岡山の山を登るときに参考にするガイド本の一つが「新ルート・岡山の山百選」だが、2014年6月に入ったとき、和気町辺りで手頃な山を登りたくなった。そこでこの本を参考にして選んだのが大王山だった。写真で見る山の姿も悪く無かった。向かったのは6月23日で、薄曇りとも薄晴れとも言えそうな空だった。佐伯大橋を渡ると、大王山が写真のままの姿を見せていた。そして米沢集落に入って宇佐八幡宮に近づいた。ガイドブックを読むと林道を走って登山口まで車を進めることが出来そうだったが、林道は足慣らしとして歩きたく、林道入口に近い宇佐八幡宮から歩き出そうと考えていた。ところが宇佐八幡宮のそばまでは行けたものの、適当な駐車場所が見つからなかった。そこで米沢集落内の路肩が広くなった所に駐車とした。そしてまずは宇佐八幡宮へと向かった。神社の前に出るとその境内までの道があり、探せば車でそこまで来られたようだった。宇佐八幡宮を離れると、その東側を通る車道を北へと向かった。墓地が右手に現れて、その手前で車道は二手に分かれたが、ガイドブックの記述通りにまっすぐ北へと向かった。左手に養鶏場が現れると、その先でゲートが車道を閉ざしていた。イノシシ避けのゲートのようで、そのゲートを開けて先へと進んだ。車道は林道となって、真っ直ぐ北に向かっていた。少し進むと路肩の広くなった所が現れたので、そこまで車を進めていても良かったようである。林道は沢沿いをずっと続いており、その沢がときおり渓流美を見せてくれたので、林道歩きは正解だったようである。ゲートから16分ほど歩いたとき、右手に車が10台ほど止められそうな草地の広場が現れた。その広場をよく見ると、奥の沢そばに標柱の立っているのが見えた。近づいて標柱を見ると、「大王山密厳寺跡登山口」と彫られていた。登山口に着いたようである。ガイドブックを読んでいたからこそ広場で足を止めたが、標柱は伸びた草で隠れ気味になっていたため、注意を払っていなければ通り過ぎてしまいそうだった。これで登山道に入れると思っていると、標柱の先の沢に橋は無かった。その先に道が見えなかったので一瞬登山口を疑ったが、標柱を信じてムリヤリ沢を渡った。どうも橋は流されたとしか思えない渡り難さだった。その先は小さな沢になっており、赤い目印テープが見えた。どうやらはっきりとした道は無く、適当に沢沿いを歩くコースのようだあった。とにかく目印テープを追って沢沿いを歩いた。ヤブコギとはならなかったものの、沢の中を歩いたり沢を何度となく横切るので、足下には注意が必要だった。ときに手を使って登った。沢の周囲の自然林が、緑濃い姿を見せてくれたのが慰めだった。やがて沢の水は無くなり、傾斜が緩やかになった。そして単に谷筋を歩く雰囲気となった。足下は草地が広がるようになって、無理なく歩けた。歩くうちに広く平らな所が現れた。そこが密厳寺跡のようで、土台石と思われる石がころがっていた。ここで漸く一休みとした。ここまで谷筋を登って来たとあって、展望は全く無かった。そこより少し登ると尾根に出て、北の方向へと歩く向きが変わった。尾根道があって、それを辿って行くと、尾根に出てから10分とかからず山頂到着となった。そこに三角点があって山頂と分かるものの、相変わらず周囲は樹林が囲んでおり、展望は無かった。ただ山頂は平らな上に下生えが少ないため、休むには適度な場所だった。ほのかな涼しい風もあって、のんびりと過ごせた。20分ほど休んで下山に移った。下山は北西方向にある大王池への小径に入った。小径と言っても目印テープがあって漸く分かる程度のものだった。その下りを始めたとき、全く展望を得ぬままに下ってしまうのも寂しいと思え、少しは展望を得ようと近くの木に登ってみた。見えたのは北の方向で、そこにすっきりと那岐連山が望まれた。その展望を得て、少しは報われた思いになった。下って行くとガイドブックでは作業道と記されていた幅広の道に合流し、その作業道に入って暫く下ると、左手に大王池が見えてきた。その直後、急に作業道はヤブになってしまった。そのヤブを突っ切ったところ、また作業道を歩くようになったが、池の周囲をずっと巡ることになった。池を一周するようにして漸く土手の位置に出てきたが、どうもヤブになった所からムリヤリ池に向かうのが良かったようである。土手の位置からは大王池の全景が眺められた。その土手の端より林道が始まっていた。その林道が往路で途中まで歩いた林道だったので、後は林道を辿って行くだけだった。林道は大王池から始まる沢に沿ってずっと続いていた。20分ほど歩くと密厳寺跡登山口の広場に着き、更に12分歩いて林道の起点となるゲートの位置に戻ってきた。
大王山を最短コースで登ろうと思えば、林道をずっと走って大王池まで車を進めれば、そこから30分ほどで山頂に立てそうだったが、それでも少々味気ない登山と言えそうで、やはりこの日のように密厳寺跡登山口から始まる荒れコースを登ってこそ大王山の醍醐味を味わえると言えそうだった。
(2014/7記)(2020/12改訂) |