◆ TAJI&HM の 兵庫の山めぐり <石川富山県境の山> ★ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
笈ヶ岳 おいづるがだけ | 1841.3m | 白山市(石川県) 南砺市・白川村(富山県) |
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1/2.5万地図 : 中宮温泉 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【2008年5月】 | 2008-44(TAJI&HM) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
冬瓜山より 2008 / 5 |
白山の北に位置する笈ヶ岳は遠くからその美しい姿で目を惹くが、登山道が無いこともあって雪の季節、特に残雪期の登山が主流になっている山である。但し一番ポピュラーな白山中宮温泉からのルートでも山中で一泊が基本のようだった。無雪期の登山なら考えても良かったが、雪の季節にテントを担ぐのは体力的に厳しいものがあり、笈ヶ岳登山は躊躇させられていた。その笈ヶ岳に日帰り可能なルートが有ると知ると、俄然興味が湧いてきた。それはジライ谷の左岸尾根を登るルートで、白山中宮温泉からのルートでは残り1/3の地点となる冬瓜(かもうり)山へ直登するルートだった。このルートだと歩行時間は11〜12時間程度と思われ、十分に日帰り出来そうだった。但し夜明けと共に出発を原則としての登山だった。 この笈ヶ岳を目指したのは2008年の5月連休のこと。前日の2日に仕事から帰って来てからの出発だった。姫路の自宅をれたのが18時半。途中でガソリンを入れたり買い物をしたりしていたため、花田ICを通過したときは19時半を回っていた。この夜の仮眠場所は北陸道の女形谷PAで、四時間ほどの仮眠をとって目覚めたのは翌3日の午前3時だった。尼御前SAでガソリンを補給し、小松ICで下りた。後は国道360号線をひたすら走って白山スーパー林道を目指した。その白山スーパー林道の石川県側のゲートは白山一里野温泉を過ぎた所にあり、そのゲート手前にある白山自然保護センターがスタート地点だった。その保護センターの駐車場に着いたのは予定より少し遅れて4時50分のこと。少し薄暗さが漂う駐車場には10台ほどの車が止まっていたが、大半が出発したようで最後の4人が出発しようとしていた。こちらは洗面、トイレもある駐車場で朝食をとっていたりしていたため、出発は5時を回ってしまった。辺りはすっかり明るく、人の気配は全く無かった。上空は雲一つ無く、どうやら快晴のようだった。保護センターの裏手より野猿公園への遊歩道が始まっており、それを歩き出した。遊歩道は少し上り坂になるだけで、蛇谷の右岸を続いていた。対岸にスーパー林道が見えていた。野猿公園と名付けられているだけに、歩いているうちに4,5匹の猿を見かけた。公園の東屋までが遊歩道で、その先の沢を渡って登山道が始まっていた。沢には橋が無く徒渉で渡らなければならなかったが、沢は雪解け水で水量は多かった。ちょっと困ったと思いながら沢を眺め渡すと、沢の中の岩に数枚の板が置かれている所があり、それを渡ってスムーズに対岸に出られたのは助かった。そこよりジライ谷左岸の尾根に取り付いた。標識は見え無かったが目印テープは付いており、細々とした感じで続いていた。道は注意さえしておれば外れることは無かったが、かなりの急尾根だった。但し適確にロープが張られており、危険な感じは無かった。そのロープを掴んだり木の根に掴まりながら登って行った。足下の渓谷が次第に遠ざかって行く。周囲の樹林は薄暗かったが登るうちに朝日が当たるようになり、そうなると新緑が鮮やかに浮かび上がった。その中に咲くタムシバの花の白さが印象的だった。また足下にはイワカガミも多く、山はすっかり春の装いだった。その風景は目を楽しませてくれるものの、急坂の連続に足取りは次第に重くなってきた。そこは無理せずゆっくりとそしてしっかりと登ることを心がけた。急坂登りを始めて1時間半で小さなピークに出た。地図を見ると1250mの等高線のあるピークだった。そこより尾根は緩やかになり、少し歩くと初めての展望が現れた。北東に見えるのは冬瓜山からシリタカ山へと続く尾根で、東には県境尾根も望まれた。尾根は朝日の中にくっきりと見えていた。どの山も雪をまとっており、この先で雪の上を歩くのは確実なようだった。白山中宮温泉からの尾根に合流するまではひたすらなだらかな尾根なのでそれに安心して歩き出すと、決して楽とは言えなかった。尾根にはクマザサが多くあり、それを払い除けながら歩くことになり、けっこう煩わしかった。その尾根を歩くうちに西からの尾根が間近に見えて来た。すぐに合流しそうに見えたが、間近に思えた辺りからなかなか近づかず、平行する形で徐々に近づくので、合流したときは漸くの思いだった。その辺りで雪が現れて雪の上を歩くことになった。この雪上歩行に対しては事前準備でワカンかアイゼンか、それとも両方かと考えた末にアイゼンのみの準備をしていたが、雪面にははっきりとしたトレースが付いていた。そのうえ雪はよく締まっており、ツボ足のままでもいたってスムーズに歩いて行けた。その雪上歩行に移ってから風景が一変した。一帯は優しげなブナ林の風景となり、その木々の疎らな所からは南に向かって展望が開けていた。そこにどんとばかりに見えたのが白山だった。まさに大迫力の大きさで、青い空の下に見せるその清らかな姿は、見ているだけでそれまでの疲れも一気に癒される思いだった。ただそこに着いて急に喧しい声が聞こえるようになった。前方を見ると団体が歩いており、10人以上はいるようだった。この先には冬瓜山の登りがあるので、早く追いつきたくなくゆっくり歩くことにした。暫しの休憩のあと歩を進めた。その先は常に白山を右手に見ながらだった。冬瓜山が近づくと、一度雪は減ってきた。地表の部分が現れてその上を歩くことになったが、踏み跡程度の小径は付いていた。また目印テープもあるのでヤブっぽいながらも、特に歩度の落ちることは無かった。そして冬瓜山が間近になって急坂登りとなった。ロープもあってスムーズに登れるものの、そこは雪に覆われているときはけっこう危険ではと思われた。冬瓜山のピークが目前になったとき、再び喧しい声が聞こえてきた。どうやら団体は冬瓜山で休憩しているようだった。その冬瓜山ピークに出ると、そこは狭い岩場になっており、団体はと見ると全員60才以上のように思われた。その冬瓜山では山頂の東端で小休止とした。そこには小さなテントが一つ張られており、どうやら前夜をここで過ごしたようだった。その東端も岩場になっており、視界を遮るものは無かった。そして見えたのが笈ヶ岳だった。一目で分かるその端正な姿は気品があって、南の白山にも引けをとらない美しさだった。ただまだまだ遠くに見えていた。暫くはそこで休憩したい思いだったが、団体が出発準備を始めたため、また追いつくのも面倒なのですぐにこちらも出発とした。そこから再び雪の上を歩くことになった。まずはシリタカ山との鞍部へと緩やかに下った。左手前方に笈ヶ岳を、右手後方に白山を見るという贅沢な展望の中での雪道歩きだった。鞍部からまた緩やかな登りでシリタカ山に向かった。トレースははっきり付いていたが、トレースを外れても雪はよく締まっているので靴はほとんど潜らなかった。そのままワカンもアイゼンも必要無く進んで行けそうだった。もうその辺りで下山してくる人とすれ違うようになった。程なく着いたシリタカ山はなだらかな山頂で、すっぽりと雪に包まれていた。先ほどの冬瓜山の山頂とは好対照だった。そこに着いて少しは笈ヶ岳が近づいたかと思えたが、次の目標となる県境尾根との鞍部へは100m以上下ることになる。急坂の所もあり、決して楽とは言えなかった。そして鞍部からの登り返しでも急坂があった。そこまでで足はけっこうくたびれていたが、今回の登山では両ストックを準備していたのが大いに役立つことになった。力の配分を腕に多めに置きながら登っているとけっこう足への負担は少なく、あまり足を止めずに登って行けた。県境尾根に出るときに一部で雪の消えた所があり、そこはヤブコギになった。幸いネマガリダケはまだ倒れた姿のためその上を踏んで通り過ぎたが、これが無雪期では延々と続くかと思うと、無雪期の登山の大変さが思いやられた。そして県境尾根に着くとまた雪の世界だった。前方に真っ白な尾根が続いていた。この県境尾根に出て、東の展望が現れた。見えたのは猿ヶ馬場山の尾根で、その彼方にはうっすらと御嶽山が眺められた。その北には乗鞍岳、北アルプスが続いていた。今度はそれを眺めながらの尾根歩きだった。もう山頂までの距離は少ないので、休み休み歩いて笈ヶ岳の尾根を楽しむことにした。まだ小笈への急坂もあったが、一歩一歩と山頂に近づくのがうれしく、漸く笈ヶ岳を余裕で楽しむ気分だった。そして山頂が間近になると山頂に何人か立っているのが見えた。その山頂には雪は見られなかった。最後のひと登りもゆっくり登って、山頂に着いたのは10時35分。歩き始めてから5時間20分経っていたが、それほど長く歩いていたように思えなかったのは、それだけ登山に変化があって充実していたからであろう。その山頂には8人ほどの登山者が着いており、どの顔も満足そうだった。ただ山頂はけっこう狭く、あと4,5人も来れば窮屈になりそうだった。まずは天気に恵まれて無事に着いたことを喜んだ。それにしても素晴らしい快晴だった。上空の青さは高い山ならではの深みがあった。風はほとんど無く、陽射しの中では20℃を越しており、暑さを感じるほどだった。山頂の一隅で軽い昼食をとった後は、山頂展望を楽しんだ。この山頂は低木類しか無いため、まさに360度の眺望だった。白山の絶好の展望台でもあり、その白山から笈ヶ岳までの尾根が一望だった。北を見れば大笠山が間近に見えていた。そちらは笈ヶ岳とは対照的になだらかな姿だった。そして東は北アルプスの尾根がすっかり白い姿を見せていた。その山頂が賑やかになったのは冬瓜山で抜いた団体が到着してから。山頂は狭いので、先着の登山者と同じく譲るようにしてこちらも山頂を離れた。離れたと言ってもすぐ近くの尾根の上で再び休むだけだったが。山頂にとどまっていたのは40分ほど。同じ道を戻るわけだが、この下山は白山を眺めながらだった。もう前方に登って来る人は見られず、数名の下山者が見えるだけだった。この日は駐車地点に近い白山一里野温泉に泊まる予定のため下山を急ぐ必要は無く、足の進むままに下って行った。ただ下山と言えどもシリタカ山、冬瓜山の登り返しがあるためけっして足は楽ではなかった。そこで足が疲れると足を止めて暫しの休憩をするなど、ひたすらノンビリを心がけて下って行った。再び登山者を見るようになったのは冬瓜山が近づいた辺りで、数人の若いグループがスパッツも着けず、夏靴で登って来た。勢いのままに登っているようだった。またテントグループともすれ違った。この下山で良かったのは冬瓜山を越してジライ谷左岸尾根を下り出したときで、昼を回って尾根の新緑は一段と鮮やかになっていた。その緑の明るさには感動すら覚えた。また朝と違って道に咲く花にもゆっくりと目を楽しませた。それにしてもこの左岸尾根は急坂で、上り以上にこの下りは足が疲れた。パートナーはこちら以上にお疲れのようで、何度も休憩を取っての下りだった。そして急尾根を下りきって野猿公園のそばに出たときは漸くの思いだったが、最後にもう一苦労が待っていた。激流に架かっていた板切れがその後の増水で流されてしまっていたのだった。何とか飛び石伝いで渡ったが、足を滑らせれば激流に飲まれてしまうところだった。その後は遊歩道沿いの山菜を摘みながらで、駐車場に戻り着いたのはちょうど16時だった。早朝から夕方近くまでほぼ丸一日を過ごしていたことになるが、それに見合うだけの満足度を得られた思いで、何とも楽しい登山だった。 (2008/5記)(2021/12改訂) |
<登山日> | 2008年5月3日 | 5:13スタート/5:34野猿公園/7:00[1250m]ピーク/8:36〜42冬瓜山/9:15〜19シリタカ山/10:35〜11:16笈ヶ岳/12:23〜29シリタカ山/12:58〜13:02冬瓜山/14:18〜22[1250m]ピーク/15:26〜35野猿公園/16:00エンド。 | |
(天気) | 雲一つ無い快晴。良く澄んだ青い空が広がっていた。朝から気温は高めで、早朝の谷で12℃、昼には20℃まで上がっており、陽射しの中では25℃ほどにも感じられた。尾根に出ると弱い風を受けたが、風に冷たさは無かった。視界は良く澄んでいた。 | ||
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