TAJIHM の 兵庫の山めぐり <南アルプス深南部
 
池口岳    いけぐちだけ 2392m 飯田市(長野県)
川根本町(静岡県)
1/2.5万地図 : 池口岳
 
【2010年8月】 2010-73(TAJI)
 
   鬼面山より  2010 / 8

(8/14)南アルプスの山と言えば南部は光岳までを通常は呼ぶようで、それよりも南の山となる信濃俣、池口岳、大無間山などは深南部と呼ばれて、ちょっと区別されているようである。その深南部の山々の中で日本二百名山に選ばれているのが池口岳と大無間山の二つ。そのうちの池口岳が2010年に入ってから気になり出した。登山コースの起点は遠山郷の池口集落で、民有林道の遠山林道を利用すれば、標高1090mにある登山口まで車を進めることが出来るようだった。そこから山頂までは片道8kmのコースで、ガイド本を見ると、早朝にスタートすれば日帰り可能とあった。別の本では途中のザラ薙平でテント泊として、一泊二日としており、これなら時間を気にしなくても良さそうだった。但し重装備となるが難点だった。2010年8月のお盆休暇は13日から16日までの4日間。この中で池口岳登山を目指すことにした。軽いザックで日帰りする方が楽かと思えたが、年に一度はテント泊をしたくなったことと、朝の冷気の中で山頂に立ちたかったことで、テント山行と決めた。そのお盆休暇が近づいたとき、どうも天気が良くなさそうになってきた。曇りか雲の多い晴れとの予想だった。山上では雨もありそうに思えたが、それでも年に一度は山中で寝て心の洗濯をしたい気持ちがあったので、晴れが期待出来なくとも向かうことにした。始めの予定では高速道のSAで仮眠をとろうと考えていたが、飯田ICまでの距離を考えると、自宅を3時に出れば良さそうだった。なおパートナーはお盆休暇が無いため、単独行だった。当日14日は、深夜帯と言えそうな2時前に目覚めたので、そのまま出発とした。お盆休暇中とあって、深夜の時間ながらも山陽道を走る車は多かった。それでも渋滞になることは無く、名神、中央道と走り、虎渓山PAで1時間ばかりの仮眠もとって、7時前に飯田ICを下りた。矢筈トンネルを抜けて国道158号線を南下する。この国道158号線は三週間前の鬼面山登山で走ったばかりなので、ちょっと飯田市に来過ぎではと思った。朝の空は薄ぼやけており、薄晴れ程度だった。視界は悪く、山並みは近くの山もうっすらとしており、どうも山上はガスの世界かと思えた。天気予報はこの日は曇りで午後に雨、明日が曇り時々晴れとあり、明日の天気に期待することにした。問題は池口岳登山口への林道がすぐに分かるかと言うことだったが、光岳方向への車道が分かれたその先で大島集落に入ると、あっさり池口岳の標識を見た。そちらへの細い車道に入るとまた民家が現れて、そこが池口集落だった。車道はくねくねと民家の中を続いており、ときおり池口岳の標識が現れた。最後の民家が遠山家で、その先から始まる林道は遠山家所有の遠山林道となる。林道はダート道で、ガイド本では悪路と書かれていたが、少し荒れている程度に見えた。ゆっくり走れば特に四駆車で無くとも問題無く、登山口に着いたのは8時15分。ちょうど良い時間ではと思えた。登山口そばの駐車スペースには3台の車が止まっていた。その列に車を止める。準備を整えて背負ったザックの重量は16kgほど。一泊だけなので食料は少なかったが、水場が無いと言うか遠く離れているようなので、3.5リットルの水を担ぐことにしたので、一泊にしては重い荷になっていた。熊に注意の標識を横目に登山道を登り出す。空はどんよりとしたままで、あまり変わっていなかった。登山道は緩やかまま続いていたので、荷は重いながらも、ゆったりと歩けるのは良かった。気温も20℃ほどで高くもなかった。始め周囲はヒノキ林だったり、アカマツ林だったりしたが、次第にカラマツが増えてきた。周囲はそれらの高木が多いとあって、ただ森の風景を眺めながらの登りだった。登山道にはカラマツの落ち葉が積もっており、踏み心地が良かった。その雰囲気の中を登っているとき、突然腕の一カ所がひんやりした。見ると上から落ちてきたのか、山ヒルが貼り付いていた。どうやら池口岳には山ヒルが居るようで、これは少しばかり気の重くなることだった。登山道に標識は少なく、漸く見たのは面切平で、歩き始めてから1時間以上経っていた。そこに来るまでも尾根は緩やかだったが、面切平は名のごとく、いっそう緩やかだった。とにかくゆっくり登ることを心がける。その先で少し斜度のある上り坂になってきた。標高が1500mを越してくると、辺りにうっすらとガスが漂い出した。そのうちに山稜が二重になって、どちらを歩くのが正しいのかと思ったが、道なりに歩くだけだった。周囲がシラビソ林になってくると、ガスが濃くなってきた。周囲の見通しが悪くなったが、雨の降りそうな感じにはならなかった。やがて右手の斜面が崩壊地となった。その縁は痩せ尾根になっている。本来ならそこで展望を得られるはずだったが、見るのはガスの風景のみだった。その先で三角点(点名・黒薙)に出会った。ガイド本では「黒薙ノ頭」の名があり、標高は1838mである。そこで一休みとしたが、そこまで3時間を歩いていたため、足はけっこうくたびれていた。休憩後に登山者とすれ違ったが、この日始めて見る登山者だった。ひたすらガスの中を歩くが、周囲のシラビソ林が次第に暗くなってきた。雨になるかも知れなかった。緩い上り下りが続くことで、足はいっそう疲れて、1902mピークまでが長く感じられた。まだかまだかの思いで漸く小さなピークに立った。これで後はテント場への下りかと思っていると、一度下って更に先ほどのピークよりも高く登ることになった。そして着いたピークには標識があって、山頂まで2時間40分と書かれていた。改めて地図を見ると、先ほどのピークは1902mピーク(利検沢ノ頭)だったようで、そこは1971mピークと思えた。そこから先の下り坂に入ったときは、足どりはすっかりヨタヨタ状態になっていた。その下りで雨がぱらつき出した。次第に小雨に変わってきたとき、ザラ薙平のテント場に着いた。特にテント場の標識は無かったが、一帯は平らで草地になっており、何かを燃やした跡もあったので、テント場と見て間違い無さそうだった。小雨の中、素早くテントを張った。そして倒れ込むようにしてテントに潜り込んだ。暫し体を休めるのみだった。そしてそのまま寝てしまった。気が付くと夕方になっていた。少し元気も戻ったので起きてみると、足にいっぱい血が付いていた。どうも知らぬ間に山ヒルにやられたようで、傷口を数えると四カ所あった。思った以上に池口岳には山ヒルが多いようで、がっかりする思いで傷の手当てをした。軽く小腹を満たすと、また寝ることにした。外は小雨が降り続いていた。ときに雨の音が大きくなって目を覚ましたが、すぐに寝入った。一度さっとテントが明るくなって目覚めたことがあった。すぐに暗くなってしまったので、何事かと外を覗くと、外はただガスの世界だった。どうやら一時的にガスが薄れて月の光が射したようだった。テントの周囲を見ると他にテントは無く、どうやら一人だけで夜を過ごしているようだった。
<登山日> 2010年8月14日 8:25登山口スタート/9:32面切平/11:21黒薙ノ頭/12:48[1971m]ピーク/13:00ザラ薙平テント場着。
(天気) どんよりとした曇り空で、その雲はガス雲だった。スタート時の気温は22℃で、風は無かった。途中から周囲にガスが漂い出すと、気温は20℃以下に下がってきた。風も弱いながら吹くようになって、涼しい中の登山だった。テント場に着いたときは、すっかりガスだった。その直後より小雨が降り出した。雨は降ったり止んだりで、ときに強く降ってきた。夜が遅くなって雨は止んだ。
(8/15)目覚めたのは4時前だった。テントから外を覗くと、雨は降っていなかったが、濃いガスが漂っていた。深夜に外を覗いたときと変わっていないようだった。周囲にテントは無く、結局一人で夜を過ごしたようだった。もう目覚めたので、外は暗かったが山頂を目指すことにした。草木はすっかり濡れていたので、雨具を着て登山開始とした。持つ物はカメラと軽食だけのごく軽い装備だった。ガスが薄いようなら山頂での晴れも期待出来るのだが、濃いガスを見ていると、逆に雨が降るのではと心配になった。当然ヘッドランプで足下を照らしながらで、そろそろと歩いて行った。少し風があったが、ガスのために朝の冷え込みは無く、気温は前日と変わらぬ17℃だった。雨具を着ていることもあり、寒さを感じることは無かった。尾根は小さな起伏を続けていたが、細尾根となって南東方向に向かうようになった。その頃にはヘッドランプの必要は無くなっていた。やがて尾根の傾斜が増してくると、前日の足の疲れで、足取りが重くなってきた。ゆっくり歩いていたが、更に歩度が鈍ってきた。最初のポイントは加加森山コースとの分岐点だったが、これがなかなか現れなかった。急坂が続いて、いつポイントに着くのかと焦りの気持ちが起きたとき、漸く分岐点の標識が現れた。急坂の途中からの分岐だったので、唐突に現れた感じだった。標識が無ければ見過ごしたかも知れなかった。そこまで一時間半かかっていたので、軽装備にしては遅いと言えた。ただそのポイントに着いたことで、気持ちの上では楽だった。相変わらず周囲はガスのままだった。登るほどにテント場と同様、草地の広がる風景が現れた。優しげな風景で、傾斜も緩くなってきた。その緩やかな登りの先が、池口岳の山頂だった。ぱっと見た印象は雑木の茂るごく平凡な風景で、ガスで周囲が見えないものの、ガスが無くともさほど展望が良いようには思えなかった。気持ちとしては漸く着いたと言うか、目的を達したとの思いが強く、単にほっとしたと言うのが正直な感想だった。ただ長い道のりの後で着いたという事実は重く心に広がった。ガスの山頂では長居をする気は起きず、また双耳峰のもう一峰である、三角点がある南峰まで足を延ばすことも、もう考えていなかった。結局10分少々滞在しただけで、山頂を後にした。重かった足が下山となると意外と軽快に下って行けた。目的を達したとの思いが、足を軽くしたのかも知れなかった。南峰まで訪れるとなるとテント場に戻ってくるのは10時を過ぎるのではと考えていたのだが、8時を回った時間に戻ってきた。テントの中でいっとき横になって休んでいると、この日最初の登山者が現れた。3人グループで、5時過ぎから登り出したとのことだった。一時間近く休んだ後、テントを撤収する。水はここまでで2リットル減らしていたのだが、テントが水分を含んで重くなったのか、ザックを担ぐとあまり重さは変わらないように思えた。9時台からの下山は気分的に楽で、とにかくゆっくり歩くことを心がけた。天気は相変わらずガス雲の空で、周囲もガスの状態は全く変わらなかった。始めに1971mまで高度を上げれば、後は基本的に下りが多いので、ザックが重いと言えども、まずまずのペースで歩いて行けた。気温は18℃ほどで、涼しいのも良かった。黒薙ノ頭を過ぎ崩壊地のそばを過ぎ、黙々とガスの風景の中を下る。。そのガスは一時的に薄れてもまた濃くなって、前日よりも全体として濃いのではと思えた。1561mピーク辺りでは暗さが増して、一時的に雨粒の落ちてくることもあった。それにしても静かな山で、テント場以後に会ったのは、2人だけだった。2時間少々で面切平に着くと、もうずっと緩やかな下りとなるので、気分的にはずいぶん楽で、森の雰囲気を楽しみながら下った。アカマツ林が広がり出すと、登山口が近いとあって休まず下って行った。その頃には気温は20℃を越すまでになっていた。そしてテントを離れてから3時間で登山口に下り着いた。二日間とも展望には恵まれなかったが、テント山行を無事終えて、心は十分に満たされた思いになった。ただ車に戻って登山靴を脱いだとき、その気持ちにちょっと水を注された。足にはきっちりと山ヒルが貼り付いていた。注意はしていたのだが、それも3匹が貼り付いていた。どうもこの山域を登るときは、しっかりと足周りを防御しておく必要がありそうだった。
(2010/10記)(2021/8改訂)
<登山日> 2010年8月15日 4:40テント場スタート/5:08[1983m]ピーク/6:11コース分岐点/6:30〜43山頂(北峰)/6:58分岐点/8:15〜9:11テント場に戻ってきて休憩及び撤収作業/9:21黒薙平のピーク/10:16黒薙ノ頭/11:26面切平/12:10エンド。
(天気) 未明に目覚めると、外はガスに包まれていた。気温は17℃。風は弱々しく吹いていた。終始ガスの中を歩いて山頂に着く。山頂の気温は15℃で、少し肌寒さを感じた。その後、下山を始めてもガスに包まれたままで、ガスは濃くなったり薄くなったりを繰り返すだけだった。気温は徐々に上がり、18℃が長く続いた後、登山口が近づいて20℃を越してきた。登山口から見る空は、前日と同様に曇り空だった。
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登山口の辺りを眺める 登山口には「熊に注意」の標識があった 登り出すとアカマツの林が広がった
幹にテープが巻き付けられた木立が ザラナギ平を通る うっすらとガスが漂い出した
登山道では色々なキノコに出会った これはタマゴタケか このベニタケの仲間を一番良く見た
二重山稜部を歩く 隣りにも稜線が見えている 登山道は厳しい所は特に無く、優しいと言えた 鬱蒼とした森は、まさに深南部の雰囲気だった
ネザサの中を登山道が続く ガスが濃くなってきた 右手が崩壊地になっていた 展望があるはずだが
黒薙ノ頭で三角点を見る 一段と薄暗くなってきた 利検沢ノ頭までが長く感じられた
シダの茂る中を歩く 1971mピークに着く この先がテント場だった 小雨の降る中、テント設営を行った
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目覚めてテントの外を見るとガスの世界だった 足下が見えるようになってヘッドランプを消す 2156mピークを越すと急坂が続く
加加森山コースとの分岐点に着く 晴れることの期待出来ない空だった 山頂が近づいて草地の中を歩くようになった
 池口岳山頂(北峰)を
 見る 漸く着いた思い
 だったが、あまり高山
 の山頂に立つ雰囲気は
 無かった

     周囲は樹林が囲んでい
     た 展望はあまり無さ
     そうだった
 
山頂には15分と居らず下山に向かった 慎重に岩場を巻いた 下山は樹林の雰囲気を楽しみながら下った
このヨメナのような白い花をよく見た シモツケソウが点々と咲いている所があった これはミヤマキリンソウのようだった
テントを撤収した後、テント場の周囲を眺めた 展望があるはずの崩壊地は前日以上のガスの濃
さだった
落ち着きのあるシラビソ林を見る
途中、一時的に小雨がぱらついた アカマツ林が広がり出すと、登山口は近い 登山口が見えてきた