TAJIHM の 兵庫の山めぐり <静岡県の山
 
朝日岳    あさひだけ 1827.0m 川根本町(静岡県)
 
1/2.5万地図 : 井川/寸又峡温泉
 
【2010年9月】 2010-82(TAJI&HM)
 
   沢口山より   2010 /9

 朝日岳は全国に数多くあるが、静岡県の大井川上流、寸又峡温泉を囲む寸又三山の一峰も朝日岳だった。静岡県では有名山だけに多くの本で紹介されているが、この山に初めて興味を持ったのは2006年のことだった。この年の後半は名古屋近郊の町で長期滞在しており、週末となれば東海圏の山を登っていた。対象の山を捜すのに参考にしたガイドブックは「名古屋周辺の山200」で、静岡の山も候補も入っており、その捜す中で朝日岳に興味を持った。南アルプス深南部に近い位置ながら、寸又峡温泉を起点にして日帰り登山が出来そうなこと。そして何よりも登山口と山頂との標高差が1400mあって、じっくり登れそうなことに興味をそそられた。そこで機会を窺っていたが、とうとう滞在中に登ることは叶わなかった。ただ登りたい気持ちはずっと持ち続けており、2010年9月となって、敬老の日を入れて3連休が迫ったとき、朝日岳を登ってみようとの気持ちが急に大きくなった。天気を見ると、東海圏は晴れが期待出来ると分かり、一気に実現させることにした。
 三連休中の移動はストレスが多いと考えて、17日の金曜日に移動とした。平日の上、更に未明の時間帯に移動としたため、高速道は何ともスムーズで、何の渋滞も無く相良牧之原ICを降りた。その後も順調で、8時半には寸又峡温泉に着いてしまった。この日は朝日岳では無く、足慣らしとばかりに、寸又三山で一番易しいと言われる沢口山を登った。特に易しい山でも無く、けっこう足を使わされたが、山頂から端正な姿の朝日岳を眺められたのは良かった。その日は寸又峡温泉に宿をとらず、少し戻って、奥泉で宿泊とした。その日の夕方は雲が増えており、快晴の予想と少し違っていたのは不安材料だったが、翌日の晴れを願って寝に就いた。
 翌18日に目覚めて外を見ると、晴れてはいたが雲の多い空で、ちょっといやな予感がした。宿を出て再び寸又峡温泉を目指した。朝日トンネルを抜けると朝日岳が現れたが、その山頂は雲に隠されていた。いやな予感が当たったようだった。温泉街の駐車場に着くと、前日と同様に数台の車が止まっているだけで、閑散としていた。登山準備を済ませて、温泉街を抜ける道を歩き出す。上空には青空が広がっているため、温泉街は朝の光に明るかった。10分も歩けば温泉街を抜けて、その先で道は二手に分かれた。案内標識を見ると、右手の下り坂が朝日岳への道だった。下って行くと小さな川のそばを歩くようになり、周囲は林の風景となった。道は一部で平坦な所があるものの下り坂で続き、寸又川が近づくと、階段となってまだまだ下った。温泉街からは結局100mほど下って吊り橋のそばに出た。吊り橋の名は猿並橋で、長さは96m。寸又川とは10mほどの高度差があるので、けっこうスリルを感じる橋だった。橋を渡りきると登山道が始まっていたが、この日はショートスパッツを付けて登ることにした。この山域に山ヒルの多いことを知らず、前日はけっこうやられてしまったので、その対策だった。ただスパッツを付けてはいても、足下には十分注意しながら登ることにした。登山道はごく普通の山道で、周囲は雑木林になっていた。そのまま登山道が続くのでは無く、100mほど登ると一度林道に出た。林道を横切った位置から登山道の続きが始まったが、そこも登山口になっていた。このとき登山靴を見ると、もう山ヒルが2匹貼り付いていた。やはりヒル山のようだった。始めに丸太の階段を登り出すと、階段は長くは続かず自然な登山道となった。周囲も自然林で、調和のとれは雰囲気は悪くなかった。登山道は緩やかな所もあったが、登るうちに次第に傾斜を増してきた。特に急傾斜になることは無く、予想通りにじっくりと登って行く感じだった。12時ぐらいに山頂に立てればと、マイペースで登って行く。気温は20℃ほどで、少し汗ばむ程度だった。周囲は樹林が続くため展望はなかなか現れなかったが、一度南西の木々が空いて、そちらにどっしりとした山が見えた。前日に登った沢口山のようだった。その山頂も雲に隠されていた。始めは尾根をはっきり登っていたのだが、そのうちに尾根は不確かになり、登山道のままに登る感じになってきた。やや急坂で登っていたところ、突然のようにはっきりとした尾根に合流した。その位置で小休止をとった。またはっきりした尾根を歩き出したのだが、その尾根も不確かになってきた。北東に向かっているかと思うと、急に西の方向へとトラバースし出した。ガレ場もあり、無理やり歩いている感じだった。緩く下って緩く登った所が「合地ボツ」だった。ちょっと変わった地名である。地図を見ると、そこに来て漸く山頂まで一本の尾根になっていた。吊り橋の登山口からは2時間かかっていたが、まだ標高は1232mなので、山頂まで600mの標高差を残していた。その先は暫く緩やかな尾根道が続いたが、その頃より陽射しが無くなってきた。上空はほぼ曇り空だった。山頂を覆う雲の下に入ったようだった。その緩い尾根となっているときに、展望地が現れた。左手となる西の方向に展望が開けており、山並みが見えていたが、その中腹から上はすっかり雲に隠されていた。展望所はその先でもう一カ所現れたが、そこからはガス雲を通して崩壊地が間近に見えていた。ちょっと立ち止まっただけで歩を進めた。程なく辺りにガスが漂い出した。傾斜もきつくなってきた。もう3時間は歩いており、本当にしっかりと登っている感じだった。そのガス帯に入って気付いたが、周囲の木々はいつしかカラマツが増えていた。むしろすっかりカラマツ林に囲まれている感じだった。植林されているのかも知れなかった。ガスの中では気温は18℃まで下がってきており、登るのには良い感じだった。ただ急坂が長々と続くので、どれくらい登ったのかと思うことがあっても、前方に見えるのはガスに包まれた樹林だけだった。そろそろ山頂が近づいたのではと思えても急坂はまだ続き、もう山頂が間近にならなければと焦りの気持ちが起きたとき、「栗山沢の頭」の標識が現れた。山頂まで200mほどの位置だった。その先に急傾斜は無くなり、森の中を進む感じになった。地形がなだらかでしかもガスの中とあって、目印が無ければ迷ってしまいそうだった。山頂に着いたのは12時半過ぎだった。途中で何度も休憩をとったために、予定より半時間ほど遅れての到着だった。山頂もすっかりガスの世界だった。三角点を中心に平坦に開けてはいるものの、周囲を高い木に取り囲まれており、展望の悪そうな山頂だった。とにかく登り終えてほっと出来る感じの山頂で、落ち着きがあった。そこまでで出会ったのは下山してくる一人のハイカーだけだったが、山頂も人影は無く、ひたすら静かな山頂だった。展望も無いので、昼食を済ませると、少し横になることにした。山頂は16℃まで気温は下がっており、少しひんやりとした空気だったが、登ってきた体には適度な涼しさに感じられた。その涼しさに誘われるままに短時間ながら寝込んでしまった。その昼寝から目覚めた後、下山を開始する。同じ道を引き返すだけなので、気分的には楽だった。マイペースで登ったため、足の疲れは昼休憩でまずまず回復しており、けっこう軽快に下って行けた。周囲はガス帯とあって、涼しいのが何よりだった。展望地から見える風景は相変わらず雲が厚く、尾根の姿は全く掴めなかった。その展望地も特に開けているようでも無いので、山頂の佇まいと言い、どうも朝日岳は展望を楽しむと言うよりも、歩き味を楽しむ山のようだった。合地ボツを過ぎ登山口へと近づいて行くと、また山ヒルの心配をすることになったが、その通り途中からまた山ヒルが靴に付くようになった。もう途中からは剥がすのが面倒くさくなって、山ヒルが付いたままでも下って行った。とにかく下ることに意識を集中した。ほとんど休まず下って猿並橋に着くと、そこまで山頂から2時間半だった。やはり鋭い姿の山は、下山にかかる時間は短いようだった。橋を渡ると、靴に付いた山ヒルを剥がして、後は寸又峡温泉へと上り坂に入った。さすがに6時間以上歩いてきたとあって、足は重かった。温泉街に入ったときはまだ16時を過ぎた時間だったが、上空に雲が広がっていることもあって、山あいの温泉街には薄暗さが漂い出していた。土産物屋の軒先には、もう灯りがともっていた。予定通りにじっくりと朝日岳を登ったことの満足感に浸りながら、土産物屋を覗いたりとすっかり観光客の一人となって、温泉街を戻って行った。この日はショートスパッツで足下を固めており、また靴周りに気を配っていたので、山ヒルにはやられていないと思っていたのだが、いざ登山靴を脱ぐと、見事一匹が靴下の上から食らいついていた。ごく狭い隙間から入ったようだった。何とも山ヒルの執念には恐れ入る思いだった。その後は寸又峡温泉の立ち寄り湯で汗を流した。泉質は硫黄泉で、つるりとした湯で疲れた体を十分にほぐすことが出来た。
(2010/10記)(2021/8改訂)
<登山日> 2010年9月18日 8:29スタート/8:57猿並橋/9:07林道の登山口/10:12〜19北東に向かう尾根に出る/10:47〜55合地ボツ/11:22〜25展望所/12:24栗山沢の頭/12:37〜13:17山頂/13:27栗山沢の頭/14:23合地ボツ/14:46〜52尾根を離れる/15:38林道の登山口/15:48猿並橋の入口/16:17エンド。
(天気) 朝から雲の多い空で、朝日岳も雲に隠されていた。ふもとの気温は22℃で少し暑さを感じたが、登るほどに気温は下がってきた。概ね18℃ほど。途中から風も出て、涼しく登って行けた。合地ボツを過ぎた頃より陽射しは消える。展望地を越してガスが漂いだした。山頂はガスの中だった。気温も16℃まで下がっており、少し肌寒さを感じた。午後は雲が広がって、曇り空の下での下山となった。ふもとに着くと、薄暗さが出ていた。
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朝日トンネルを抜けると朝日岳が現れたが、そ
の頂は雲に隠されていた
温泉街は朝日に明るかった 静かな温泉街を歩
いて行く
温泉街を抜けると、道は二手に分かれた 右手
の下り坂が朝日岳への道だった
    
小さな川に沿って遊歩道は続いた 階段道となって更に下った 寸又川に架かる猿並橋に下り着いた
     
川床とは距離があり、けっこう高度感があった 橋を渡りきった位置から登山道が始まった この坂には「びくに坂」の名が付いていた
     
一度林道に出たが、すぐ先に登山口が見えていた 始めに丸太の階段を登って行く 馬ノ背状の痩せ尾根を歩く
     
木漏れ日の中をパートナーが歩く 一度沢口山が望まれる 山頂は雲に包まれていた 木の根が這う急坂を登る
    
石のごろごろした所を登ることもあった 尾根に出て北東に向かう 尾根はすぐに不確かになり、ザレ場の巻き道を歩く
    
合地ボツに着く この先は山頂まで一本道だっ
尾根は始め緩やかだった 程なく陽射しは消え
展望所に着くも、西の山並みは雲に隠されてい
    
ガスが漂いだした ガレ場を登る ガスは次第に濃くなってきた 高度を上げるにつれ、なぜかカラマツが増えてきた
      
この小さな花を登山道でよく眼にした 急坂の登りが長々と続いた ようやく栗山沢の頭に着いて、急坂は終わった
    
 山頂に向かうとき、地
 形は緩やかになって、
 目印が無いと迷いそう
 だった

       山頂に着く 広く開
       けていたが、周囲は
       木々が取り囲んでい
       た
     
三角点は哀れに何カ所も削られていた 周囲はシラビソが多いようだった 昼寝をしたとき、上空を見上げる
    
山頂ではシダが生き生きとした色を見せていた 下山は、登ってきたコースを引き返すのみ ガスは更に濃くなったようだった
        
苔に覆われた古木をまたぐ 下山はけっこう快適に下った 展望地から見える風景は、相変わらずガスだった
    
ガスを通して崩壊地が近くに見えていた 朝に陽射しが合った所に来たが上空は曇りだった 雲は朝よりも下がってきたようだった
    
登山口が近づいて道が優しくなった 林道の登山口に下り着く 再び猿並橋を渡る 足下に小さな滝が見えていた
   
吊り橋を渡りきると、石仏が迎えてくれた 温泉街に戻ると薄暗さが出ており、土産物屋の
軒先には灯りがともっていた
寸又峡温泉を離れて戻るとき、振り返って見え
た朝日岳は中腹から上が雲だった