幌岩山はオホーツク海沿岸、サロマ湖畔に立つ小さな山で、沿岸部からはけっこう目立つ山である。その幌岩山には1995年のことだが、雪の残る季節にスニーカーで登っていた。それは常呂町の会社に出張中のことで、幌岩山に登ろうと思ったよりもサロマ湖を眺めたいとの理由からだったが、展望のことよりもスニーカーが濡れてしまって難儀したことが記憶に残っていた。その幌岩山を25年後の2018年9月に登ろうと思ったのは単純な理由からだった。久々に東北海道の山を目指して釧路空港に降り立ったのは9月8日のことだった。北海道では二日前に大地震が襲ったばかりとあって、レンタカーを借りられないまま空港に着いたのだが、レンタカーは何とか借りられて予定の行動をとることが可能となった。そして阿寒湖温泉へと向かった。今回の主目的は雌阿寒岳登山だった。心配は天気のことで、その日は薄曇りながら北の空には雌阿寒岳がはっきり見えていた。ただ続く二日間の道東の天気は雨が予想されていた。その二日のうち翌日の9日は午前は曇り予想で、北に向かうほど雨の心配は無さそうだった、その夜は阿寒湖温泉の宿に泊まると、翌日の天気が好転することを期待したのだが、10日の阿寒湖は朝からもう小雨が降っていた。そうなると予定していた雌阿寒岳はすんなり諦めて、オホーツク沿岸に向かうことにした。朝の天気予報では、そちらは雨の心配は無さそうだった。その通りで津別町を抜ける頃には雨は止み、サロマ湖畔に出てきたときは薄曇りになっており、空の一部には青空も見られた。そこでサロマ湖畔の幌岩山をかすかな記憶を頼りに登ることにした次第だった。但し登山口の記憶はすっかり無くなっていたので、国道238号線に出ると標識に注意しながら東へと走った。始めに道の駅が現れるとそこに登山口が会ったのだが、それを見落として通り過ぎてしまった。それでも更に東へ走るとすぐに幌岩山の標識が現れた。それに従って林道に入るとすぐに広い駐車場が現れた。そばにはトイレ棟も建っていた。この日は日曜日だったが、他に車は無かった。その駐車場を後にして山裾へと真っ直ぐな一本道を歩き出した。緩やかな上り坂で、登るほどに背後にサロマ湖が見えてきた。薄曇りの空とあって湖の色は灰色になっており、空とあまり区別はつかなかった。山裾の登山口に入ると、その先は遊歩道だった。丸太の階段もあれば易しい土道もあり、そして周囲は白樺も混じる自然林だった。いかにも北海道の自然を歩いている感じがして雰囲気は良かった。但し展望は無かった。遊歩道の途中には休憩所が作られており、そこを過ぎて山頂に近づいたとき車道に合流した。幌岩山は車道が山頂手前まで付いている山だった。その車道を200メートルも歩けば終点となった。その先は階段道で、間近に見えている展望台が見えていた。その展望台へと階段を登ると、右手からもう一つの登山コースが合流した。道の駅から来ている道で、富武士登山道の名が付いていた。展望台の前に出ると、そこは山頂では無く、山頂は今少し先のようだった。展望台に立つのは後回しにして、山頂への小径に入った。ほぼ平坦な道だったが、少し先で坂道となりそれを登りきった所が山頂だった。東屋が建っており、そばの草むらに大ぶりの三角点を見た。彫られた文字を見ると一等三角点(点名・幌岩山)だった。山頂は展望が無かったので、引き返して展望台で一休みとした。資料室のような部屋もある立派な展望台で、サロマ湖展望台の名が付いていた。最上階のデッキに立つと、思っていた以上の好展望が広がっており、サロマ湖の全姿が眺められた。その頃には陽射しが現れるまでになっており、湖は幾分青さを持って眺められた。その湖だけでなく、東の方向には畑地が広がっており、その長閑な風景も良かった。その展望台で早めの昼食をとると、下山は往路を引き返して駐車地点へと戻った。再び美しい自然林を眺めることになった。
(2018/10記) |