夏の登山では海に近い山に登ることで、ついでに海水浴を楽しむことが出来る。毎年夏になるとこの方法で一度は海水浴を考えているが、2008年は丹後半島を目指すことにした。そのきっかけとなったのは「山と渓谷」8月号で、56番目の国定公園誕生として丹後天橋立大江山国定公園が紹介されていた。その丹後半島の山として依遅ヶ尾山が取り上げられており、「半島きっての名山」と書かれていた。そこで依遅ヶ尾山登山と近くの海岸での海水浴を組み合わせて楽しむことにしたものである。午前は登山、午後は海水浴の日帰りの予定を考えて、朝早く自宅を離れることにした。
向かったのは7月3連休初日の19日。姫路の自宅を出たのは5時半過ぎ。播但道で北を目指したが少し高速代をけちって市川南ICで降りた。後は国道312号線を北上して円山川右岸道路へ。そして出石町へ抜けると、国道426号線、482号線と走って京丹後市に入った。丹後町まで来るとようやく間人(たいざ)の文字を見るようになった。そして東に堂々とした山が現れた。一目で依遅ヶ尾山と分かる風格のある姿だった。渋滞も無く順調に来られたと思っていたところ、府道75号線に入ったまでは良かったが、依遅ヶ尾山に向かう道を誤り、是安地区辺りでちょっともたもたしてしまった。結局は依遅ヶ尾山に向かって適当に走ったところ、案内標識に出会えて一安心となった。時計は9時を回ったところで、まずは予定通りだった。朝早いうちは薄曇りだった空も、青空が広がって晴れに変わろうとしていた。そのため気温はぐんと上がっており、中腹の駐車場に着いたときは30℃になっていた。その駐車場には他に車は見れらなかった。いくら名山と言っても暑い盛りの低山は敬遠されているようである。その駐車地点から始まる地道はまだ車の通れる幅があり、登山道と言うよりも林道と呼べそうだった。その緩やかな道を登り始めると、道そばに点々とワラビの新芽が目に付いた。この7月の季節にちょっとしたワラビ採りを楽しめることになった。そのワラビ採りも「ありが棟」と書かれた藁葺きの小屋の前で終わった。その位置で林道と分かれてごく普通の感じで山道が始まった。それまでは直射光にさらされていたのだが、登山道は木立に囲まれており、涼しさを感じるようになった。気温は2,3℃下がった程度だったが、涼しい風が吹いており、少し汗をかく程度で特に休む必要も無く登って行けた。低山にしては緑が濃く、立派な木立も多く見かけた。その雰囲気の良さになぜかと思ったところ、一帯に植林は見えず自然林に囲まれているためではと納得した。その樹林に囲まれたまま登山道は続くため、展望は始めに南の方向が見えただけで、後は閉ざされたままだった。北へと向かっていた登山道が北東方向へと変わる頃には、辺りにクマザサが見られるようになった。一度、西の展望が開けて日本海が眺められた。暫く展望が無かっただけに、その風景にいっとき足を止めた。その先で東へと尾根の向きが変わると尾根は緩やかになり、前方が明るくなってきた。どうやら山頂が近づいたようだった。その山頂に出ると、周囲に高い木立は少なく一気に明るくなった。山頂は東西に細長くなっており、手前が少し広くなって一隅に石の祠が置かれていた。明るい陽射しにその風景がくっきり見えており、そこが意外な涼しさだった。登山道でも涼しい風はあったのだが、そこは一段と涼やかな風が吹いており、また桜の木陰もあって何とも快かった。それまでの汗が一気にしずむ思いだった。そこは展望も良く、丹後半島の青い海が望まれた。その海岸線に見える町は間人ではと思われた。一息入れたところで山頂に立つ。立つと言っても祠の位置から20メートルと離れていなかったが。そちらは少し木立にじゃまをされたが、丹後半島の先端部までが見えていた。そこが経ヶ岬と思え、その隣の電波塔の立つ山は岳山ではと思われた。山頂も涼しい風が快かった。暑い盛りに登ったのだが山頂で思わぬ涼しさに出会え、また丹後半島と日本海の風景は旅情を感じさせるもので、依遅ヶ尾山は良い山だと素直に思えた。山頂にいたのは40分ほど。十分な満足感に満たされて下山へと向かった。そして午後は海水浴だった。少し間人の家並みを覗いた後、車を東へと走らせる。程なく丹後松島の風景が現れて、そこに見えたのが平(へい)海水浴場だった。その海岸の美しさにここで泳ごうと即座に決めた。海水浴は登山に次いで手軽なレジャーで、費用は駐車場の千円のみ。白い砂浜に下りるとそこは丹後松島のど真ん中と言った景色だった。1kmはある砂浜にビーチパラソルが点々とあり、適度な賑わいだった。やはり子供連れが多く、ファミリーの世界だった。その海は遠浅とは言えずすぐに深くなったが程よい暖かさがあり、のんびりと浮かんだり泳いだりと、一年ぶりの海水浴を楽しんだ。ここは砂浜に押し寄せる波が意外と高く、それに乗るのが面白いのか、パートナーは何度も波と戯れていた。
(2008/7記)(2014/7改訂)(2019/11写真改訂) |