TAJIHM の 兵庫の山めぐり <上信越の山 
 
谷川岳(オキノ耳) 1977m みなかみ町(群馬県)
湯沢町(新潟県)
 
1/2.5万地図 : 茂倉岳/水上
 
【2006年5月】 2006-35(TAJI&HM)
 
   田尻沢ノ頭より  2006 / 5

 上越国境に位置する谷川岳を地図で見ると、関越自動車道の関越トンネルに上越新幹線の大清水トンネル、そして上越線の清水トンネル、新清水トンネルと日本の大幹線が貫いており、いかにこの山が上越の壁になっているかが分かる。その谷川岳を代表する風景としては一の倉沢の岩稜風景が有名だが、その風景を見たく訪れたのは90年秋のことで、尾瀬からの帰り道だった。目的はただ単に岩稜を見るのではなく、紅葉とのコントラストを写真に収めたいとの希望からだった。早朝のガスの中に浮かび出てきた岩稜風景は圧倒的な迫力で、その荒々しさを見ては到底登ることなど考えつかなかった。その谷川岳が2000mに満たない山なのに冬の雪の量が多く、初夏の頃まで残雪が見られることや、谷川岳の名はその一帯の山の総称で、その中心的な山は双耳峰のトマノ耳とオキノ耳であることも次第に知るようになった。そして岩登りで無く登山として楽しむのであれば、ロープウェイを使えば比較的簡単な山であることも分かってきた。
 その谷川岳を登ろうと向かったのは2006年の5月連休の一日だった。その5月連休は日光の山が目的で北関東に入った。4日に日光白根山、5日に男体山と登り、6日は予備日としていた。その6日は週間天気予報では曇りから雨の予想だったため半分諦めており、高曇り程度になってくれれば、どこかの山に登ろうかとぐらいにしか考えていなかった。その考えの中に谷川岳を入れていたのだが、それはロープウェイを使って天神平に出れば、後は標高差も少ないことでもあり、雪山と言えども比較的楽に山頂に立てるのではとの考えからだった。その谷川岳を登ることも想定に入れて5日の夜の宿は、群馬県みなかみ町の奥利根地区にある民宿としていた。天気に恵まれて予定通りの山行を済ませ、日光の山を後にしたのは5日の午後のこと。その空はと見ると薄晴れで、天気の悪化の気配は見られなかった。そこで少し期待を持ちながら民宿に入って天気予報を見ると、明日も好天が続くというもので、一気に気持ちは谷川岳に傾いた。翌6日は5時の目覚め。窓から見える空は雲一つ無く快晴だった。すぐにでも向かいたいところだったが、ロープウェイの始発は7時半とのことなので、7時の朝食を済ませてから、おもむろに向かった。宿からロープウェイの土合駅までは僅かな距離で、15分も走ると駅に着いてしまった。6階建ての駐車場はまだ1階部分が埋まる段階で、ほとんどの車はスキーを目指して来ているようだった。準備を済ませて6階のロープウェイ乗り場へ。料金は一人往復2000円だった。ロープウェイはゴンドラタイプで待ち時間も無く、8時12分に土合駅を離れた。そして一気に山上駅へと向かった。麓辺りでは雪解けが目立っていたが尾根はすっかり白く、まだまだ雪山の様相だった。およそ15分で天神平駅へ。駅を出るとそこはスキー場で、朝の早い時間とあって滑っている人は少なかった。谷川岳登山用の標識があり、その方向を目指せば良いようだったが、二人の登山者が出発しようとしており、その二人の後に付くことにした。すっかり銀世界だったため、アイゼンを付けてスタートする。気温は15℃もあり、寒さは感じなかった。歩き出すと、もう前方に谷川岳の山頂(オキノ耳とトマノ耳)が見えていた。まだまだ遠くに見えていたが、遙か彼方と言うほどでも無かった。きっちりとトレースが付いており、前方に二人連れも見えていたので、けっこう気軽な気持ちで歩いた。始めは緩く下り、そしてスキー場の縁を歩く形で天神尾根に向かって急坂を登り出した。雪はよく締まっていたのでアイゼンの利きが良く、気持ち良く登っていたところ、先行者の二人は意外と遅く、その登りではや抜くことになった。尾根に出ると少し谷川岳が近くなったようだった。そこは田尻沢ノ頭と呼ばれる所で、そこからは尾根が山頂まで続いているのが見えており、ぽつぽつと黒い点で見えるのは登山者のようだった。3,4人ほどでしかなく、この好天にしては意外と少ないようだった。尾根歩きとなって一気に展望が開けて来た。前方は谷川岳から万太郎山へと続く尾根が壁を作っており、北東には笠ヶ岳がすっきりと見えている。他にも立派な姿をした山が幾つも見えており、いずれの山もまだまだ白く冬姿だった。谷川岳と聞けば岩場の厳しさが真っ先に思い浮かぶが、こうやって歩いていると風景の雄大さも一級品だった。その尾根歩きだが、起伏の少ないこともあって歩くのは楽だった。ただときおり谷間から轟音がとどろいてきた。どうやらナダレの音のようだった。気温が上がって頻発しているのだろう。その谷の方向を眺めると、いくつもの黒い筋が付いていた。尾根は1カ所岩場の下りがあったが、そこを過ぎると再びなだらかな尾根歩きとなって、熊穴沢避難小屋に付いた。避難小屋の屋根が雪面と同じ高さになっており、そこに目盛りがあって、雪の量は2mを越えていることが分かった。5月というのに残雪の量には驚かされた。そこまで来ると山頂手前の急坂は間近だった。その急坂の雪面を二人ほどが登っていた。その急坂の起点に着いても足の疲れは少なかった。雪が締まって楽に登れたおかげだろう。そこで休まず急坂に取り付いた。一帯は全て雪面になっておりどこでも登れそうだったが、雪庇が有るかもしれず、なるべくトレースを外れないように心がけた。この急登の途中に尾根に雪の付いていない所があったが、どうせ少しの間だけだろうとアイゼンを付けたまま岩場を登って行くと、雪の無い部分は意外に長く、結局は第一見晴らしと呼ばれる所まで続いていた。アイゼンを付けての岩場登りはけっこう疲れるもので、外しておけばと悔やんだが、あとの祭りだった。その先は全くの銀世界だった。一段と斜度は増して胸突き八丁とでも呼べそうな登りだった。そこは疲れる所だが、勢いがついてしまったと言うか、休まず登って急斜面を登りきるともう肩ノ小屋は目前だった。その肩ノ小屋を横に見て、一気に山頂の一峰、オキノ耳まで登ってしまった。天神平駅を離れてから2時間経っていた。そこまで雪面をひたすら登っていたのだが、山頂には全く雪は付いていなかった。よく見ると肩ノ小屋から山頂までの尾根にも雪は見られなかった。やはり山頂はもう春なのだろう。その山頂は無人だった。狭い岩場だったが他に人がいないとなれば、パートナーと二人だけでは十分な広さだった。その山頂は陽射しを受けて暖かく、気温はと見ると16℃とまずまずで、風にも冷たさは感じられなかった。山頂に着いて風景が一段と雄大になっていた。北には最高点のオキノ耳が目前にあり、一ノ倉岳へと続いている。その右手には朝日岳が覗いている。翻って西を見ると万太郎山へと続く尾根が迫力があり、更にその先には白い尾根が幾重にも重なって続いていた。その素晴らしい風景に出会えて、谷川岳に来て良かったとしみじみと思えてきた。そしてひたすら風景に魅入られていた。ところで北向かいのオキノ耳には時間的に余裕が有れば向かおうと考えていたが、時間はまだ11時前だった。そこで一休みを終えるとオキノ耳へと向かった。但しパートナーは、トマノ耳で寝ころんでいたいとのことで、単独で向かうことになった。見たところオキノ耳までの尾根にも雪は無さそうなので、アイゼン無しで向かった。一部に雪は見られたが別に問題は無く、7分も歩けばもうオキノ耳だった。こちらの方が1977mあり、トマノ耳よりも14メートルほど高かった。そのオキノ耳の展望もトマノ耳と同様に360度と言ってよく、甲乙付けがたい素晴らしさだった。オキノ耳で10分ほど過ごすとトマの耳へと戻った。二つのピークに合わせて1時間ほどいたが、その間に登って来た登山者は5人ほどだったか。この連休中の好天にしては何とも少ない人数で、何とももったいないと思ってしまった。その谷川岳にずっと居たい気持ちだったが、この日を帰宅日としていたため、後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にした。まずは肩ノ小屋に立ち寄り、そこから見える西の展望を目に納めてから下山へと向かった。急坂の雪面は昼どきとなって表面が融け出しており、滑り落ちないように慎重に下った。その昼どきでも登山者はちらほらとしか見なかった。その急坂を下りきると、後は雪の上を歩くことを楽しむように、のんびりと天神平駅へと向かった。こうして何とも楽しく谷川岳登山を終えたが、春の雪山は雪が締まっていることもあって、条件さえ良ければ夏よりもずっと楽に登れることを改めて知らされた。この日の谷川岳登山はルートが優しいこともあったが、4月始めに登った後山登山と比べると、半分どころか三分の一程度の労力で登れたのではと思える気楽さだった。
(2006/6記)(2025/8写真改訂)
<登山日> 2006年5月6日 8:35天神平駅スタート/9:27避難小屋/9:57雪の無い岩尾根の最上部/10:24肩の小屋/10:34〜11:27山頂(トマノ耳とオキノ耳)/11:35〜45肩の小屋/12:04雪の無い岩尾根の最上部/13:16天神平駅エンド。
(天気) 朝方は淡い色合いながら青空が広がっていた。その後は薄い雲が広がって薄晴れとなる。陽射しが柔らかい。気温はスタート時で15℃あり、暖かさを感じた。風も西風が弱く吹く程度。視界はまずまず良し。急坂登りの頃には薄曇りまでになっていた空は、山頂に着く頃には持ち直して、再び青空が広がって来た。その空も下山に向かう頃よりはっきりと下り坂の気配を見せて急速に薄雲が広がり出し、下山を終えた頃はすっかり曇り空に変わっていた。
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ゴンドラに乗っているとき、天神尾根の方向を眺めた 天神平駅を出ると、そこはスキー場だった スキー場内を歩き始めると、もう谷川岳が見えてきた

(←)
天神尾根を歩いて
行く 谷川岳をは
っきり見るように
なった

 (→)
  朝日岳をすっきり
  と見る
谷川岳の山頂を見る 天神尾根を歩くうちに、谷川岳から南西へと延びる尾根が雄大に眺められた
天神尾根はなだらかに続いていた 阿能川岳の左手に見えてきたのは吾妻耶山だった 吾妻耶山を大きく見る
谷川岳が近くなってきた 谷川岳の左手を眺めた
振り返って天神平スキー場のピークを見る 熊穴沢避難小屋は2メートルの雪に埋もれていた 避難小屋を過ぎると、急坂が始まった
背後に風景が広がってきた 背後に武尊山が望めた 山頂の一峰、トマノ耳が近づいた

トマノ耳へと最後
の頑張りだった

トマの耳に立つと
雪はなかった

肩ノ小屋の方向を
眺めた
トマノ耳からオキノ耳の方向、北へと続く尾根を眺めた 左の写真に写る巻機山を大きく見る
上の写真の右手を見る 遠くに尾瀬の山を見た 左の写真の右手、東南東方向に武尊山を見た

トマノ耳より天神
尾根を眺めた

オキノ耳まで歩い
て来た

山頂標識を見る

オキノ耳に立って
トマノ耳から万太
郎山へと続く尾根
を眺めた
上の写真の右手、北の方向に茂倉岳と一ノ倉岳を見る 左の写真の右手、北東から東に広がる山並みを見る

苗場山の方向を少
し大きく見る

トマノ耳に戻って
きて、足下に肩ノ
小屋を見る

肩ノ小屋を離れて急
斜面を下って行く

第1見晴らしの近く
まで下って、山頂方
向を振り返った
 
下る途中、北東方向を眺めた 燧ヶ岳はごくうっすらとしか見えなかった

(←)
天神尾根の下り
を続ける 前方
に武尊山を見た

 (→)
  スキー場の背後の
  山を見上げるよう
  になった

武尊山を大きく見


緩やかな尾根歩き
だった

振り返ると、谷川
岳の上空はすっか
り曇り空に変わっ
ていた

(←)
天神平スキー場が
見えてきた

 (→)
  スキー場へと最後
  の下りに入った