TAJIHM の 兵庫の山めぐり <南但馬
氷ノ山    ひょうのせん 1509.8m 養父市
若桜町(鳥取県)
氷ノ山三ノ丸 1464m 養父市・宍粟市
若桜町(鳥取県)
 
 
1/2.5万地図 : 氷ノ山
 
【2010年3月】 2010-27(TAJI)
    扇ノ山より 2009 / 3

 氷ノ山を目指すコースの中でも長いコースの一つである坂ノ谷コースは、冬になるとアプローチの氷ノ山林道が雪に覆われるため、登山口に着くだけでも一苦労である。その坂ノ谷コースを冬期として十数年ぶりに訪れたのは、2010年2月の最後の日だった。次第に青空の広がる空を見て安心して歩いていたのだが、坂ノ谷コースを登り出して三ノ丸との中間点辺りに来たときからガス帯に入ってしまった。それでも三ノ丸まで歩いてピークを踏んだが、すっかりガスの中だった。そこで氷ノ山まで歩くのは諦めたが、ほんの短い時間だけガスの切れることがあり、氷ノ山山頂も一度顔を覗かせた。その氷ノ山を見たことで改めて登りたい気持ちが起きてきた。その日は断念したが、2週間後の3月14日に氷ノ山を目指すことにした。単に氷ノ山を登るだけなら自宅を8時に出ても十分なのだが、行く限りは霧氷も期待したく、そうなると出来るだけ早い時間に登るのが良いとなるので、その朝は5時半に目覚めると、もう10分後には自宅を離れていた。日曜日はパートナーはなかなか都合がつかず、三ノ丸登山のときと同様に単独で出かけた。姫路から最も速く山頂に立てるコースとなると、夏こそ大段ヶ平コースとなるが、雪の季節は鳥取県若桜町の氷ノ越コースとなる。そこでひたすら国道29号線を走って鳥取を目指した。空は予想以上の快晴で、雲一つ見えなかった。県境を越えて鳥取県に入っても、快晴は変わらなかった。ただ少し空の色は薄かった。舂米の「響の森」駐車場に着くと、先に一台の車があり、そばで登山者が準備をしていた。すぐ後にもう一台が着くと、そちらも登山者だった。準備はこちらが一番速く、7時半ちょうどに歩き始めた。キャンプ場を起点に登り出すつもりでそちらに向かうと、車道はすっかり雪に隠されていた。そこにはトレースが付いていたが、雪は凍ったように固く締まっていたので、ツボ足で好きな所を歩いて行けた。キャンプ場の端まで来ると、そこから先は人工林の中を登山コースは続いていた。そのままトレースを追えばと思っていると、意外やすぐにトレースは不確かになってしまった。斜面を登るようになったこともあり、ここでスノーシューを履いた。雪は表面こそ固かったが、少し体重がかかると潜ることがあり、少し歩き難いと言えた。後から追いついて来た登山者はツボ足だけとあって、一気にブレーキがかかっていた。それを尻目にゆっくりと登って行く。人工林は雪がすっぽりと地表を隠していたため、どうも登山コースが分かり難かった。ときおり目印を見かけたので、その目印を追おうとするものの、どうも目印は途切れがちだった。そのため方向を定めて登るしかなかった。そのうちに登山標識が現れて、登山コースを歩いていることがはっきりした。やがて谷沿いを歩くようになった。その谷沿いでも目印があり、また標識があってコースは正しいと安心していると、いつの間にやら目印を見なくなっていた。そこで思い出したのが、この氷ノ越コースは確か沢を横切るはずだったので、そのポイントを見落として真っ直ぐ歩いてしまったのかも知れなかった。ただ最後に見た標識では氷ノ越まで600mとなっており、また前方の斜面もさほどきつくは無さそうだったので、そのまま登って行くことにした。周囲に気を配りながら登っていると、斜面の斜度は見た目以上にあり、けっこうきつかった。また一ヶ所でナダレの跡を見た。そのナダレは柔らかい雪では無く、氷の塊のような雪が積み重なっており、これに巻き込まれれば確実に死ぬのではと思われた。やはり氷ノ山はコースを外すと危険な山のようだった。急斜面は何とか登れるのだが、そのうちにササが増えてきて、それに滑り気味になった。また急斜面だけに雪は少なく、スノーシューが邪魔になることもあった。そこで木の根に掴まったりササに掴まったりと、けっこう苦労することになったが、何とか尾根に出ることが出来た。そこは小さな鞍部になっており、近くにはブナ林が、少し離れて氷ノ山山頂が見えていた。氷ノ越の位置よりも少し南の位置に出たようだった。これで漸く登山コースに立てたので、もう気分的には楽だった。尾根の気温は4℃ほど。まだ朝の時間帯なので雪は固くなっており、歩くのは楽だった。ただ霧氷に関してはかけらも無く、少々拍子抜けだった。尾根上にトレースは付いていたが、それを意識せずとも歩いて行けた。この北からの尾根コースは氷ノ山を眺めながらとなる。途中、林の中に入って見えなくなることがあったが、左手には鉢伏山も見えており、展望コースだった。30分ほど歩いて仙谷コースの合流点に着くと、目の前にコシキ岩が見えていた。そのコシキ岩では登山コースは東側を巻くように付いているが、冬はすっかり雪の下で、その雪が急斜面になっていた。そのためかトレースはコシキ岩を直登する方向に付いていた。ただその方向だとスノーシューは面倒なので、スノーシューを履いたままコシキ岩を過ぎようと、夏道コースを行くことにした。雪が固いためさほど難しくもなく通ったが、雪が緩んでおればナダレが起きるかもと思える所だった。そのコシキ岩を過ぎると、氷ノ山はもう近かった。山頂手前では夏道の登山コースは緩やかに登るために大回りをするように付いているが、トレースは旧道コースとなる真っ直ぐ山頂へ向かうルートに付いていた。やはりその方が自然に山頂に向かうことになる。山頂に着いたのは。歩き始めてから2時間少々。途中でコース誤りがあったものの、まずは予定通り着けたと言えそうだった。山頂には他に人影は無く、小屋を覗いても無人だった。どうやらこの日の一番乗りかも知れなかった。山頂に着いて少し強い風を受けるようになったが、気温は10℃近くまで上がっており、氷ノ山としては穏やかな天気と言えそうだった。その山頂だが、雪融けは例年以上に速いようで、この季節としてはかなり少ないようだった。頂上部は広く地表が現れており、雪面でもネマガリダケが多く覗いていた。例年の4月初め頃の風景と言えそうだった。その中でひとりぽつねんと周囲の展望を楽しんだ。空の青さは少なかったが、視界はさほど悪くは無く、因幡、但馬、播州の山並みを暫し眺めていた。その誰もいない山頂に20分ほど佇んでいたとき、漸く次の登山者が東尾根コース側から登ってきた。氷ノ山国際スキー場は営業を終わっており、リフトが使えなかったとのことだった。時間はまだ10時前だったので、ちょっと三ノ丸まで散歩することにした。そちらを見ると、点々と登山者がこちらに向かっていた。やはり雪のシーズンは、若桜氷ノ山スキー場を利用しての人が多いようだった。雪山にしてはササが多く顔を覗かせており、風情をいくぶん損ねているのは仕方がないかと思いながら歩いて行く。こちらのコースの雪もけっこう固く、スノーシューはさほど潜らず歩いて行けた。二ノ丸との鞍部が近づく辺りから登山者とすれ違い出した。スノーシューの人もおれば、山スキーの人、ツボ足で歩くグループもいた。スノーボードをかつぐ若者も数人いた。ツボ足組はけっこう足を潜らせており、きつそうだった。このコースは風をほとんど受けず、陽射しが本当に暖かかった。まさに春山の雰囲気だった。尾根は緩やかとあって、きままに歩いて行く。ごくゆっくりと歩いていた。三ノ丸には50分ほどで着くことが出来た。三ノ丸に着けば、やはり展望台に上がって風景を楽しむことになる。陽が高くなった分だけ、視界は少しうっすらとしてきたようだった。また空も青みが更に薄れて、白っぽい空になっていた。薄晴れと晴れとの間のような空だった。三ノ丸まで来れば、若桜氷ノ山スキー場へと向かって下山すれば訳は無いのだが、どうも氷ノ越コースを正しく辿って来られなかったことが気になっていた。そこで氷ノ山山頂へと引き返すことにした。その引き返すときにまたスキーヤーやスノーボーダーとすれ違い出した。どうやら氷ノ山山頂に立った後、スキー、スノーボードで山スキーを楽しみ、その後でスキー場に戻るのではと思われた。日帰りの山スキーとしては、東尾根コースよりもずっと気楽と言えそうだった。再び氷ノ山の山頂に立っても、まだ12時前だった。山頂は小屋の外だけでも10人以上はおりそうで、ちょっとした賑わいだった。さて氷ノ越コースの方はと見ると、そちらには人影は見えなかった。意外な感じを持って下山に向かった。気を付けるのはコシキ岩の所だけで、そこを巻くときはスノーシューを脱いで、慎重に通り過ぎた。その先の尾根は朝よりはトレースが出来ていたが、数人が歩いた程度ではと思われた。もう尾根は緩やかで、ブナ木立の風景を楽しみながら下った。朝に辿り着いた地点を通り過ぎ、小さなコブを越えると、氷ノ山越避難小屋はもう目前だった。ここまでですれ違ったのは数人なので、氷ノ越コースは速く山頂に立てるものの、マイナーコースのようだった。ここまで来れば舂米の方向へトレースを辿るだけだと思って、いざ鳥取側へ下りようとしたとき、そこにトレースは見えなかった。と言うかごく表面にうっすらとあるだけで、これでは無いに等しかった。ここまで続いていたトレースは、そのまま兵庫県側に下っていた。マイナーコースの中でも、鳥取側は更にマイナーなようだった。ちょっと予想外だったが、下るしかない。目印も見えなかったので、急斜面を適当に下り出すと、ぽつぽつと目印が目に付くようになった。そこで目印を追って下って行く。どうもコースが樹林の中に適当に付いている感じで、目印が無くとも自然に下れると風では無かった。そのうちに目印が追いづらくなり、何となく歩き易い所を下るうちに、目印を見なくなった。下山でもコースを外れたようだった。歩く方向からして、少し北寄りを下ってしまったようだった。もうコースを辿る気は無く、そのまま歩き易い所を下って行くことにした。但し北西方向に向かわないようには注意した。周囲は人工林だったり雑木林に変わったりしたが、急斜面に出会わなかったのは助かった。そのうちに「響の森」が見えるようになった。南西方向に離れて見たので、やはり北寄りに下ったようだった。後は「響の森」を目指してどんどん下ると、広々とした雪面に出た。そこは伐採の跡地のようで、まだ植林は幼木のようだった。幼木を踏まないように縁を歩くように通り過ぎると、植林地に入った。そこからは登山道があり、それを最後まで下ると、「氷山命水」が間近に見える車道に下り着いた。朝に歩いたキャンプ場からは少し北の位置だったが、特に厳しさも無く下り着けたことになる。そこから駐車地点までは、車道を数分歩くだけだった。
(2010/3記)(2021/10改訂)
<登山日> 2010年3月14日 7:30「響の森」駐車場スタート/8:42〜45尾根に出る/9:18〜20仙谷コース合流点/9:23コシキ岩/9:36〜10:00氷ノ山山頂/10:50〜11:08三ノ丸/11:57〜12:10氷ノ山山頂/12:25〜32仙谷コース合流点/12:56朝に尾根に着いた地点/13:06〜13氷ノ山越避難小屋/13:50氷山命水のそばに下り着く/13:57エンド。
(天気) 快晴。雲は全く見られなかった。但し空の青さは淡かった。視界は悪く無かったが、澄みきっているとまでは言えない。氷ノ山の山頂でそ冷たさのある北風を少し強く受けたが、それ以外の場所では、風はごく弱く穏やかだった。昼となって空の色は白っぽさを増してきたが、快晴には変わりなし。気温は朝のうちは4℃ほど、山上に出たときは8℃まで上がる。昼には10℃までとなるが、体感は15℃以上には感じられた。
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車は「響の森」駐車場の片隅に止めた キャンプ場への道を歩く トレースが続いていた キャンプ場から赤倉山を望む
キャンプ場の端まで来て、そこから人工林の中へと入って行った 人工林の中はトレースはうっすらとしか見えず、コースとおぼしき所を歩いて行く 登山標識が現れて、正しくコースを歩いていることを確認出来た
沢沿いを歩くようになった 標識を見る この辺りまではコースを歩いてい
たが
コースを外れてしまったとき、外れた先でナダ
レの跡を見た
真っ直ぐ尾根を目指して登って行った 尾根の直前は急斜面 朝日が木立を照らし出した 何とか尾根に出ると、そこにブナ林を見る
南東方向に山頂の避難小屋が小さく見えていた 暫くはなだらかな尾根で続いた 尾根から北東に鉢伏山を見る
ばらけた木立が尾根を覆っている 朝の光が林を照らしている ときおり山頂が望めた

 東に見える妙見山
 を大きく見る

     登るほどに鉢伏山が
     足下になってきた
尾根の痩せた部分を歩く 後ろを振り返る 遠くに扇ノ山が見えていた 仙谷コースの合流点に着く コシキ岩が見えている
コシキ岩を見上げた コシキ岩をやり過ごして、岩の方向を振り返る 山頂へは急斜面を直登した
山頂に着く 誰もおらず風の音だけだった 山頂から南の方向を眺めた

 右上の写真の左側に見
 える千本杉の方向(南
 東方向)を望む

     左の写真の粟鹿山を
     大きく見る

山頂からは北側が一番すっきりと眺められる 但馬の山並みが一望だった
北の雪山群を望む 日本海に近い位置に久斗三山を見る

 南の三ノ丸方向
 を見る



  三室山の手前に
  三ノ丸の展望台
  が見えている

三ノ丸に立ち寄ることにした 三ノ丸に歩き出す ダイセンキャラボクを見る 氷ノ山山頂を目指す登山者が向かってくる
前方に二ノ丸の杉林を見る 三ノ丸へと続く丘を見る ブナの影が優しい

 三ノ丸が近づくと
 尾根はひたすら緩
 やかだった

    三ノ丸のピークに
    着く
三ノ丸に来れば、やはり展望台からの風景が楽しみ 南に広がる播州、因幡の高峰を楽しむ
藤無山の向こうに千町ヶ峰を見る 黒尾山の手前に見える赤谷山の山頂は白かった 東山を大きく見る
氷ノ山の方向を見る やはり例年と比べて雪はずっと少ないようだった 氷ノ山山頂を大きく見る
三ノ丸を跡にして氷ノ山山頂に戻って行く 前方に氷ノ山を見ながら雪面を歩いて行く 氷ノ山が少しずつ近づく
二ノ丸へと登って行く 二ノ丸のブナ林を愛でる 二ノ丸から氷ノ山山頂を望む
コース上に多くの登山者が行き来している この日二度目の山頂に近づく喜びがあった 山頂手前は、3月とは思えぬササの現れ方だった
朝と違って賑わいのある山頂だった 氷ノ山山頂から舂米側を見下ろす 氷ノ山山頂より赤倉山南面を見る
氷ノ山山頂を離れて氷ノ越へと急斜面を下る コシキ岩を巻くときはツボ足になった コシキ岩を通り過ぎて振り返る
コシキ岩を越せば、もう尾根に厳しい所は無い 氷ノ山越避難小屋が見えている 氷ノ越の避難小屋前に着いた
峠の地蔵さんを見る 鳥取側にはほとんどトレースは見えなかった 目印を追ったが、途中からは人工林を適当に下る
適当に下るうちに緩やかな丘のような所に出た 北西に陣鉢山を見る 広い雪面が現れた その先に響の森が見えていた
その先の人工林に入ると、登山道が続いた 下り着いた所は「氷山命水」のそばだった 車道を歩き出すと、響の森はもう目の前だった