ごしたが、どうもすっきりとは晴れそうにない空を見て下山とした。ブナ帯まで下りたとき、また上空に青空が広がり出して、再び快晴となったが、今度はそのまま下山を続けた。雪原の中に広がるブナ林、そして澄んだ空が広がる様を見ていると、この風景に出会いたく坂ノ谷コースに来たのかも知れないと思った。青空はまた一時的だったようで、再び上空に雲が広がり出した。概ね晴れたり曇ったりで、ときに周囲にガスがかかることもあった。雪山の下山はやはり早く、坂ノ谷登山口まで一時間少々だった。そして林道歩きに移った。この日だけでも雪融けは進んでおり、スノーシューを脱いだり履いたりを繰り返した。この林道歩きの途中では珍しくキツネを見た。ごく近い距離におり、こちらはさっと物陰に隠れたので気付かれなかったようで、暫く林道上をうろうろするのを眺められた。ただそのことを除くと林道歩きはやはり退屈だった。また緩い下り坂なので、さほど疲れないはずなのだが、緩んだ雪は逆に疲れるのか歩くうちに少し足に痛みを感じるようになった。坂ノ谷川沿いを歩くようになってからが特に長く感じられた。それでも氷ノ山まで足を延ばさなかったため、ヤマメ茶屋に戻ってきたのはまだ明るい16時半だった。結果として林道歩きは朝の往路よりも30分近く早く歩いたようだが、感覚としてはずっと長く歩いたように思われた。駐車地点に戻ってきたときは両足ともすっかりくたびれており、前週の赤谷山と比べると、三倍は疲れた思いだった。だらだら歩きの続く坂ノ谷コースだが、ヤマメ茶屋から歩く冬期は、兵庫の冬山では厳しいコースの一つと言えそうだった。但し、充実感は十分だった。
(2010/3記)(2021/10改訂)
<登山日> 2010年2月28日 8:16スタート/9:13羊ヶ滝入口そばを通り過ぎる/10:08坂ノ谷コース登山口/10:25山頂まで5.5km地点/11:26[17番]標識を見る/11:46〜12:15三ノ丸山頂/一度下山を始めるが、青空が広がり出すのを見て引き返す。/13:00〜53三ノ丸山頂/14:48山頂まで5.5km地点/14:58坂ノ谷コース登山口/16:31エンド。
(天気) 朝の空は曇り空。気温は4℃ほどあり、さほど寒さは感じ無かった。林道を歩くうちに青空が見られるようになった。坂ノ谷登山口を登り始めたときは青空が多く見られるようになっており、陽射しがときおり現れた。それが登るうちにガス帯に入ることになった。三ノ丸一帯はすっかりガスで、視界は10メートルも利かなかった。三ノ丸の気温は6℃ほどあり、北風があるものの少し寒いと感じる程度だった。下山を始めて少しくだったとき、ガスが晴れ出した。程なく澄んだ青空が広がる。ところが山頂に戻った頃より、またガスが広がり出した。但し濃いガスでは無かった。下山中は青空が広がったり、ガス雲になったりと、小刻みに変化した。下山中の気温は4℃ほど。雪は林道上は50センチまでで、地表の現れている所も多かった。登山コースでは多い所で1メートルほどあったが、山頂は地表が現れていた。
<< Photo Album 2010/02/28 >>
ヤマメ茶屋から先の林道は除雪されていなかった 坂ノ谷川に沿って林道を歩いて行く 青空が広がり出して、この日の天気に期待したが
    
近くに見えた尾根は霧氷で白くなっていた 水の流れている所では林道の雪は消えていた 坂ノ谷コースのある尾根が見えてきた
  
坂ノ谷林道の分岐点に着いて、左手の支林道に入った 坂ノ谷コースの登山口に着いた 始めに人工林の中を登って行く
    
氷ノ山まで5.5kmの標識を見た 木の影を楽しむ ごく緩やかな登りだった 林の中を歩いて行く
    
晴れの期待とは裏腹に、空は曇ってきた そのうちにうっすらとガスが漂い出した
    
次第にガスは濃くなってきた 途中で下山してくるスキーヤーとすれ違った ときおり標識が現れて、コースの正しいことを知った
    
殿下コースとの合流点標識を見る ガスの中にブナを見る うっすら霧氷が付いて
いた
目標物は無く、方向を定めて登るしかなかった
    
何とか登山コースを辿れているようだった 鳥取の三ノ丸コースと坂ノ谷コースが合流する 三ノ丸避難小屋を見る 数人が休んだいた
   
三ノ丸山頂もすっかりガスに包まれていた 展望台のそばの灌木に霧氷が付いていた
    
氷ノ山の方向にトレースはあったが、もう行く気は消えていた ホワイトアウト状態の中、自分のトレースを頼りに戻って行く ブナ帯に入り出した頃、空が明るくなってきた気がした
     
一気にガスが薄れてきた 見る見る上空に青空が広がった 周囲のブナにはまだ霧氷が残っていた
   
ブナの枝に残っていた霧氷が落ちてくる 避難小屋を目指して戻って行った 避難小屋の上空は目の覚める青さだった
    

大急ぎで戻って三
ノ丸の展望台に上
がると、一瞬だけ
氷ノ山山頂を望め


すぐにガスが氷ノ
山を隠して、以後
は現れなかった

 南の方向は雲海
 の世界だった

   再びガスが周囲
   を閉ざし出した
      

またガスの中を下
山の途についた

少し下ると、また
青空が現れたが、
今度はそのまま下
山を続けた

 真っ青な空の下、
 雪原を歩く この
 風景に出会いたく
 て坂ノ谷コースに
 来たと思えた

    ブナの枝を見上げ
    る
    
ブナ林の風景を楽しむ 下るうちには、またガスの現れることがあった 下山は速く、坂ノ谷登山口まで一時間少々だった
       
林道歩きに入って、根明けの風景を見る 林道の上にキツネを見た 物陰からキツネのうろつく様を暫く眺めていた
    
前方の山の中腹に、滝が見えていた 滝を大きく見る 羊ヶ滝かも知れなかった 林道の雪は朝よりもずっと減っていた
    
朝は霧氷だったはずだが、すっかり消えていた やはり林道歩きは長く、すっかり足はくたびれた ヤマメ茶屋が見えてきた 長い一日だった