松阪市の近郊の山としては矢頭山の峨々とした姿が目に浮かぶが、市街地のどこからも眺められる山としてはこの堀坂山と隣りに並び立つ観音岳が断然ではと思われる。堀坂山は700メートルを越えており、市街地から堂々とした大きさで眺められ、ホテルに泊まっているときはこの山を眺めてその日の天気の具合を思ったものである。この堀坂山を偶然と言った感じで登ってしまった。
08年の正月は三重県中部の山を目指して2日の早朝に姫路を離れた。この日は手始めに伊賀の山を目指したのだが、国道368号線を走っていると次第に雪が増えて、ノーマルタイヤでは危なくなって来た。そこで急きょ雪の心配の無い海岸線に近い山として向かったのが矢頭山だった。その矢頭山には矢頭中宮公園側から登ったのだが、登山は思っていた以上に楽で、昼前に下山を終えてしまった。そこでその後は早いとは思ったが宿泊予定の松阪市へと向かうことにした。その松阪市へは道順として一番近そうなルートとして県道43号線から県道45号線へと走ったのだが、県道45号線は堀坂峠を通る道になっており、この堀坂峠を通過するとき峠の駐車場に何台も車の止まっているのを見た。そこにはハイキングマップの標識もあり、車はハイキングに来た人が止めているようだった。持っていたガイドブックを開くと、堀坂山が堀坂峠に近い山として紹介されていた。峠の登山口から山頂までは30分ほどとなっており、ごく軽いハイキングを楽しめることが分かった。こうなると堀坂山にぜひ登ってみたくなった。駐車場に車を止めてすぐに歩き出す。時計はまだ13時になっていなかった。登山道の入口には鳥居があり、その下を通ってゆったりとした遊歩道状の登山道を歩き始めた。植林の中をつづら登りで始まった登山道はいたって簡単で、登山と言うよりも軽いハイキング気分で登って行けた。ただ単調な感じは無く、灌木林の広がる風景に変わったかと思うと、岩場もあり、また優しげな雑木林もあったりとけっこう変化があって、それを楽しむうちにもう山頂が見えて来たという感じで、30分での山頂到着となった。その山頂は堀坂大権現が祀られており、小さな境内という感じで開けていた。そして視界を妨げるほどの木立は無く、素晴らしい展望が広がっていた。東は伊勢湾、そして南から西、北へとすっきりと山並みが眺められた。その中でも目立つのが西に間近く見えている矢頭山で、その迫力のある輪郭が暗い空の下に浮かび上がっていた。この大展望をのんびりと楽しみたいところだったが、山頂は北風が強く吹いて寒々としており、じっと立っていると体の芯から冷えてきた。そこで20分ほど過ごすともう十分という気持ちになって、後はすんなりと堀坂峠へと下山を開始した。それにしてもこの堀坂山は人気のある山のようで、登っているときも10人近くの下山者とすれ違い、山頂でも短い時間に数人の人が訪れており、その後の下山でも10人以上とはすれ違った。午前の矢頭山では誰一人として会わなかっただけに、この人気のほどには驚く思いで、堀坂山が松阪の人にいかに親しまれているかを実感させられた。
(2008/1記)(2021/12改訂) |