人形峠から始まる広域基幹林道の美作北2号線は、鳥取・岡山県境尾根の岡山県側を長々と続き、津黒高原で終わっている。03年10月18日は、この広域基幹林道を森林公園あたりから走り始めた。道は舗装されており、アップダウンも適度で、林道と言うよりも観光道路だった。この日の天気は、少し雲が多いながらも秋晴れの空が広がって、申し分なかった。道はやがて稜線まで達して鳥取県側へと入る。大谷峠である。この一帯は展望が素晴らしく、木々は紅葉が始まろうとしていた。程なく道は再び岡山県側となり、下り坂が始まった。そして津黒高原が見え出す頃に、津黒山の登山口に着いた。その近くに展望台があったので、その手前に駐車とする。スタート前にその展望台に上がってみると、すぐ目に入ったのは下蒜山から中蒜山への美しい稜線だった。その彼方には当然、大山が見えるはずなのだが、雲に覆われて、中腹より下がかろうじて見えているだけだった。登山道は、やや急坂で始まった。その取り付き点で既に標高800mは有り、中腹過ぎから登っているようなものだった。細い道だが、良く踏まれた道で、安心して登って行けた。周囲は終始植林帯で、展望は悪かった。そこでひたすら足の動くままに登って行った。秋の朝の少しひんやりとした空気は登山には最適で、休まず登ってどんどん高度を稼いだ。植林地が終わりかけると、道にササが被りだした。朝露ですっかり濡れているため、雨具を着込むことにした。そのササを払いのけながら登って行くと、道は次第に緩やかになり、程なく山上に出た。もう視界を遮る高い木は無かった。後ろを振り返って見ると、展望台で見たのと同じ形で、下蒜山から中蒜山の尾根が眺められた。更に三平山までも一望だった。大山はと見ると、雲は一層厚くなって、すっかり大山を隠してしまっていた。目を前方に戻して山頂を目指す。辺りはススキが繁る草原で、点々とカラマツが立っている。なぜか牧草のような草は、多くがなぎ倒されたように倒れていた。その草原の中央あたりに山名標識が建っており、「1117.8m」と標高も記されていた。そこに二等三角点が有るはずだと、辺りを探ってみたが見当たらない。ここで、初めて地図を手に取った。山名標識が有るもののどうもこのピークは、三角点ピークの一つ西のピークのように思えた。そこで東に見えるピーク(そちらの方が若干高いようである)へ確かめに行こうとすると、その先はきつい笹藪で、踏み跡すら見当たらなかった。ここでヤブコギをする気も起きなかったので、三角点探しはあっさり諦めることにした。そして改めて、この草原に身を委ねることにした。すかっとした展望とは少し言い難かったが、南も展望が良く、不溜山へと続く尾根が一望だった。この日の午後に登る予定の霰ヶ山も形良く見えていた。草原には柔らかな陽射しが降っており、さほど長居をする予定では無かったが、暫しの間、草原に寝っ転がって、この秋の空気感を楽しんでいた。
(2003/10記)(2012/10改訂)(2022/6写真改訂) |