サロマ湖の位置より北を北海道北部と考えると、その地域での最高峰となるのがウエンシリ岳で、西興部村と滝上町の境界上にあり上川町の境もごく近くまで来ている。そして北海道百名山にも選ばれている山でもある。そのウエンシリ岳への登山コースは二つあり、一つは中央コースで全長6.3kmと長めながらも傾斜は比較的緩いようだった。もう一つは東麓のキャンプ場からのコースで東尾根を登ることになり、こちらは3.8kmで最短コースだった。そのため急坂の多いコースだった。そのウエンシリ岳に向かったのは2019年9月30日のこと。北海道山行5日目となる最終日のことだった。前夜は美深町に宿をとっていたため、ウエンシリ岳の登山口まで2時間近くかかると予想された。そのためキャンプ場からのコースをピストンすることにした。その登山コースのことよりも心配だったのは天気だった。数日前の天気予報は晴れとなっていたのに、前夜になって名寄、紋別地区のみ曇り予想に変わってしまっていた。
30日は天気予報の通りに曇り空で朝を迎えた。前夜は雨があったようで路面は濡れていた。宿でしっかり朝食をとると、8時前に美深町の宿を離れた。薄黒い空を見て、これではウエンシリ岳はガスに包まれていると予想された。ガス帯の中を登る気持ちは無かったが、登山口だけでも確認しておこうと予定通り西興部村に向かった。始めに国道40号線を南下して名寄美深道路に入った。その自動車専用道の終点からは国道239号線へと入り、更に西興部村より道道137号線を走って札久留峠方向へと向かった。オホーツク海側も曇り予想だったので、当然曇り空のままかと思っていたところ、空は徐々に明るくなり、道道137号線を走る頃には青空も見られるようになり、ウエンシリ岳の東の位置に来てウエンシリ岳が望めるようになる頃には晴れと呼べそうな空になっていた。東尾根コースがあるウエンシリキャンプ場に着いたのは9時50分のこと。上空は青空で周囲の樹林は陽射しに明るかった。この日は平日とあってかキャンプ場には他に車は見なかった。そして10時が近い時間にスタートとした。ウエンシリ岳の登山コースについてはガイドブックに紹介されていることでもあり、ここでは概略を記すだけにとどめたい。コースは東尾根を登って行くが、ずっと自然林の中を登った。始めにジグザグ道があり、尾根を辿るようになると急坂登りが始まった。この日の気温は20℃ほどあり、この季節としては高く大汗をかいての登りだった。一度尾根は緩み、急坂となった先で現れたのが氷のトンネルコースとの合流点だった。ただ氷のトンネルコースは危険とあって現在は登山禁止になっていた。その合流点から山頂までは3kmの距離だった。そこより少し登って現れたのは岩場の登りで、ロープの張られている所もあった。両手を使ってしっかり登る必要があり慎重に登った。そしてまた急坂登りだった。その急坂の尾根は今が紅葉の盛りとなっており、登るきつさは別にして、紅葉を楽しみながらの登りでもあった。標高1000m辺りまで登って漸く尾根が緩んできた。上空の雲は次第に増えてはきていたが、まだ陽射しをときおり受けた。その上空のことよりも心配だったのは足下の方で、そちらにガスを見るようになり、そのガスが次第に上がってきた。緩やかな尾根となって少し進むと北西方向に1083mピークが見えるようになったが、そちらにまでガスがかかるようになってきた。ただ山頂が見えてくると、そちらははっきりと見えていた。その山頂を眺めながらの尾根歩きは登山道の周囲にハイマツ帯も見るようになり、雰囲気は悪くなかった。1040mピークを越して鞍部へと下ると、後は山頂まで120mほどの登りだった。振り返るとガスは1040mピークを隠すまでになっていたので、追われるようにして山頂を目指した。そして山頂に着いたのは12時を少し回った時間だった。登山口に入ってから2時間10分が経っていた。何とかガスに巻かれないうちに山頂に立てた。その山頂からは東の方向が開けており、そちらはすっかり雲海の風景になっていた。後はすぐにガスが来るだろうと思っていると、その逆でガスが減ってきて近くの尾根が姿を現してきた。また山頂も陽射しを受けるまでになった。このままもっと晴れてくればと思っていると、それがピークだったようで、またガスが増えてきて、今度は山頂まで達しそうに見えた。それを潮時として下山することにした。そして1040mピークが近づいたときに山頂を振り返ると、ガスは山頂を隠すまでになっていた。その後はガス帯へと入り、以後はずっとガスの中を下った。そのガスの中でも再び紅葉を愛でることになり、単調な下りでもなかった。登山口に戻ってきたのは14時半前。山頂を離れてから1時間と50分が経っていた。上空は濃いガス雲が広がっているとあって、麓は夕暮れのような薄暗さだった。下山を終えると旭川市街へと向かった。濃いガスの中、道道137号線をへと向かって走っていると、札久留峠の先で突然のようにガス帯を抜け出した。もうその先は快晴の世界だった。どうも天気予報通り、曇りの地域は名寄、紋別地方だけのようだった。
(2019/11記) |