TAJIHM の 兵庫の山めぐり <南但馬
 
氷ノ山    ひょうのせん 1509.8m 養父市
若桜町(鳥取県)
 
1/2.5万地図 : 氷ノ山
 
【2008年3月】 2083-26(TAJI&HM)
 
    大久保集落より  2008 / 3

 兵庫で山を愛する者にとって氷ノ山は別格の存在で、それも冬の姿は見ているだけで心が躍ってくる。2007−08年の冬は雪がよく降り、雪山を登るには絶好のシーズンとなった。おかげで週末はどの雪山に登ろうかと考えるのが楽しみだった。そして3月に入ると兵庫の雪山は雪が締まってくるので、登るには最適の月となる。その3月に入って氷ノ山を登ろうと考えた。前年の2007年3月にも登っていたが、これは鳥取県の舂米側から氷ノ山越えで山頂へ、そして三ノ丸経由で下山するルートをとったもので、登山としては楽しかったが、冬の氷ノ山の楽しみである樹氷風景にはお目にかかれなかった。そこで氷ノ山を登ると決めたとき、迷わず東尾根ルートで登ろうと決めた。千本杉を過ぎて樹氷風景が広がる様を思い浮かべると、自然と顔がほころんできた。東尾根ルートを登るとなると東麓の丹戸集落側からで、氷ノ山国際スキー場から登ることになる。ただ予定した8日の天気予報は兵庫北部は昼こそ晴れとなっていたが、朝方が曇りなのが少々気がかりだった。
 実は氷ノ山を登ろうとはっきり決めたのは前日の夜のこと。そこで翌日は朝起きてからの出発準備となった。姫路の自宅を出たのは6時過ぎのこと。播但道を走って行くが、高速代を少々けちって生野北ICで下りた。後は国道312号線、国道9号線と走って行くのだが、誤算だったのは国道9号線が渋滞していたことだった。スキー目的の車がいっときに集中したためのようでノロノロとしか進まず、目的の氷ノ山国際スキー場の駐車場に着いたときは8時半になっていた。スキーリフトを利用出来るところは利用するに越したことはないので、セントラルロッジまではスキーリフトで行くことにしていたのだが、リフトの運転開始となる8時よりも30分ほど遅れてしまったようだった。この日の登山は東尾根ピストンを考えていたため、リフトは往復分を購入した。一人900円で、パートナーと合わせると1800円だった。ちなみに駐車場の料金は1500円のところを1000円で止めることが出来た。これはたまたま見た氷ノ山国際スキー場のホームページの割引サービスを利用したためだった。心配した天気は和田山町辺りではすっかり曇っていたのだが、国道9号線を離れてスキー場への道に入る頃には青空も見られるようになっていた。快晴になることを期待してリフトに乗った。氷ノ山の方向を見ると、山頂部だけがガスに隠れているだけで、白い姿をほとんど見せていた。スタート地点はセントラルロッジの前からだった。その前にロッジで登山届けを提出した。そして最初からスノーシューを着けて歩き始めた。スキー場エリアを離れて東尾根登山口へと向かうと、雪面にトレースの付いているのが見えた。スノーシューの跡で、この日に付けられたようだった。トレースが無ければどの辺りから登ろうかと考えていたのだが、トレースのままに歩いて行くことにした。トレースは20センチほど潜っているところもあり、雪質としては少し軟らかい程度のようだった。始めは緩やかに、続いて植林地の急斜面を登って行くことになる。少し嫌なのは天気のことで、徐々に晴れて来ると思っていたのとは逆に、空は曇り空に戻っていた。ただ天気の悪化では無くガス雲が広がる感じで、スキー場の方は陽射しの中だった。急斜面もトレースのままに登って行った。先行者は一人か二人のようで、ときどき大きく潜った跡を見た。その跡をこちらは辿るだけなのでいたって気楽だった。潜ることも無く順調に登って、歩き始めてから35分で東尾根に出た。そこにある避難小屋の前で漸く一息入れたが、ここまで自分でトレースを付けるとなると1時間はかかったと思われるので、けっこう早く登って来られたことになる。東尾根歩きとなって暫くは緩やかな尾根を歩いて行く。雪の少ない年は一部で地表の見えることもあるのだが、尾根はひたすら白かった。冬木立の中を進むうちに、その木立にブナが混じり出した。そして次第にばらけてきた。空はガス雲が広がったままだったが、ガス雲だけにときおり薄れて陽射しの漏れることがあり、そうなると尾根は一気に明るくなった。但し長くは続かない。ただ登る分には曇り空の方が登り易いため、青空の無いことは気にならなかった。尾根歩きもトレースのままに歩いて行くと、やがて緩尾根は終わって尾根の斜度が一気に増した。木々はポツンポツンと見えるだけで前面は雪面が広がっている。もう尾根を登ると言うよりも雪の斜面を登ると言う感じで雪面に取り付いた。その急斜面にはスノーシューは不向きで、ちょっと滑り易くなった。樹林帯の急斜面では掴まる木が多くあって無難に登っていたのだが、雪面だけとなるとバランスを崩さないように慎重に登った。その雪面の登りも雪山の楽しさの一つと言えるが。その急斜面を登りきると千本杉が見えてきた。漸くここまで来たと言う思いと共にけっこう早く着いたとの思いが半々だった。ところで空は相変わらずガス雲が広がっていた。どうやら山頂はまだガスに包まれているようで、期待した青空は暫くは無理のようである。その千本杉まで来るとその周囲のブナはすっかり霧氷になっていた。時計は11時に近づいており、陽射しがあればとっくに落ちているはずだが、曇り空のおかげできれいな霧氷が見られた。どっしりとした千本杉を過ぎると、その先はガス帯となった。その中にうっすらと樹氷が見えていた。期待通りに丸々と雪に包まれて何だかどの樹氷も白クマの立ち姿を見ているようだった。但しガスのためにぽつりぽつりとしか見えなかった。その風景を見ていると、もう登頂した登山者が下りて来た。まずは山頂までと登りにかかるとまた下山者とすれ違った。この日は登山者が多いのかと思いながら歩を進めると、辺りのガスは一段と濃くなり、ほとんど前方が見えなくなって来た。見えないと言ってもトレースははっきり見えるので楽なものである。ただ風が一気に強くなって、身を切られるような冷たさだった。おおよその勘でもう山頂ではと思えたとき、突然のように避難小屋が現れた。10メートルと離れていないので、それだけガスが濃いのだろう。まずは小屋に入って一休みと近づくと、そこに大誤算があった。小屋の扉の前に雪が1メートルほど固く積もっており、どうも一人や二人の力では除けられそうもなかった。これでは中に入るのは無理のようだった。通りでもう下山者がいたはずだった。他に人影は見られず、ただ強風の中にじっとしている訳にもいかず、風の避けられそうな樹氷帯の中で休むことにした。そこまで戻ると風は弱くなり、樹氷のそばでは風は無くなり、漸くひと息つけることになった。そして立ちながらの昼食だった。樹氷群の中の昼食も悪くないと思っていると、急にガスが薄れ出した。そして一気と言った感じで青空が現れると、さっと光が射してきた。するとこれも一気と言う風に樹氷群が浮かび上がった。その光景は見事と言うしかなく、久々に見る樹氷群にただ感動するだけだった。そして1分もするとまたガスがその光景を閉ざしてしまった。何とも見事な変わりようだった。ただこの日はガスが山頂を隠しているものの、いっとき薄れる状態を繰り返しているようで、今暫く待っていると、またさっと光が現れてさっと消えた。この状態を何度か待っておれば良かったが、じっとしているだけに足下から冷えて来たため、13時が近づいたところで樹氷群を離れた。そして少し下るとガス帯を抜けて千本杉が見えてきた。そこでも今度は霧氷の美しさに見とれることになった。やはり冬の氷ノ山の魅力はこの樹氷と霧氷の姿ではと思いながら千本杉を後にした。そして再び東尾根歩きを始めた。氷ノ山山頂のガスが消えたのはスキー場に戻って来たときだった。山頂展望は楽しめなかったが、そのことよりも素晴らしい樹氷群が脳裏に焼き付いており、その思いに胸が豊かになりながら下りのリフトに乗り込んだ。
(2008/3記)(2021/12改訂)
<登山日> 2008年3月8日 9:06セントラルロッジ前スタート/9:41〜45東尾根避難小屋/10:56千本杉/11:28〜41山頂/13:02千本杉を離れる/13:58〜14:04東尾根避難小屋/14:31セントラルロッジ/14:54スキーリフト起点エンド。
(天気) 朝の空は雲が多いものの青空も見られた。ただ氷ノ山の上空はガス雲が広がっており、山頂はそのガスに隠されていた。登っているときはほば曇り空で、ときおり雲間から陽射しが漏れるも長くは続かなかった。そして千本杉を過ぎてガス帯に入った。千本杉までは風は弱かったのだが、山頂が目前となって一気に強くなった。山頂ではガスが薄れて陽射しの現れるときもあったが、すぐにガスに閉ざされた。積雪はスキー場で190cmの情報。山上はただ多いの一言。視界はややぼんやりと言った程度。気温は山頂で2℃、尾根では5〜7℃ほどだった。
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パノラマリフト乗り場から山頂方向を見る そちらはガスに包まれていた セントラルロッジの前より鉢伏山の方向を見る 晴れる兆しが見えていたが 東尾根登山口に向かう トレースが付いていた
    
登り出すと空は曇り空に変わった ときおり陽射しが現れてスキー場を照らす 尾根を目指して急坂の植林地を登って行く はっきりとトレースがあって楽だと言えた 東尾根に出た所で避難小屋に出会う
  
尾根はひたすら白い道が続く 突然陽の射すこともあった 樹林帯を抜けたようで、前方が開けてきた
     
樹林帯を離れると雪面が広がった 鉢伏山をバックに登る 千本杉へと雪の世界を登って行く
    
千本杉に着く 千本杉の中を抜けて行く 千本杉の次は樹氷帯 白クマのような樹氷を見る
     
山頂が近づくと辺りは濃いガスとなった 山頂直前になって漸く小屋を確認する 小屋の前に立つ
    
小屋の前は雪が吹きだまっており中に入れなかった また2階の窓ガラスが割れていた 小屋の前の標識が樹氷のようになっていた
    
山頂の寒さにたまらず、樹氷帯に戻って昼食とした 周囲は見事な樹氷だった
    
昼食の間にガスが薄れ出した 周囲の樹氷群がくっきりと見えるようになった 青空も現れた
   
明るい光に樹氷群が浮かび上がる 青空と樹氷のコントラストが美しかった
    

東の視界も現れて
真っ白な鉢伏山が
望まれた

左の写真の鉢伏山
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(←)
樹氷帯を離れて
千本杉へと下っ
て行く

 (→)
  千本杉の周囲のブ
  ナ林は霧氷になっ
  ていた
霧氷の美しさにも暫し足を止めて眺めていた 一瞬青空が現れた 千本杉を離れて振り返る
     

 下山中は曇り空だっ
 たが東の風景は良く
 見えていた
   
鉢伏山山麓の大久保集落は雪の中だった 東尾根のブナ林を見る 沈んだ風景の中、東尾根を戻って行く
    
南向かいの尾根に広がる冬木立を見る 南向かいの尾根の先に藤無山を見る 東尾根避難小屋に戻り着いて山頂を振り返る