TAJIHM の 兵庫の山めぐり <福井滋賀県境の山
 
百里ヶ岳    ひゃくりがたけ 931.3m 小浜市(福井県)
高島市
(滋賀県)
1/2.5万地図 : 古屋
 
【2010年9月】 2010-78(TAJI&HM)
 
   上根来集落より  2010 / 9

 舞鶴自動車道が2010年6月から無料化されたが、このことで福井県の嶺南地方が近郊のハイキングの地として、視野に入ってきた。いわゆる若狭と丹後にまたがる若丹山地である。この地の山を眺めると、千メートルを越える山こそ見えないものの、900m台なら幾つかあり、登り甲斐がありそうに思えた。その一つの百里ヶ岳を目指したのは、同年の9月に入った最初の土曜日だった。この2010年は異常に暑い夏で、9月の声を聞いても暑さは収まらなかった。但し快晴とあって、暑いことを我慢すれば登山には悪くない空だった。その快晴の空が続くのを見て、代表格である百里ヶ岳を目指すことにしたものである。若丹山地の中では高峰の部類に入るだけで無く、関西百名山の一つとして、一等三角点の山として、また鯖街道を歩く山としてと、幾つもの魅力があるのも興味をそそられた。
 この日は小浜西ICまで高速道を使うため、自宅を離れたのは6時半と、遠出にしてはゆっくりとした時間だった。中国道には福崎ICから入ったが、小浜西ICを出るとき料金を見ると500円だった。何とも安く福井に来られるようになったものである。後は東へと走って小浜市内に入り、南へと向かう県道35号線に折れた。県道を南へとどんどん進むと一時家並みを見なくなったので、このまま山中に入るのかと思っていると、中ノ畑集落が現れた。その先は坂を登ることになり、更に上根来集落が現れた。その集落内に木地山峠コースの登山口標識を見たが、集落を抜けて更に南へと進むと廃屋になった畜産団地が現れて、その先に根来坂コースの登山口が現れた。百里ヶ岳へは根来坂コース登山口から登り、下山で木地山峠コース登山口に下りることを考えていたので、根来坂コースの登山口を確認すると、引き返して二つの登山口の中間地点辺りの路肩に車を止めた。車から降りると、熱気が襲ってきた。温度計は32℃を指しており、この日も朝から暑いようだった。畜産団地跡のそばを通って根来坂コース登山口に着いた。そこからの道は鯖街道の名が付いていた。道幅は狭かったが緩やかな道で、つづら折れで山の斜面を登って行く。周囲は植林地の風景だったが、道の感じが良いのか、十分に古き良き道を歩いている感じがした。登るほどに周囲は雑木の風景となってきたのも良かった。気温も木陰の中とあって27℃まで下がってきた。その鯖街道を40分近く歩くと、林道に出た。本当は鯖街道なのだろうが、車道にされてしまったものと思われた。林道は南の方向に尾根と平行して続くが、陽射しを受けるようになって、また暑さを感じるようになった。その林道歩きも20分ほどで、再び鯖街道の標識が現れた。林道はそのまま南へと続いておにゅう峠に至るようだが、鯖街道は林道から分かれた後は南の方向に尾根にほぼ忠実に続いているようだった。始めは足下に林道が見えていたが、林道が離れると道がえぐれたようになった所を歩くようになった。そこは落ち葉が積もって少し歩き難さがあったが、そこを越すとほぼ平坦な道となって歩き易くなった。やはりいにしえから歩かれてきた道は無理のない優しさがあった。またその頃には涼しい風を受けるようになって、いい感じで歩けるようになった。また木々にブナが多く見られるようになって、木々の雰囲気も良くなった。その木々を通して東隣の尾根が眺められるようになると、その尾根から抜き出た山が眺められた。まだ距離がありそうだったが、それが百里ヶ岳と思われた。涼しい風の中、根来坂峠に着いた。そこには祠があり、峠の地蔵さんをその中に見た。鯖街道は南へと滋賀県内に入って行くようだったが、百里ヶ岳へは南東の方向へと尾根を歩いて行くことになる。まずは根来坂峠で一休みとした。そこは一段と涼しい風が吹いており、気温は25℃まで下がっていた。そのとき時計を見ると12時が近くなっていたので、一休みついでに昼食をとることにした。下界は暑いのに、予想外に涼しい風を受けながらの休憩は有り難かった。尾根歩きを再会する。尾根は福井と滋賀を分ける県境尾根で、もう街道と言えず、木の根も露わな山道だった。少し登った所が860mピークで、白石山の名が付いていた。尾根はそこから東の方向に折れた。県境尾根は高島トレイルと名が付いていたが、その名からして滋賀県側の命名かと思われた。緩やかな下り坂で周囲はブナ林となっており、その和らぎのある風景の中を歩くのは楽しいハイキングだった。その雰囲気の中をゆっくり歩いているとき、ちょっと水を差されることがあった。それは滋賀県側からの登山コースが合流する大谷分岐に着いたときで、そこに数人が休んでいた。この日始めてみるハイカーだったが、その一人から百里ヶ岳山頂には今現在百人ばかりの団体登山の居ることを知らされた。バスツアーで来ているとのこと。ちょうど昼時なので、暫くは動かないものと思われた。そうなると途中で休憩したりしてゆっくりと山頂に向かうしかなかった。その辺りの尾根からは南への展望が現れて、琵琶湖やその周辺の山が眺められるようになったので、所々で足を止めて、その展望を楽しみながら徐々に山頂に近づいた。百里ヶ岳が目前になると急坂となり、少ししっかりと登るようになった。そして前方から大勢の人声が聞こえるようになった。山頂に着いたのは13時15分。山頂の直前から人の休憩する姿が見られたが、山頂はやはり大勢の人で、そちらからタバコの臭いも漂ってきていた。そこで山頂には立たず、少し手前で休憩することにした。団体は京都バスによる「三角点トレック」のようで、60才以上の人がほとんどのように思われて、その年代の登山ブームを見る思いだった。その団体も13時半を過ぎると下山を始めて、程なく人影は無くなった。パートナーと二人だけになった山頂はあっけらかんとして、先ほどまでの賑わいが嘘のような静かさだった。改めて山頂を見ると、広々としているようで展望は意外と少なく、北の方向に久須夜ヶ岳が眺められる程度だった。そして中央にある立派な三角点は一等三角点だった。山頂の雰囲気はさほど悪くは無いのだが、先ほどまでの人のエネルギーがまだ山頂に残っているのか、何となく落ち着かない気分を引きずった。やはり静かな中で山頂に立ちたかったと思った。幾分落ち着いたところで、下山を始める。下山は北へと延びている尾根を下って行った。始めは登ってくるときと同じくブナ林の優しい風景が続いた。ときおり右手に展望が現れると、そちらに見えたのは琵琶湖の風景だった。琵琶湖の北部は日本海に近い所まであることを、この山からの眺めで実感する思いだった。尾根は緩やかに続き、次第にブナが減ってきた。植林が続いた後、雑木林が混じり出したりするうちに上り坂となり、その先で木地山峠に着いた。そこにも峠の地蔵さんが祀られていた。そこから左手の小径に入って、上根来集落を目指した。木地山峠までが優しい道だったので、その先もその優しさが続くものと思っていたのだが、上根来集落への道は意外とマイナーな道だった。道は山の斜面をトラバースする形で付いており、その道幅は狭く、ときに崩れかけている所もあって歩き辛くなった。風も通らず、蒸し暑さの中での下りでもあった。周囲は植林地になることが多く、薄暗い中を下った。一度沢そばまで下りたり、山襞なりに歩いたりと登山経路は複雑で、目印を追いながらの下りだった。ただ沢では水を補給出来たのは助かった。展望も無いため早く下りたい気持ちが出てきたが、根来集落までは遠かった。木地山峠から集落までの標高差は350m程度なのだが、小さな尾根を越すこともあって思ったよりも長く感じられた。炭焼き小屋跡を過ぎると沢沿いを歩くようになり、その沢沿いの道もけっこう荒れていた。沢沿いを離れて樹林帯を抜け出すと、畑地が現れた。その先が漸く上根来集落だった。それまでは日陰を歩いていたのだが、一気に強い陽射しを受けるようになった。気温も33℃まで一気に上がってきた。その暑さのためか、上根来集落に人影は見えず、ひっそりとしていた。登山道のままに下ると集落内を抜けることになり、あっさりと県道に出たところ、そこは登山口では無かった。どうやら登山口は登山道のそばに見えた神社へとつながっていたようだった。後はただ暑さを我慢しながら駐車地点へと戻って行った。
 百里ヶ岳は鯖街道の優しさ、ブナ林の美しさ、そして琵琶湖の展望と見所が多くあり、関西百名山に選ばれた理由をよく理解出来た。その良さに加えて、下山コースのマイナーさもコースに変化をもたらしており、それも悪くないと思えた。団体登山には驚かされたが、暑い最中に変化に富んだハイキングを十分に楽しめた思いで帰路についた。
(2010/9記)(2021/8改訂)
<登山日> 2010年9月4日 10:05スタート/10:12登山口(鯖街道に入る)/10:49林道に出る/11:07再び鯖街道に入る/11:42〜12:03根来坂峠/12:07白石山/12:26大谷出合/13:15〜45山頂/14:34木地山峠/15:12炭焼き小屋跡/15:40県道に出る(上根来集落)/15:50エンド。
(天気) 快晴。雲はほとんど見られず、空の色は青かった。気温は高く、スタート時で既に32℃あった。鯖街道に入り、木陰道となって27℃まで下がってくる。登るほどに風が出て、根来坂峠は快いばかりの風が絶えず吹いていた。山頂も陽射しは強かったが、木陰は涼しい風が渡っていた。視界は良く澄んでいた。下山では木地山峠までは涼しさがあったが、谷間へと下りだすと風は無くなり、蒸し暑さを感じた。上根来集落は33℃の気温で、ひたすら暑かった。
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駐車地点から南へと歩いて行くと、畜産団地跡
が現れた
登山口が近づいたとき、「上根来水源の森」の
案内板を見た
登山口には「鯖街道入口」の案内標識も立って
いた
     
鯖街道は、始め人工林の中を緩やかに続いた 鯖街道を塞ぐように巨木が立っていた 周囲に自然林が広がってきた
    
鯖街道は優しげな佇まいを見せるようになった 木漏れ日の中をパートナーが歩く 一度、林道を歩くことになった
    
林道から見えた北の山は多田岳かと思われる 林道を40分ほど歩いて再び鯖街道へ 始め、落ち葉が積もって歩きにくかった
   
暫く、右手に林道が平行していた 鯖街道は次第に雰囲気が良くなった 木立を通して東に百里ヶ岳を見る
   
尾根沿いを南へと優しい道が続く 周囲の木立にブナが見られるようになった 根来坂峠に着いて、ここで昼休憩とする
    
峠の祠には小さな石仏が祀られていた 峠から木立を通して海に浮かぶ小島が見えていた 峠からは県境尾根を登って行く
    
木立を通して見る百里ヶ岳が少し近くなってい
860mの小さなピークに着く 白石山の名が
あった
県境尾根はブナ林が続いた
    
木立を通して北に見えたのは久須夜ヶ岳だった 南に琵琶湖が眺められるようになった 伊吹山は薄ぼんやりとししか見えていなかった
   
尾根には所々に展望地があった 展望地が現れるたびに小休止して、琵琶湖の展望を楽しんだ
    
南の武奈ヶ岳が良く見える位置があった 武奈ヶ岳を大きく見る
   
山頂が近づいて急坂が現れた もう山頂は間近だった ブナ林の中を山頂に向かう
   
山頂が目前になって、北に若狭湾が眺められた 山頂はツアーの団体登山者に占拠されていた 暫くすると団体は下山を開始した
   
静かな山頂になって、改めて山頂を眺める 山頂の中央に一等三角点を見る 山頂からは北に久須夜ヶ岳が眺められた
    
尾根を北へと下山を始めると、ブナ林が続いた ときおり木立の隙間から近くの尾根が眺められた ブナ林に変わって人工林が尾根に目立ってくる
   
まだ琵琶湖の風景が眺められた 木地山峠に着く 峠の地蔵さんに光が当たっていた
    
峠からは上根来集落を目指して西に向かう 始めは程よい歩き易さの道だったが トラバース道が多くなり、けっこう歩きにくかった
   
炭焼き小屋跡を見る 沢沿いを歩くようになった この沢沿いもけっこう荒れていた
   
暗い樹林帯が終わって畑地が現れた 登山道のままに下ると、上根来集落内に入った 県道に出ると、後は駐車地点へと炎天下を歩いた