TAJIHM の 兵庫の山めぐり <群馬県の山(尾瀬の山) 
 
至仏山    しぶつさん 2228.0m 片品村・みなかみ町
(群馬県)
 
1/2.5万地図 : 至仏山
 
【2007年10月】 2007-89(TAJI&HM)
 
   尾瀬ヶ原より  2007 / 10

 尾瀬ヶ原を取り囲む山並みの中で至仏山と燧ヶ岳は突出した存在の山で、この二つの山を背景として写された尾瀬ヶ原の写真はそれこそ無数にあると言えるほどで、フォトジェニックな山としては日本有数の山ではと思われる。その一つの至仏山を目指したのは2007年の10月下旬のことだった。例年なら既に紅葉は終わっており、ただ冬を待つだけのうら寂しい風景となるのだが、この年は暖かい秋で10月の半ばを迎えて漸く秋らしい気温となっていた。そのため紅葉は遅れ気味で、訪れた群馬県の片品村でも紅葉は終わるどころか漸くが始まろうとしていた。その片品村入りしたのは10月20日の夜のこと。雲の多い空で、いっとき小雨もぱらついていた。宿はイギリス風の装いの瀟洒なペンションで、そこをベースに至仏山と武尊山の登山計画を立てていた。但し順番を決めておらず、天気とにらみ合わせて天気の良い方で至仏山をと考えていた。至仏山では登山の後に尾瀬ヶ原のハイキングも行う予定で、是非とも快晴の下で登山したかった。その夜に見た地元の天気予報は、翌21日の群馬県内は快晴となっていたが、新潟県は雨が一時予想されていた。尾瀬の天気は新潟県の天気に左右される傾向があるため、21日は武尊山、22日に至仏山登山とここで決定した。なお22日の新潟の天気は晴れときどき曇りとなっていた。21日を迎えると朝の片品村の空はガスがかかっており、今一つすっきりしていなかった。そして予定通り武尊山に向かったのだが、結果は武尊山は中腹まで晴れていたものの、山頂部は朝からガスに包まれていた。武尊山から見た尾瀬の方向もガスに閉ざされていた。その天気が良くなってきたのは夕方になってからで、漸く武尊山のガスも消えようとしていた。22日こそは快晴をと願ってその夜は寝に付いた。
 22日の朝、ペンションの部屋のカーテンを恐る恐る開けると、そこに見えたのは雲一つ無い快晴の空だった。真っ青な空で、思いっきり澄んでいた。すぐに飛び出したいところだったが、終日を至仏山と尾瀬ヶ原で過ごす予定だったっため、あわてずゆっくりと朝食を楽しんで宿を離れたのは8時を回ってからだった。この日の計画は鳩待峠より至仏山へと向かい、登頂後は尾瀬ヶ原の西端となる山ノ鼻へと下る。そして午後は尾瀬ヶ原の散策で過ごす考えだった。シーズンなら鳩待峠へはシャトルバスに乗り換えてでないと行けないのだが、マイカー規制は前週で終わっており、マイカーで行けることになった。片品村の集落では紅葉はほとんど見られなかったが、鳩待峠に近づくにつれ、山は見事な紅葉を見せて来た。例年なら紅葉は終わっているはずだが、むしろちょうど見頃になっていた。その素晴らしい景色を見ながら鳩待峠の駐車場に着いた。時間は8時半とあって、駐車場は九割方は既に埋まっていた。そこは有料駐車場なのだが、その料金を聞いて驚いてしまった。1日当たり2500円だった。思わず引き返しそうになったが、そう言う訳にもいかず駐車したが、登山口駐車場としては日本一高額ではと思ってしまった。鳩待峠の一角が至仏山の登山口だった。早い時間にハイキングを始める人が多いのか、茶屋の前は閑散としていた。それでもこちらが準備している間に、4人ほどが至仏山登山口へと入るのを見た。こちらも続くことにした。入口には入山者数をチェックするためのセンサーがあり、その先より緩やかに遊歩道が始まっていた。周囲の木々は落葉が進んでいたが、まだまだ紅葉として楽しめる分は残っていた。前日に降った初雪は朝のうちに早くも溶けてしまったのか、ほんの僅か見られるだけだった。気温は10℃を越える程度で低いはずなのだが、十分な陽射しを受けているとむしろ暑いほどで、Tシャツ1枚で登ることにした。途中、遊歩道が木道に変わると、南の展望が良くなって来た。そちらにすっきりと見えていたのは武尊山で、前日のガスの天気とは様変わりしてくっきりと鮮やかに見えていた。この天気の変わり様にはただ感心するだけだった。その武尊山の展望地を過ぎると、登山道は向きを北西に変えて、前方に小至仏山と至仏山が並んで見えるようになった。始めのうちに10人ほどの登山者を追い抜いたため、この日の登山者は多いのかと思っていたのだが、その頃には前後に人影を見なくなっており、いたって静かなハイキングだった。オヤマ沢の標識を見て階段を登ると、程なく湿原なのか木道部分を歩くようになった。地図を見るとオヤマ沢田代のようだった。前方に小至仏山を見ながらの軽いハイキングだった。それが少し登山っぽくなったのは小至仏山への登りにかかってからで、岩場も見られるようになった。また木々がぐんと少なくなって展望が一気に良くなった。東には尾瀬ヶ原を前景に燧ヶ岳が見えていた。それは尾瀬を代表する風景で、その右手には日光の山並みに皇海山、そして南には赤城山まで見えていた。どの山も真っ青な空の下にくっきりとした姿だった。小至仏山の山頂が近づくとすっかり岩場の風景となった。そのまま小至仏山のピークに着くのかと思っていると、登山道はピークを通らず直下を横切って至仏山へと向かっていた。そこは小至仏山のピークに立ち寄って一休みすることにした。岩場のピークに立つと、そこからはほぼ360度と言える素晴らしい眺望が広がっていた。ただ登山者でここに立ち寄る人は少ないようで、そのまま至仏山へと向かう人が多かった。どうやら至仏山でも同じ眺望があると考えているためだろうが、この小至仏山からは至仏山が間近に見えて、ここに立ってこその眺望もあって立ち寄る価値は十分にあった。小休止の後、至仏山へと最後の登りにかかった。小さく下って登り返すが、岩場を歩くことが多くけっこう歩き難かった。そこを石伝いに歩いているうちになぜか勢いがついてしまって早足気味になり、見える人はほぼ追い抜いて小至仏山から30分とかからず至仏山に着いてしまった。至仏山の山頂も岩場になっていたが、まずまずの広さがあった。そこに20人を越える人がおり、大賑わいだった。この日は月曜日だったが、これだけ有名山だと曜日は関係無いのかも知れなかった。但し中高年者で100%と言えたが。その賑わいの一隅でパートナーと一休みとした。至仏山はこの一帯では燧ヶ岳と並んで最も高い山になるだけに、岩場には前日の雪が溶けずに残っていた。一段落したところで展望を楽しむことにした。やはり小至仏山以上の好展望台だった。尾瀬の風景だけで無く、北から西、南へと上信越の山並みが一望で、地図とにらめっこしながらその大展望を楽しんだ。その山頂は昼が近づくといっそうの賑わいとなって来たため、30分ほどの休憩で切り上げることにした。次は尾瀬ヶ原を目指して長い下りである。山頂と尾瀬ヶ原とでは標高差は約830mだった。その登山道に入ると、一気に人の気配が少なくなった。始めは木の階段を下って行くが、前後に数人を見るだけだった。木の階段はゆったりと作られており、けっこう気楽に下ることが出来て、しかも尾瀬ヶ原の大展望を見ながらの下りは何とも贅沢な雰囲気だった。それが暫く続いたため、この良い雰囲気のままのんびりと下って行けるものと思っていると、途中で階段道は終わってしまった。そうなると岩や石の多い急坂を滑らないように慎重に下ることになり、俄然厳しくなって来た。尾瀬ヶ原は下れどもなかなか近づかず、途中で一休みをすると、そこにあった標識には中間地点と書かれていた。漸く半分下っただけだった。その先もずっと滑り易い岩場が続くことになり、本当に足がくたびれたとの思いで尾瀬ヶ原の西端に下り着いた。下っていた時間は1時間半ほどだったが、足を踏ん張っての下りだったためか2時間以上は歩いた思いだった。ところでその尾瀬ヶ原側の登山口には案内板があり、この東面登山道は登りとしてのみ利用して下さいと書かれていた。やはり滑り易い岩場を考慮してのことではと思われた。
 尾瀬ヶ原に着いた時間は12時40分。13時を回ることを予想していたため、まだ昼食の時間帯に下り着けたことに一安心だった。さっそく昼休憩の場所を求めて木道を歩き始めた。もうその辺りから湿原の中を木道が続いており、尾瀬独特の風景が広がっていた。山ノ鼻から先はメインコースになるため、そこに出るまでの休憩ポイントで昼休憩とした。上空は少し雲が現れて快晴とは言えなくなっていたが、柔らかい陽射しは快く、爽やかな空気に包まれての昼休憩だった。そしてお腹を満たし足の疲れも少しは回復したところで、尾瀬ヶ原の散策を開始した。尾瀬は16年ぶり三度目だった。以前と比べると木道はすっかり二車線になっており、右側通行でマイペースのハイキングが出来るようで、いっそうハイキングとして上質の場所になっていた。山ノ鼻を過ぎてメインコースに入ると、一気に大勢のハイカーを見るようになった。ただ既に13時を回った時間になっているためか、よく見るとほとんどは戻って来る人のようだった。その人たちとすれ違ううちに中田代三叉路に着いた。その分岐点ではヨッピ橋方向へとメインコースを離れて静かなコースに入った。するとそちらは思っていた以上にすぐに人影は無くなって、大自然の中をパートナーとただ二人で歩くだけになった。それまでは陽射しが雲に隠されて少し肌寒さも感じることもあったのだが、また上空は青空が広がろうとしていた。そうなると少し吹く風はひたすら爽やかで、ただただ快適の一言だった。また尾瀬ヶ原の木々こそ落葉が進んでいたが、周囲の山肌はまだ十分に紅葉の美しさを保っていた。その風景が心にしみ込んで来るようで、心が豊かになってくる喜びを感じながらそぞろ歩きを続けた。ヨッピ橋まで足を進めると、もうそれ以上は東へと進むのは時間的に無理と分かり、竜宮十字路へと向きを変えた。そこまで来ると燧ヶ岳は至仏山よりもずっと大きく見えており、まさに尾瀬ヶ原のまっただ中にいる雰囲気だった。ときおり人を見るようになったが一様にカメラを抱えており、山小屋をベースにしているカメラマンではと思われた。竜宮十字路に着くと、そこで引き返すためメインコースを山ノ鼻へと向かった。もう15時を回っており、尾瀬の光は夕暮れの気配を見せていた。数人とすれ違ったが、小屋泊まりの人と思えた。そのうちに出会う人も無くなり、前後に全く人影を見なくなった。本当に静かな尾瀬となり、ただ黙々と歩くのみだった。その先の木道は逆光に光っていた。そして沈み行く前の夕陽が紅葉を明るく照らしたかと見ていると、程なく行く手に見える至仏山に陽が沈んで行った。そして山陰が徐々に足下に近づいて来た。その夕暮れの移り行く様を眺めているのも楽しく、山ノ鼻へと戻って行った。その山ノ鼻に着いたのは16時を回った時間だったが、足下は既に薄暗くなろうとしていた。もう十分に尾瀬を楽しんだことでもあり、後は鳩待峠へ戻るのみ。その鳩待峠への道も総て木道になっており、ごく気楽に早足で歩くことが出来た。おかげで鳩待峠には上り坂といえども50分の時間だった。鳩待峠に着いたときはすっかり薄暗くなっており、駐車場には数台の車が止まっているだけだった。ちょっと遊びすぎたかなと思える満足感で鳩待峠を後にした。
(2007/11記)(2010/9改訂)(2022/1写真改訂)
<登山日> 2007年10月22日 8:38鳩待峠スタート/9:39オヤマ沢分岐/10:06〜14小至仏山/10:41〜11:06至仏山/11:54中間点/12:40尾瀬ヶ原側登山口/14:26ヨッピ吊り橋/14:51〜15:00竜宮十字路/6:14山ノ鼻/17:03鳩待峠エンド。
(天気) 快晴。朝の気温は8℃ほど。空はほとんど雲は無く、澄んだ青空が広がっていた。山上に出ると澄んだ視界で、どの山並みもくっきりと見えていた。尾瀬ヶ原に出た昼ごろは上空にうろこ雲が広がったが、それも午後も遅くなると薄れて、夕方は再び快晴となる。午後の尾瀬ヶ原は気温は15℃ほどで、微風があって爽やかそのものだった。
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鳩待峠に人影は少なかった 鳩待峠からは至仏山が見えていた 鳩待峠の至仏山登山口を見る
なだらかな感じで登山道は始まった 空が青かった 森を散策する気分で歩いて行った
色付いた木立を眺めながらの散策だった 赤い実はナナカマドのようだった シラカバの中を緩やかな階段が続く

少し登ると、早く
も燧ヶ岳が見えて
きた 遠くに会津
駒ヶ岳も見えてい


登山道が尾根の南
を巻き出すと、木
道が現れた

(←)
南西方向に前日に
登った武尊山が現
れた

 (→)
  武尊山を大きく見
  る
笠ヶ岳が明るく見えていた 登山道そばのダケカンバを仰ぎ見る シラビソ林を通して見えてきたのは小至仏山だった
(←)
尾瀬ヶ原の風景が
眺められるように
なった

 (→)
  コースが北西に向
  かい出すと、前方
  に小至仏山と至仏
  山が並んで見えて
  きた
小至仏山の左手に見えたこのピークは悪沢岳かと思われた 小至仏山がはっきり見えてきた 標識が立っており「オヤマ沢」と書かれていた 鳩待峠から2.9km、山頂まで1.6kmだった

やや急坂を登って
行く

湿原が広がった

ここはオヤマ沢田
代だった
オヤマ沢田代を歩く 前方に小至仏山が見えている  小至仏山がだいぶ近づいた 小至仏山への登りにかかる

(←)
小至仏山山頂が間
近になった

 (→)
  小至仏山山頂は好
  展望地だった
  南西方向を眺める
小至仏山の山頂に立って西から北へと上信越の山並みを眺める(右上の写真の右手に続く風景)
上の写真に写る朝日岳から谷川岳の辺りを大きく見る
上の写真に写る谷川岳(トマの耳、オキの耳)の尾根を大きく見る 上の写真に写る妙高山、火打山を大きく見る
南西遠くに見える浅間山を大きく見る 小至仏山を離れて至仏山を目指す
ごく易しい道で至仏山に近づいた 至仏山の山頂は大勢の登山者で賑わっていた 先ほどまで立っていた小至仏山を振り返った
至仏山の山頂は小至仏山以上の素晴らしい展望地 北から東、南東の方向を眺める

(←)
山頂からの展望は
何と言っても燧ヶ
岳と尾瀬ヶ原の風
景だった

 (→)
  北を見ると越後三
  山が目立っていた
至仏山山頂から改めて朝日岳から谷川岳へと続く尾根を見る 北の平ヶ岳を大きく見る
北西の巻機山を大きく見る 巻機山の右に小沢岳を見る 南に赤城山を見る
南東には日光の山並み、更に足尾山系までが望まれた 左の写真の日光白根山を大きく見る
山頂を離れて東面登山道を下り出した 南東方向の足下には鳩待峠が見えていた 尾瀬ヶ原と燧ヶ岳を見ながらの下りだった
池塘の点在する風景が次第に大きくなった 池塘の色が美しかった 次第に岩が増えて下り難くなった
岩場の下りが連続するようになった 滑らないように慎重に下って行く 尾瀬ヶ原の西端、山ノ鼻付近の紅葉を眺める 小屋が見えていた  登山口に着くと、このコースは何と上り専用と書かれていた 知らなかった!!!
 
 尾瀬ヶ原散策
 16年ぶりの尾瀬ヶ原は快晴に恵まれた。午後だけのハイキングのため、尾瀬ヶ原の三分の一ほどを巡っただけだったが、それでも十分に尾瀬の雰囲気に浸ることが出来た。本当に尾瀬はいつ来てもその独特の落ち着きと優しさをもって、暖かく迎えてくれる所である。(2007.10.22)
至仏山から下りて来ると、12時40分より尾瀬の散策を開始した シラカバはほぼ落葉していたが、カラマツはきれいな黄葉が見られた 山ノ鼻に着くと、至仏山荘の前は賑わっていた
山ノ鼻を離れて少し歩いたとき、至仏山を振り返った 池塘のそばを通る 前方の燧ヶ岳はひたすら美しかった
紅葉の山裾とシラカバを見る 河畔に一本のシラカバを見る 大きな池塘を前景に燧ヶ岳を見る
北に景鶴山を見る ヨッピ橋に近づいた ヨッピ橋の手前から竜宮十字路への道を歩いた
竜宮十字路の近くより燧ヶ岳を眺めた カラマツの黄葉を見る 山裾の紅葉を見る
池塘が鮮やかな色を見せることがあった 池塘とシラカバの風景を見る 光る木道を見ながら戻って行った
紅葉の木立を見る 振り返ると、燧ヶ岳の上空に雲は無かった 池塘の水の色が変わってきた
木道の光り方が強くなってきた 夕陽が至仏山へと沈んで行く 夕暮れが次第に燧が岳に向かって行く