冬場になると北の空は曇りがちになるので、岡山県の瀬戸内側の山に目を向けるようになるが、2019年も2月に入ったとき、備前市の山を登ろうと備前市の久々井湾に面する前山に向かった。その前山と尾根続きでごく近いのは向山で、この二つの山を登る考えだった。
この日は曇り空の予想だったが、その予想通り久々井湾の上空は形の無い薄黒い雲が広がっていた。アプローチとしては向山南麓の難田集落からと考えていたので、その難田集落に近づくと真魚市が現れてそこに広い駐車場を見た。その駐車場に車を止めると、難田集落までは僅かな距離だった。地形図には向山の南尾根に破線の道が描かれており、難田集落から始まっていた。その破線の道を辿ろうと難田集落に入ったが、ごく細い路地を歩くことになり、行き止まりが多く破線の始まる位置がよく分からなかった。そこで尾根に出れば後は何とかなると、山裾に向かう路地の一つに入って適当に斜面に取り付いた。そして破線路のある方向へと歩いた。斜面は下草が少ないとあってけっこう適当に歩けて、予想通りごく細い小径に合流した。細いと言ってもコンクリート舗装されており、どうやら地図の破線路と思われた。そしてすぐに尾根に出た。後は細々と続く尾根道を辿って向山に向かうだけだった。目印テープもあって無理なく登って行けた。その尾根の途中で現れたのが稲荷神社で、神社の手前は石段になっていた。その石段が始まる辺りは展望が良く、久々井湾の風景が眺められた。曇り空のためフラットな視界だったが、薄ぼんやりとしてはいなかった。石段を登って神社の前に出ると神社はもう放置されているようで、全体にうら寂れていた。その先も細々と小径は続いたが、ほぼ雑木林の中となり展望の無いまま向山山頂に到着した。そこもすっかり樹林に囲まれていた。次に歩く方向が西となって前山に向かった。少しヤブっぽくなったものの目印テープは続いており、小径も細々と続いていた。その緩やかな尾根歩きとなって左手にときおり久々井湾を見るようになった。前山との鞍部へと緩やかに下り、緩やかに登り返した。少し小径がはっきりしなくなったが、目印テープは点々と付いていたのでそれを追うようにして歩いた。前山が近づいて歩く方向が南に変わると、目印テープは赤色から青色に変わった。そして程なく前山の山頂に到着となった。そこまで雑木帯がずっと続いていたが、山頂は広く開けており好展望地だった。南に向かっての展望で、向山の近くで見たよりもずっと広く久々井湾が眺められた。南東方向には家島諸島も望まれた。その前山山頂で瀬戸の海を眺めながら昼休憩とした。相変わらず曇り空で寒々としていたものの、休憩には良い所とあってのんびりとくつろいだ。その前山からの下山は往路を引き返した。向山との鞍部まで戻ってきたとき、地形図ではそこに破線の道が描かれていたのでそれを辿って麓へと出ようかと思ったが、その辺りに破線の道と思える小径が見当たらなかった。そこで往路コースをずっと戻ることにした。その下山中に天気は少しずつ良くなってきて、向山を過ぎる頃には陽射しを受けるまでになってきた。久々井湾にも光が当たっていた。後は難田集落のどの位置に下り着くのかと思っていると、柳青院にごく近い位置に下り着いた。
この日のハイキングを振り返って、せっかく小径が前山まで続いているので、今少し尾根道が整備されれば山上から多島海風景を楽しめるのにと思ったものだった。
(2019/2記) |