蒜山SAからは雄大な大山と秀麗な蒜山三座が眺められるが、その間に挟まれた皆ヶ山も姿は悪くない。その皆ヶ山を2011年8月のお盆休暇に訪れた。暑い盛りの中で、木陰の楽しめる山としての期待からだった。連日快晴が続いていたが、この日の播州の空は雲が多かった。中国道を山崎ICから入り、西へと走る。高い山には雲がかかっており、途中の佐用町、津山市では雨粒混じりの霧に包まれたので、この日の天気はどうなるのかと思っていると、米子道が近づく頃から青空が広がり出した。米子道に入ると更に良くなり、結局、蒜山に着いたときはすっかり快晴だった。大山こそ山頂を雲に隠されていたものの、上蒜山も皆ヶ山もすっきりと姿を現していた。皆ヶ山を見ながら近づくと、蒜山高原キャンプ場への道が現れ、それを進むと短い時間でキャンプ場に着いた。そこはオートキャンプ場で、ファミリーキャンパーで大賑わいだった。キャンパーの車はテントサイトに止めてあるので、管理棟のそばの駐車場は閑散としていた。そこの標識を見ると、皆ヶ山の登山者はここに止めるようにとあったので、すんなりと駐車する。時計は9時を回っており、もう朝の涼しさは消えていたが、気温は24℃ほどで暑いと言うほどでも無かった。キャンプ場の案内板を見て、キャンプ場の奥が登山口であることを確認する。キャンプ場内の道を辿ると、最奥に給水設備があり、そのそばから登山道が始まっていた。自然林の中を遊歩道と呼べそうな優しい小径が続いていた。緩やかな道で、ずっと木陰の中を歩くので、まさに森林浴だった。ただ風がほとんど無いので、歩くうちにけっこう汗をかくことになった。暑い盛りに汗をかけるのは良いことだと考えながら登って行く。良かったのは周囲の木立にブナが多くなってきたことで、ブナ林と呼べそうな所も現れた。優しい森の風情を楽しみながら歩いていると、弱いながらも涼しい風も吹いてきた。木立が豊かなため展望は悪かったが、木立の空いた所からは上蒜山の見えることもあった。歩くうちに緩やかだった道も、次第に傾斜が増してきた。やがて急坂となって、登りきったピークが二俣山だった。そこに着いて漸く展望が現れた。そればかりで無く、そこには涼しいばかりの風が吹いていた。木陰も多くあり、思わずここで休憩したくなったが、まずは皆ヶ山山頂を目指すことにした。二俣山は少時の休憩をとっただけで、歩を進める。皆ヶ山との鞍部へと下り坂になったとき、前方に皆ヶ山の山頂が見えたと思うと、その左手にいきなりと言った感じで大山が現れた。朝は山頂に雲がかかっていたが、その雲は消えており、鋭い岩肌をくっきりと現していた。展望があったのはそこだけで、また樹林が視界を遮った。すぐに鞍部となり、最後の登りにかかる。けっこう急斜面で、辺りは自然林に笹が混じる風景だった。尾根の傾斜が緩んで来ると、周囲は笹が目立つようになった。笹は青々としており、鹿の食害はあまり受けていないようだった。また高木が減ったため、強い陽射しを受けるようになった。そして右手に上蒜山が眺められるようになった。笹が増えたが、笹は最近になって切られたようで、登山道に被さることも無く、歩くのはスムーズだった。緩やかになった登山道を歩いて、少し開けた所に着くと、そこが山頂だった。西半面は笹と植林が視界を塞いでいたが、東半面はすっきりと開けており、堂々とした姿の上蒜山が間近に眺められた。展望の悪い山頂と聞いていたのだが、意外と良いと言うのが感想だった。展望を良くするために、木が切られたのかも知れなかった。ただ山頂は陽射しがまともに注いでおり、木陰は無く笹の陰があるだけだった。風もあまり無かった。暑さを我慢するのもどうかと思われて、山頂は展望をざっと楽しんだだけで、すぐに二俣山に戻って行った。戻るのは速く、20分ほどで二俣山に戻ってきた。相変わらず涼しい風が吹いており、絶好の休憩場所だった。昼が近くなっていたので、先に昼食を済ませると、後は涼しい風に吹かれながら昼寝を楽しんだ。二俣山で一時間ほど過ごすと、後は優しい登山道を下って蒜山高原キャンプ場へと戻って行った。本当に森林浴の言葉が相応しい登山道で、道の踏み心地も良く、歩いているだけで楽しかった。キャンプ場に着くと、あちらこちらでこの日のキャンパーがテントの準備を進めていた。それにしてもキャンプ場には大勢の人がいるのに、皆ヶ山では誰とも会わなかった。昼の時間を僅かに涼しいだけのキャンプ場に居らず、涼しさを十分に味わえる皆ヶ山ハイキングを楽しまないとは、何とももったいないことだと思いながら、キャンプ場の道を戻って行った。
(2011/8記)(2021/6改訂) |