2006年の後半は仕事で名古屋に長期滞在しており、週末になれば東海の山のハイキングを楽しみにしていた。東海の山となると、どうしても奥美濃、奥三河の山に関心が向かってしまうのだが、季節が秋から冬へと移り出すと北部の空はしぐれる日が多くなって来た。そうなると東海では南部地域となる鈴鹿の山に興味が向き、その鈴鹿も北の天気の影響を受け出すと、更に南に目を向けることになった。12月に入って最初の日曜日がそのような日で、鈴鹿の尾根も中部以北は雨模様だった。そこで鈴鹿を通り越して、三重中部の亀山市周辺に面白い山はないかとガイドブックの「名古屋周辺の山200」を開いた。そしてこの錫杖ヶ岳が名阪国道から鋭く見える山と分かり、一気に興味を持った。行くと決めると早速実行に移した。錫杖ヶ岳は名古屋からのアクセスも簡単で、名古屋を朝ゆっくり出ても東名阪道、名阪国道と自動車専用道路をつかえば、ごく簡単に近づくことが出来た。名阪国道の関トンネルを抜けると直後に向井ICが現れて、そこを下りると加太へと道は向かうが、その途中に錫杖ヶ岳の標識があり、それに従って枝道となる林道に入った。林道をほぼ平坦なまま南へと車を走らせると、数分で加太コースの登山口に着いた。そばに広い駐車スペースがあり、何台かの車が止まっていた。その列にこちらも車を止めて登山口へ歩き出した。登山道はごく普通の雰囲気で、谷沿いを歩いて行く。周囲は植林が多く薄暗かった。歩き易いままに登って行くと、20分ほどで柚之木峠に出ると、そこには北畑コースが合流していた。峠からは山頂まで一つの尾根でつながっている。すぐに10人ほどの子供連れのグループを追い抜いた。もう辺りは雑木林となっており、木々のばらけた所もあって展望が開けて来た。その展望のことよりも、尾根が痩せ尾根となりまた急坂となって、注意を尾根歩きに集中しなければならなかった。岩場も現れロープを伝って登って行く。この急坂登りで一気に高度を稼いで行く。展望が良くなると共に冷たい風が吹きつけて来た。ただ急坂の登りが続いていたため体が暖まっており、冷たい風も気にならなかった。露岩地もありなかなか面白いコースで、勢いのままに登って行くと、峠から30分でもう山頂だった。登山口からでも50分と、意外と少ない時間で山頂に立ててしまい、何か呆気ない感じだった。その山頂は中央は露岩が占めていたが、鋭峰にしてままずまずの広さがあった。そして何よりも好展望が広がっていた。東には伊勢湾、北は鈴鹿の山並み、南は足元に錫杖湖、そして西は伊賀の山並みと360度の眺望が広がっていた。但し、山頂は一段と風が強く冷たかった。数人の登山者がいたが、みな岩陰に避難していた。こちらはまだ体が暖まっていたため、その冷たい風に負けず露岩に立ってその好展望を楽しんだ。その間にも何人もの登山者が登って来た。柚之木峠ルートでは数組を追い抜いただけなので、他のルートからの登山者が多いようだった。下之垣内コースだともっと短い時間で登れるようである。冷たさにいつまでも露岩の上に立っている訳にも行かず、こちらも露岩の陰に避難とした。上空は雲が多いため、陽が現れたとみるとすぐに雲に隠された。その陽が雲に隠される時間が次第に長くなって来たため、下山に向かうことにした。下山はすんなり往路を戻ることにする。頂上の強風も少し下れば和らいできた。急尾根の岩場を下るとあって慎重さを要したが、それでも45分も歩けば登山口に着いてしまった。やはり標高が低いためか、山頂での休憩時間を含めても2時間で終わってしまい、少し呆気ない気持ちだった。錫杖ヶ岳の風貌に似合った登山をするには、もう少し時間のかけられるコースで一日を楽しむ方が良かったのではと思ったのが、下山を終えての感想だった。下山を終えてもまだ昼に時間があったため、午後にもう一つ山を楽しもうと、登山口を後にした。
(2007/4記)(2022/2写真改訂) |