兵庫県側から氷ノ山を登るコースとしてポピュラーなのは、福定親水公園の駐車場を起点として氷ノ山越コースで山頂に立ち、下山は千本杉経由で東尾根を下り、氷ノ山国際スキー場へと下りてくるコースのようである。そのコースを一度も歩いていなかったことが気になっていたので、一度は歩いておこうと向かったのは、2013年4月の最終土曜日のことだった。この日は5月連休前半の初日でもあるのでハイカーが多いと予想して、9時には歩き始めたいと考えて、自宅は7時前に離れた。快晴の天気予報の通り、但馬の空は良く晴れていたが、国道9号線から氷ノ山が見えてくると、その上空は雲が広がっており、山頂はうっすらとガスに隠されていた。何よりもまだ山肌には多くの残雪が見られた。福定集落を抜けて瀞川氷ノ山林道に入ると、程なく福定親水公園が現れた。着いたのは予定通り9時前だったが、20台ほどが止められる駐車場は八割方埋まっていた。この親水公園からのコースについては新分県登山ガイド「兵庫県の山」などで紹介されているので、ここではコースについては詳しく書かないが、始めは八木川沿いを歩いた。その辺りの桜がまだ見頃だった。斜面を登り始めると、滝見物をしながら歩くようになった。布滝、のぞき滝、不動滝とあり、布滝は姿が良いだけでなく、落差が65mあるとあって迫力があった。コースはその辺りではジグザグ道になっており、高度を稼いでいく。道が緩むと地藏堂が現れた。そこを過ぎると道がぬかるんできたが、雪解けのためかと思われた。コースは緩やかなものの小石が多くあって、歩き易くもなかった。樹間を通して山頂方向が見えてくると、その上空にはまだ雲が多いものの、山頂は姿を現そうとしていた。それを見て安心していたところ、次に見えたときは、山頂だけで無くコシキ岩の上までガス雲に隠されていた。またコース上に少しずつ雪が見られるようになってきた。氷ノ山越に着いたときは、歩き始めてから1時間40分が経っていた。その辺りまで来ると、周囲はほとんど雪となったが、コース上は雪があったり無かったりだった。氷ノ山はコシキ岩が見えないまでガス雲がかかっていた。上空は雲が広がっており、気温は6℃まで下がっていた。雪の上を歩くようになっても、しっかりと踏み跡が付いていたので、潜るようなことは無かった。但し滑らないようにとの注意は必要だった。やっかいなのは雪では無く、雪解けのぬかるみだった。靴が半分ほど潜る所もあり、靴はすぐに泥だらけになってしまった。ショートスパッツを付けて歩いていたのは、正解だったと言える。北尾根を進むうちに上空に青空が見られるようになったかと思うと、氷ノ山のガス雲はあっさりと消えてしまった。やはり予想通り晴れの天気となりそうだった。仙谷コースが合流すると、その先で山頂まで0.5kmの標識が現れた。そしてコシキ岩を巻くことになった。コースが雪に隠されていると難所となるのだが、幸い登山道は半分見えており、また雪の所もはっきりとトレースが付いていた。その先は丸太の階段もある遊歩道で、難なく山頂に近づいた。山頂に着いたのは12時前。歩き始めてから2時間50分なので、予定より少しかかったかと思えた。山頂は陽射しを受けていたものの、気温は7℃の上に強風があって、暖かさは感じなかった。また誰も見かけなかった。ハイカーは皆避難小屋の中に居るものと思われた。その通りで、小屋の中に入ると、10人ほどが休んでいた。小屋の中も風が無いだけで寒いことに変わりなく、白い息が出た。その小屋の中で昼休憩とした。その休憩中に小屋の外に出て展望を楽しんだが、強い風に長くは立っていられなかった。下山は東尾根コースを下って行く。氷ノ山越コースも残雪が多かったが、こちらの方がもっと多いようだった。少し下ると千本杉に入ったが、すっかり雪だった。千本杉を抜けて少し下るともう一度杉林が現れたるが、そこもすっかり雪の風景で、3月の雪山を歩いているようだった。その後も雪は現れたり消えたりを繰り返した。消えた所はぬかるみになっており、けっこう歩き難かった。神大ヒュッテを過ぎると巻き道のようになり、地図のどこを歩いていると言うよりも、ただコースのままに歩いていると言った方が正しかった。そのコースが東尾根上となると、そこが一の谷休憩所だった。そこより漸くのどかな尾根歩きの雰囲気となった。東尾根避難小屋からは氷ノ山国際スキー場の方向へと、やや急角度で下って行く。下るうちに再び新緑が見られるようになり、青空に若葉が映えるのがきれいだった。そして登山口に着いて瀞川氷ノ山林道に合流した。山頂からそこまで2時間弱だった。上空はすっかり快晴で、北の方向を見ると鉢伏山が見上げるようにして眺められた。後は林道を北へと下って行くのみ。林道は舗装されており、ときおり車を見かけた。スキー場エリアを過ぎると樹林の中を抜けて行く。少し林道歩きが長く感じられたが、40分ほど歩くと親水公園の駐車場が漸く見えてきた。予想より残雪が多い氷ノ山だったが、今回のコースを歩いて、改めて氷ノ山は大きな山だとの印象を強くした。
(2013/5記)(2021/3改訂) |