2005年の5月の連休は、奥日光の山を目指した。その奥日光の山でも一番登りたかったのは男体山だった。その男体山の山開きが5月5日と知り、その日に合わせて計画を立てた。姫路を離れたのは5月3日の昼のことで、4日は男体山に近い日光白根山(奥白根山)を登った。この日光白根山はまだまだ雪山で、アイゼンを履いての登山となったが、その日光白根山の山頂に立つと、そこは日光連山の展望台でもあった。男体山を始め、女峰山、大真名子山と2500mに近い雄峰が並ぶ様は壮観だった。その中でもやはり男体山は大きかった。その重量感たっぷりの姿はまさに盟主と言える風格があり、登高意欲をかき立てられた。その男体山は意外と雪は少なく、山頂付近が白いだけで、日光白根山と比べて雪の心配は無さそうに思われた。日光白根山からの下山後は、中禅寺湖の湖畔に移動して菖蒲ヶ浜のキャンプ場にテントを張った。その作業を終えても時間は16時前で、陽が沈むまでにまだ時間があった。そこで登山口のある二荒山神社の下見をすることにした。神社はキャンプ場から車で5分ほどの距離だった。境内に入って受付事務の方に明日のことを聞いてみると、開山式は10時からでそれまで山門は開かないと言われてしまった。但し登山を楽しむ人は受付が6時から開いているので、登拝料を受付で払ってもらえれば、山門の横を回り込んで登っても良いと言われた。これで一安心である。その夜は数日来の疲れから夕方7時には寝てしまい、起きたのは翌5日の午前4時だった。9時間ほどぐっすり寝たことになる。朝食を済ませ、テントはそのままにして二荒山神社へと向かった。前日に続いてこの日も快晴だったが、いくぶん空の青さは薄れており、淡くモヤがかった視界になっていた。車は無料の登拝者用駐車場に止める。既に数台の車が止められていた。そして受付で登拝料(一人500円)を払ってスタートしたのは6時25分だった。山門の横を回り込むと、山門の裏から石段が始まっているのが見えた。登山者は見えず、冷気の漂う中、石段を登り始めた。石段が終わると、クマザサが広がる中に大きな木々が点在する優しげな風景となり、森の中を登る良い雰囲気となった。それも30分ほど登って三合目に着くと、そこから四合目までは20分ばかりの林道歩きとなった。林道はずっと緩やかな坂だった。四合目の入口に石の鳥居があり、それを潜って再び山道に入った。その頃には中禅寺湖がときおり望まれるようになっていた。まだ全景は見えず、南向かいの半月山のほうが高かった。五合目を過ぎると登山道にちらほら雪が現れた。辺りは鬱蒼とした木立で、そのために雪解けが遅いようだった。雪は固く凍りついており、滑らないように慎重に足を運んだ。その雪も六合目からガレ場を登るようになると、陽が十分に当たることもあって全く見られなくなった。石のゴロゴロとした中の急坂登りとなったが、足元に中禅寺湖を見ての開放感のある登りだった。山頂が次第に近くなって、いつ雪が再び現れるのかと思い出した頃、いきなり雪面が広がった。そこは八合目を過ぎた辺りだったが、坂の緩いこともあってアイゼンが無くとも登れそうだった。ただ気楽に登りたく、アイゼンを付けることにした。但しパートナーは足が重くなると言って、アイゼン無しで登るとのこと。もう朝の冷気は消えて気温は15℃まで上がっており、汗をかきながらの雪面登りとなった。その雪は山頂までは続いておらず、山頂が間近になって木々が少なくなると、すっかり消えてしまった。そこでアイゼンを外して最後の一登りとした。そして山頂に着いたのは、歩き始めてから3時間ほど経った9時20分だった。山頂は東西に長くなっており、中央に二荒山神社奥宮があり、そのそばに二荒山大神の像が立っていた。その奥宮がある中央ピークよりも東の方が幾分高く、そちらに一等三角点(点名・男体山)が置かれていた。その三角点の標高は2484mで、そこはピークでは無く、そばに最高点ピーク(標高2486m)を見た。登っているときはほとんど登山者には会わなかったのだが、ピークには10名以上の人がおり、どうやら志津越えコースから登って来た人が多いようだった。それでも静かな山頂と言えた。やはり独立峰なだけに山頂は強い風があり、冷たさもあってすぐに上着を着込んだ。気温はと見ると10℃まで下がっていた。朝は雲のほとんど見られない快晴だったが、次第に上空は薄くモヤがかってきており、山頂に着いた頃は薄晴れの空に変わっていた。奥宮のそばにある小屋の陰で一休みとした。一息ついたところで山頂からの展望を楽しんだ。当然、足元には中禅寺湖が見えている。但し薄モヤがかった視界だけに、登っている途中のほうがきれいに見えていたようだった。西には前日に登った日光白根山が目立っていた。そして北には日光連山の他の山々、太郎山に大真名子山、小真名子山、女峰山が並んでいた。ところで男体山の山頂に立って思ったことは、やはり山の山頂はある程度の広さがあってこそ山頂の開放感が有るということだった。その点でも男体山は申し分なく、素晴らしい展望と共に十分な開放感を味わせてくれた。その山頂で1時間ばかり過ごしたのだが、最後に少し西に下った所にある太郎山神社にも立ち寄ってみた。そちらまで歩く人は少ないようで、山上にいた間、太郎山神社にいる人は見かけていなかったのだが、いざ太郎山神社の前に立ってみると、そこが山頂で一番の中禅寺湖の展望地であることが分かった。中央の奥宮でも三角点ピークでも半分ほどの見え方だったのだが、そこからはすっきりと全景が眺められて、男体山が中善寺湖を抱く山であることを実感させられる眺めだった。下山はすんなりと往路を戻って行く。昼が近づくにつれて気温は18℃まで上がり、樹間を渡る風が快いばかりだった。また往路とは違って登山者も増えており、数十人とはすれ違っての下りだった。最後は二荒山神社の山門に着くと、今度は山門を通って境内へと入った。下山を終えたときは13時前だった。中善寺湖畔は初夏の陽気で、空もまた晴れ間が戻ってまぶしい光が中禅寺湖を照らしていた。その後はキャンプ場に戻り、テントを撤収して中善寺湖畔を後にした。
(2010/1記)(2023/8写真改訂) |