2019年9月に前年に続いて北海道山行を計画したのは、大雪山系の旭岳を登りたいためだった。当初は9月初旬の山行を考えていたのだが、天気が良くないため延ばすうちに第三週は雪があり、多い所では1メートル近く積もったとの情報もあった。こうなると冬装備が必要かと思えたが、その後は晴れて雪の無い日が続いたので、無雪期の装備で出かけることにした。そして漸く決めた日程は9月26日からの5日間の山行だった。その中で28日を旭岳登山の日とした。北海道入りしたのは25日で、快晴ながらこの日は旭川市までの移動のみだった。高速道路から見る大雪山は周囲の山並みとは違って雲を被っていた。翌26日の山行初日も快晴でこの日は幌加内町の三頭山登山を楽しんだが、山頂から見る旭岳は雲が多かった。27日は晴れの予想だったが大雪山一帯の山域は雲が多く、ガスの中でニセイカウシュッペ山の山頂に立った。ガス帯を抜けた所から見た大雪山も雲が多かった。どうなることかと思いながら山行三日目の朝を迎えた。天気予報では晴れときどき曇りだったが、旭川市内のホテルから見る空は雲一つ無い真っ青な空だった。朝食を済ませてホテルを離れたのは7時半のこと。ナビを旭川ロープウェイにセットしてレンタカーを走らせた。市街地を離れて前方に大雪山が見えてくると、そちらも雲は全く無く山並みがくっきりと見えていた。この日は土曜日だったので多くの人出を予想していたのだが、何ともスムーズに走れてロープウェイ前の有料駐車場(駐車料金は500円)には8時15分の到着となった。そして8時半発のロープウェイに乗り込んだ。こちらの料金は往復で2900円だった。観光にはまだ早い時間帯なのか十数人しか乗っておらず、ほぼ登山スタイルの人だけだった。ロープウェイで標高1100mの山麓駅から標高1610mの姿見駅まで移動するのだが、ロープウェイから見る大雪山の山肌は見事な紅葉を見せており、それを見るだけでもロープウェイに乗る価値があると思えた。そして姿見駅で身支度を済ませると、おもむろに旭岳登山を開始した。そこからの登山の様子は下の写真帳をご覧いただきたい。姿見駅から見る旭岳は雪解けが早かったようで、山肌にちらほら見るだけだった。その上空には雲の欠片もなく、真っ青な空が広がっていた。姿見駅から旭岳山頂までは3kmほどの距離。旭岳石室までは易しいハイキングコースとあって軽装の人も歩いていたが、旭岳石室から先が登山コースで旭岳を目指す人のみとなった。その登山者は少なく前後にぽつりぽつりと見るだけで、そのスタイルはこちらと同様に夏山スタイルだった。登山道は全くの火山地帯の道で、植物は枯れた夏草を見るだけだった。登山道の傾斜はややきつめながら、有名山の登山コースなので問題無く登って行けた。その登山道に合目の標識が立っており、最初に現れたのは六合目(標高1825m)だった。快晴の下での登山だったが、登るほどに風が強くなっってきたのでレインウェアの上を着込んで登った。この日の視界は素晴らしく、南にはくっきりとトムラウシや十勝連峰が見えていた。八合目を越した辺りより風は台風並に強くなってくると共に気温も下がってきた。おかげであまり汗をかかず休まず登って行けた。九合目を過ぎて漸く登山道上に雪が現れたが、ステップが刻まれていたので無理なく通過出来た。それまではぽつりぽつりと下山者とすれ違っていたのだが、山頂が近づくと誰とも会わなくなった。傾斜が緩やかになると前面に雪原が広がって、その頂に標識が見えていた。そこが山頂だった。そこにも人影は無く、無人の山頂にパートナーと二人だけで立つことになった。そこで見たのは大雪山の大パノラマ風景で、どの山もこれ以上はないと思えるくっきりさで眺められた。気温は6℃まで下がっていたが、九合目辺りよりも山頂の方が風はいくぶん弱く、けっこう気楽な感じで360度の展望を楽しんだ。旭岳の計画を立ててから天気のことばかり心配していたが、これほどの好天に恵まれて何も言うことは無かった。無人の時間は20分ほどで、漸く次の登山者が現れて、少しずつ山頂は賑やかになってきた。どの登山者もこの幸運と呼べる素晴らしい天気に顔がほころんでいた。山頂で30分余り過ごすと、ひたすら満足の気持ちで下山に向かった。火山帯は上りよりも下りの方が難しいので、滑らないことに意識を集中して下った。下山の途中、九合目の辺りで昼食をとると、後は休まず下って13時に姿見駅に戻ってきた。この日の宿は旭岳温泉のホテルだったので、チェックインの時間までまだ2時間もあった。そこで一休みを終えると、大勢の観光客に混じって一周1.7kmの散策コースを歩くことにした。この散策コースは池巡りのコースでもあり、これはこれでけっこう楽しめた。休み休みで巡ったため、姿見駅に改めて戻って来たのは14時半だった。上空は朝と変わらぬ雲一つ無い空が続いていた。ロープウェイに乗り込むと、車窓から大雪山の紅葉風景を楽しんだのは言うまでもない。
(2019/11記) |