以前に大空山に登ったとき、その大空山の印象よりも「のとろキャンプ場」から見えた霰ヶ山の端正な姿の方が印象に残っていた。ただ山容の割にはその良さを味わえそうな登山路がどうも無さそうなので、訪れないままに過ぎてしまった。それでも一度は登ってみようとの思いはあった。実現したのは2003年10月18日のこと。登る時間はさほどでも無さそうだったので、この日は午前は別の山(津黒山)に登り、午後に入って霰ヶ山に向かった。中和村から植杉川沿いの県道を南下し上杉峠を越えて富村へと下り出すと、前方に霰ヶ山が現れた。その端正な独立峰の姿を仰いで、以前の印象のままであることに安心感を覚えた。その山肌を見ると、山頂の少し下の辺りを林道が真横に走っていた。その辺りまでは林道を歩く予定だった。霰ヶ山の南麓側より林道が始まっており、その入り口付近に駐車して歩き始めた。地図を見ての印象で、林道歩きはおおよそ1時間と考えていたのだが、念のためにガイド本の「岡山県の山」を開いてで確かめると、何と2時間半と書かれていた。本を良く読んでいなかったので驚いてしまった。これでは午後の時間だけでは登れないことになる。そこで思案の末、車で登山口を目指すことに切り替えた。舗装はされておらず、かなり荒れた林道だった。車は車高が低いため、すぐに底を擦ってしまった。それも何度もとなったので、必然的にのろのろとしか走れなかった。30分ほどかけて漸く東尾根に近づいた。その辺りまで来れば取り付き点の目印ぐらいは有るだろうと考えていたが、どうも見当たらなかった。林道は北側へと回り込み出したので、引き返した。そして北東の辺りが傾斜も緩やかで下草の少ない植林地となっていたので、そこより登ることに決めた。始めのうちは登り易い斜面だったが、すぐに灌木地に入ってしまった。そのままずっとヤブコギかと考え出した頃、左手に植林地が広がっているのが見えた。そこで再び植林地の中を歩いて行くと、やがて平坦地に辿り着いた。そこに来て漸く1/2.5万の地図を取り出した。辺りの地形と山頂方向から、どうやら山頂の北東に位置する標高1020m地点だと推測出来た。その一帯は倒木がやたら多く、そしてその先は山頂までクマザサの密集地だった。それでも50mほど登るだけなので、クマザサ帯に突っ込んだ。急斜面のクマザサをがむしゃらにかき分けて一気に登ると、10分ほどでクマザサから抜け出した。そこが山頂だった。山頂は二等三角点(点名・日田)を中心にクマザサがきれいに刈られていたので、広々とした展望があった。クマザサの切り口を見ると、どうやら最近になって刈られたように思えた。けっこう早く山頂に立てたことに一安心していると、急に小雨が降ってきた。空は黒雲が広がっており、午前の天気とはあまりの変わりようだった。ただ一過性のようなので、暫く佇んでいると、黒雲は南へと流れ再び上空には青空が戻ってきた。改めて山頂からの展望を眺めた。北から西の方向は雑木が視界を妨げていたが、他の方向は素晴らしかった。特に東向かいの大空山から富栄山の尾根は間近と言うことだけでなく、標高は1100mを越しているとあって迫力を持って眺められた。空の雲がその山肌に色々と陰影を付けるのも面白かった。霰ヶ山山頂は三角点周囲以外はクマザサと木々で塞がれており、あまりうろつくわけにも行かなかった。それでも50分ばかり休憩した後、下山に向かった。同じコースを無難に戻ることにした。山頂間近の平坦地からは歩き易い植林地を選びながら下って行くと、ヤブに会うことも無く林道に下り着いた。そこは取り付き地点とはさほど離れていなかった。ところで、この取り付き地点まで車で林道を走ったわけだが、林道入口から歩いても2時間半もかかるとは思えず、やはり1時間と少々で着けたのではと思われた。登山時間の短さを考えると、林道入口からのんびりと歩いて来るのが霰ヶ山登山として正しかったのではと思われた。
(2003/10記)(2012/10改訂)(2022/3写真改訂) |