島根県の名峰、三瓶山を再訪したく向かったのは2023年10月の最初の日曜日だった。但しこの日は移動日と考え、その行きがけの駄賃として途中にある大万木山を登ることにした。大万木山も中国百名山に選ばれている名山で、ブナ林が楽しめる山との知識を持っていたので、この機会に訪れることにしたものである。
中国道から松江道へと入り、雲南吉田ICで降りるとナビのままに県道38号線から県道273号線へと走ったところ、県道273号線は林道ではと思えるほど細い道だった。飯南町に入ると程なく大万木山の標識が現れて、登山口の一つである門坂駐車場に着いたときは10時25分になっていた。数台が止まっていたが、いずれも島根県外のナンバーだった。大万木山はけっこう人気の山のようだった。その駐車場から始まるコースは滝見コースで、予想以上に歩き易い道だった。緩やかな上に道幅があり、階段状になっている所もあって、すっかり遊歩道を歩いている感じだった。権現滝を見るコースだったが、権現滝への道には入らず直進すると、避難小屋の前を通った。その歩き易い道のままに登るのかと思っていると、一度林道に出ることになった。そこは林道の終点位置だった。林道を歩くもすぐに離れて登山道に入った。それまでもちらほらブナの木を見ていたが、ブナは次第に増えてブナ林と呼べそうな所も現れて、歩くのが楽しくなるコースだった。等検境コースが左手に分かれると、そこより少し登って広島県との県境尾根に出た。その県境尾根で門坂峠地蔵尊と出会った。そこは地蔵尊展望台の名が付いており、隠岐の島と宍道湖が見えるとなっていたが、この日の視界は悪く宍道湖がごくうっすら見えるだけだった。その先は緩やかな尾根歩きが続いた。相変わらずブナ林を眺めながらだった。気になったのは天気で、次第に晴れ間が広がると思っていたのだが、その逆でガス状の薄黒い雲が広がってきた。雨雲ではなくガスが薄れると青空が覗くしときに陽射しが現れたが、晴れの感じにはならなかった。山頂が近づくと尾根の傾斜が増してきたが、きついと感じる程では無かった。二つ目の避難小屋が現れると、そのすぐ先が山頂だった。12時を回っており、1時間半ほどかかっての到着だった。ガイド本のコースタイムよりは若干遅かったが、のんびり歩いたことでもありやはり易しい山と言えそうだった。山頂は広場風に広く開けていたが展望は無く、一本のブナの木が目立っていた。上空はすっかり曇り空だった。その上空の雲がいっとき割れて青空の広がるときがあり、そのときは明るい山頂となった。その山頂の標識を見ると、山頂から始まる権現コース方向に展望地があるようだった。2分と書かれていたが実際は3分以上歩く必要があった。その展望地に着いたものの木々が生長したことによるものか見える範囲は僅かで、それもうっすらしていたので、来るほどの価値は無かったと思えた。それよりも経路の途中で見たブナの巨木(タコブナ)の方が印象的だった。権現コースをそのまま下ることはせず、山頂に戻ると県境尾根を更に南西へと歩いた。緩やかに下るも一度上り坂があり1144mピークを越した。その先で渓谷コースの分岐点が現れた。そこに展望台の標識があり、県境尾根を更に5分ほど進むと「大階段展望台」があるようだった。その展望地を目指すと、1分ほどで着くことになった。そこは北西方向に展望があり、うっすらとながら三瓶山を見ることが出来た。渓谷コースの分岐点に戻ると渓谷コースに入った。往路の滝見コースと比べると道幅は細いもののつづら折れになっていることもあって、やはり易しく歩けた。こちらもブナが多くあり、その風情を楽しみながら下った。コース名からして渓谷沿いをずっと下るのかと思っていたが、ときに沢筋に接することはあっても沢沿いを登山道が続くようなことは無かった。この渓谷コースにも避難小屋が建っていた。この日三つ目の避難小屋だったので、それだけコースがしっかり整備されていると言えそうだった。そのまま下れば位出谷駐車場着くことになるのだが、そこまでに横手コースが右手に分岐した。その横手コースが滝見コースと繋ぐトラバース道だった。ほぼ平坦な道だったが、途中に崩壊地があったり、滝見コースが近づいて小さな尾根を越すことがあった。その横手コースを歩いたこともあって下山4kmほど歩くことになったので、けっこう足がくたびれて駐車場に戻ってきた。ちなみに往路コースの距離は3.1kmだった。展望はあまり楽しめなかったが、山歩きとしては十分に楽しめた大万木山だった。
(2023/10記) |