名古屋市から考えると、充実感のある山に登るとなると、比較的近い山域は鈴鹿の山、美濃の山、三河の山となるが、いずれの山域も高速道路で1時間ほど走らないと近づけない。その名古屋地区に一番近い山域は尾張北部の犬山市近郊となるが、そこは漸く平野が終わって山が見られるようになる地域だが、そこで見られる山は丘に近いもので、ほとんどが短時間で山頂に立ててしまうため、充実感としては物足らないと言えるかもしれない。そこで山に登るだけでなく、森のハイキングも楽しめることと組み合わせて考えると、犬山市の東端に位置する八曽自然休養林がその目的に適いそうに思えた。深い森となってキャンプ場があり、五条川の支流には滝もあって遊歩道が巡らされている。そして登山としては八曽山が楽しめそうだった。
2006年10月1日はせっかくの日曜日なのに朝からどんよりと曇って、今にも雨が降り出しそうな空だった。天気予報では昼からは雨になると予想されていた。そこで午前中だけでも身近な所で体を動かそうと考え、そこで思いついたのが八曽自然休養林だった。現地まで早く移動しようと、高速道を使って中央道の小牧東ICを下りた。後は入鹿池に向かい、湖畔に出ると五条川沿いの道を遡って八曽自然休養林のモミの木駐車場に着いた。時間は8時半となっていたが、まだ1台も駐車されていなかった。そこは有料駐車場で係員もおり、500円を払って駐車とした。目的は八曽山だったが、そこにあった案内板を見ると自然林内には他にも岩井山があることを知った。岩井山にも立ち寄れるものなら立ち寄ろうとぐらいの考えで、まずは五条川沿いの道を歩いて八曽山へと向かった。その道は車道で、歩き出して程なく数台の車が通過した。たしかゲートが入口にあって通過出来ないはずであったが、おそらく料金を払ってキャンプ地に入る車ではと思えた。その車道を暫く歩いていくと、岩井山への分岐点が現れた。案内板には無かった分岐点だったが、それを見たことで、先に岩井山に向かうことにした。この道が歩き易い道で、途中では山中なのにローラーをかけたような平坦な道になっている所があり、マウンテンバイクで走って来るグループとすれ違ったりもした。岩井山へは緩やかな道だったたため20分ほどかかったたが、その山頂に着くと標高は244mとあり、八曽山と比べるとずいぶん低いようだった。そこは少し開けている程度で、北西向かいの巌頭洞の尾根が目立つだけだった。山頂からは巌頭洞側に向かう遊歩道が見られたため、それで麓に下りることにした。そしてその道を少し下ったときだった。小さなピークがすぐにあり、そこが最高の展望台になっていた。まさに360度の眺望で、愛岐丘陵の風景が一望だった。但しこの日の空の下では遠方は強いモヤで判然としていなかったは残念だった。その西の風景から振り返ったときに岩井山の右手に台形をした山がすっきりと見えていた。その方向からしてそれが八曽山とすぐに分かった。独立峰の様相をしており、この八曽自然休養林の盟主と呼べる存在感を持っていた。このピークで眺望を一通り楽しんだ後、麓へと下りた。下りた所は天狗平の辺りで、木々が鬱蒼としており、森にどっぷりと浸っている雰囲気だった。その天狗平ではランニングしているグループと出会ったが、どうやらクロスカントリーとして楽しんでいるようだった。この八曽自然休養林はハイキングだけでなく、色々な形で親しまれていることを窺わせた。その遊歩道を歩いて八曽山方向へと向かって行くと、一度林道に出ることになった。その辺りは少し単調なハイキングとなったが、八曽山への遊歩道に入ると再び森林浴コースとなった。この自然林は所々で案内板があり標識がはっきりしていたので、ハイキングとしては本当に気楽だった。案内のままに八曽山に近づくと石仏が点々と見られるようになった。この八曽山がいにしえから信仰の山として登られていることを窺わせた。そして山頂に立ってみると、そこには祠があるものの雑木が雑然と茂って、ごく普通の山頂の雰囲気だった。ハイキングコースの中心としてもっと整備されているものと思っていただけに少し意外だった。当然展望も無し。少し期待外れの観があったが、少しぐらい山頂から展望ぐらいはあるだろうと辺りを探ってみると、少し西に下りた所で木々が疎らになり、そこからは愛岐丘陵が眺められた。但し岩井山の展望台とは比べようもなかった。空の雲行きは徐々に雨へと向かっていたのだが、この八曽山の山頂に立った頃より雨をぱらつかせ始めた。そうのんびりとはハイキングをしておれなくなったので、後は道なりに駐車地点に戻ることにした。そして遊歩道のままにキャンプ場へと向かったのだが、その途中で八曽滝への分かれ道が現れた。そこで滝見物をすることにした。すぐに八曽滝に着くと、滝は低山しかないこの地域にしては大ぶりの滝で、けっこう見応えがあった。その滝を過ぎると、近くに展望台があることが分かったので、そこにも立ち寄った。展望台のある場所はヘリポートにもなっているらしく、再び林道を歩くことになったが、着いてみるとそこは岩井山の展望台に負けないほどの展望が広がっていた。但し単なる展望台であって、山中で出会う展望台の雰囲気では無かった。そこまで来るとキャンプ場へ向かうよりは岩井山経由で戻る方が早く駐車地点に戻れることになるので、再び岩井山へと向かった。その頃には小雨となっていたが、その雨の中でも更に乙女滝にも立ち寄ったりもして、変化に富んだ八曽自然休養林を十分に楽しんだ。そして駐車地点へと戻って行った。ところで八曽山の名だが、八曽自然休養林の中では黒平山か八曽黒平山の名で表記されていた。
(2006/11記)(2021/10改訂) |