若狭の山は日本海に面する山と滋賀県京都府の両府県の境となる若丹尾根の山に大別出来そうだが、若丹尾根の山の中で頭巾山は比較的標高があり、また頭巾を「ずきん」と読まずに「とうきん」と読むと何となく響きが良くなったようで、それにも興味を持って、若狭に出かけたおりは一度は登ってみたいと考えていた。出かけたのは2011年の8月下旬。良く晴れた、まだまだ暑い盛りの日だった。前日は敦賀市に泊まっていたので、国道27号線を西へと走って、小浜市の湯岡橋東詰交差点で国道162号線に入った。目指したコースはおおい町名田庄の野鹿谷林道からのコースで、道の駅が近づくと「野鹿の滝」の標識が現れた。それに従うと県道771号線に入り、更に野鹿谷林道へと進むことになった。林道は野鹿の滝への遊歩道が始まる位置を過ぎると道幅が細くなり、更にダート道に変わってきた。そのダート道はすぐに荒れ道となってきたので、そこで引き返して、野鹿の滝の遊歩道が始まる位置まで戻った。そこは数台の車なら止められるスペースがあったので、そこに駐車とした。まずは林道歩きで足慣らしだった。歩き出すと右手に野鹿の滝が木立の隙間から眺められたが、なかなかに優美な姿だった。林道は舗装路からダート道に変わる。荒れたダート道を見て引き返したのだが、少し進むと荒れた風は無くなり、ごく普通の林道となった。右手は野鹿谷の渓流が続くが、けっこう渓谷美を見せており、それを見ながらの林道歩きだった。林道はほぼ平坦路で続き、小橋を渡って左岸路となった。そして二つばかり堰堤を見た先で、登山口の標識が現れた。上空は雲が増えたようで、朝の快晴とは少し違っていた。登山道は沢を渡って対岸にあるようだった。沢はほぼ枯れ沢になっており、簡単に対岸に出た。そして登山道が植林の中を緩やかな道で始まっていた。登山道と言うよりも植林の作業道と言った雰囲気だった。山の斜面を登るのだが、つづら道で続くので、登山道の傾斜は緩かった。道の周囲はときに雑木林が現れたが、基本的には植林地で、風はほとんど無く、気温は26℃ながらも蒸し暑い中での登りだった。尾根に出ても風は僅かで、やはり暑い登りが続いた。ただ尾根は自然林の佇まいとなり、優しげな姿に変わってきた。展望は良いとは言えなかったが、北東方向に視界が開けると、ごくうっすらながらも、若狭湾に近い山並みが眺められた。上空の青空も朝よりは色が薄いようで、モヤがかった視界と言えた。尾根のままには登らず少し尾根筋を離れるときもあったが、また尾根歩きに戻ると、少しずつ尾根の傾斜が増してきた。そして岩場が現れると、ロープも置かれていた。上空は雲が増えたと言っても陽射しを受けると、やはり夏の暑さだった。一カ所ぽつんと岩場が現れ、その上に立つと前面に大きな尾根が現れて、小さな社も見えていた。そこが山頂のようで、目前と言える距離だった。その通りで、そこから数分で若丹尾根に出て、その優しげな佇まいの尾根を僅かに歩いた所が山頂だった。山頂にはごく小さな社として権現堂が建っており、そばには休み所としておこもり堂もあった。一帯は狭いながらも芝地として開けており、まずまずの展望が広がっていた。まずは陽射しを避けて、おこもり堂の中で一休みとする。すぐにたくさんの小蝿がまとわりついてきたが、気にせず暫し間、床の上に横になっていた。一息入ったところで昼食タイムとする。そして食後に山頂からの展望を楽しんだ。うっすらとした視界ながらも北西には青葉山、西に弥仙山、そして東は若丹尾根と、まずまずの展望が楽しめた。但しうっすらとした視界のために、遠くが判然としていなかったのは残念だった。山頂で過ごしたのは40分ほど。下山は往路をすんなりと引き返す。注意するのはロープの置かれた急坂部ぐらいで、後はのんびりとした下山だった。登山口に戻ると、再び野鹿谷の美しさを眺めながら林道を歩いたが、駐車場に戻ると、この日のハイキングの最後として野鹿の滝を訪れることにした。遊歩道を下るとすぐに川そばに着き、滝までの距離は僅かだった。野鹿の滝は落差があり、水量もたっぷりで、なかなか堂々とした姿だった。
(2011/9記)(2021/6改訂) |