2017年3月は雪山に登りたくなり、駒の尾山、氷ノ山と登って、第三週は那岐山に向かった。中国道を美作ICで降りると、奈義町を目指して北上した。空は快晴で、雲はほとんど見られなかった。但し青空は少し紗がかかったような淡い色合いだった。那岐山が見えてくると、その稜線は白くなっており、雪がたっぷり残っているのが分かった。その那岐山はうすぼんやりと見えていたので、この日の視界は悪いようだった。国道53号線から那岐山に通じる車道に入ると那岐山麓山の家の前を通った。後は標識に従って林道に入り、予定通り第三駐車場に車を止めた。ほぼ満車で、雪を求めてきた人は多いようだった。林道に雪は全く見られず、麓はすっかり春の雰囲気だった。ザックにスノーシューをくくり付けて歩き出した。往路はCコースを登って行くことにした。林道を離れて登山道に入ると、もう下山してくる人とすれ違った。スノーシューを持っておらず、近くにいた登山者も持っていなかった。どうやらスノーシュー無しでも登れそうだった。それを見て重いものを背負いたくないパートナーは、スノーシューを車に置いておきたいと言い出した。そこで一度駐車場へと引き返し、パートナーの分だけ車にスノーシューを残すと改めてスタートとした。10分ほどのロスだった。登山道に入ると程なくBコースとCコースに分かれた。そのCコースに入って数分も歩けば雪が見られるようになった。雪は次第に増えて、暫く歩くとすっかり雪の上を歩くようになった。雪上にははっきりとしたトレースが付いており、しかも良く締まっていた。なるほどスノーシュー無しでも無理なく歩いて行けた。一度林道を横切り北西へと向かった。雪の量は段々増えてきたが、トレースのおかげでほとんど潜らず歩けた。それでも登るうちに少し潜る感じが出てきたので、ようやくスノーシューを履くことにした。パートナーは体重が軽いとあって、ツボ足で問題ないようだった。標高が千メートルとなったとき、左手に大神岩が現れた。そこに立つと足下に展望が広がったが、春霞の視界とあって薄ぼんやりとしか見えなかった。尾根筋を歩くようになっており、ひたすらトレースを辿って歩いた。その頃には快晴だった空に雲が見られるようになっており、徐々に増えていた。周囲は樹林帯だったが、主尾根となる県境尾根が近づくと樹林帯を抜け出して周囲が眺められるようになった。真っ白な雪面が広がっており、左手前方には滝山が見えていた。その頃には更に雲が増えており、空の七割方まで広がっていた。雪原を登り詰めた所が1240mピークで、ここで県境尾根に合流した。近くには休憩舎が建っていた。1240mピークは風の影響があってか雪は少なく、もう地肌が現れている所があった。その雪の無い所に三等三角点(点名・名義山)を見た。そこから東に一段高く見えているのが山頂で、すぐにそちらに向かった。気温は6℃ほどだったが、曇り空とあって気温以上に寒さを感じながら歩いた。それも山頂が近づくと、また青空が広がってきた。避難小屋のそばを通って最後の坂を登った。山頂は1240mピークと違って雪に覆われており、標石がちらりと見えているだけだった。積雪は50センチほどだろうか。先着の登山者が一人おり、また小屋で休んでいたのか数人の登山者がこちらを追うようにして到着したので、賑やかな山頂となった。山頂で昼休憩をしても良かったが、また雲が広がり出したのを見て、避難小屋で休むことにした。一度山頂を離れて小屋に入ったものの、小屋の気温は8℃しかなかったため、冷え冷えとした中での休憩だった。外が明るくなったのが分かると、すぐに山頂に向かった。もう登山者はいなくなっており、パートナーと二人きりだった。陽射しを受けてすっかり明るい山頂はけっこう暖かかった。その雰囲気の中で展望を楽しんだのだが、薄ぼんやりとした視界のために近くの篭山もうっすらとしていた。山頂に立っていたのは20分ほどだろうか、次のグループが近づくのを見て山頂を離れることにした。始めは往路を引き返すつもりだったのだが、東へとはっきりとしたトレースがあるのを見て、それを辿ることにした。そちらはAコースとBコースだった。午後に入って少し雪が緩んだのかスノーシューの潜り方が若干多くなったが、楽に歩けることに変わりなかった。ツボ足で歩くパートナーもときおり潜る程度で、問題ないようだった。Bコースの分岐点に着いたもののBコースにトレースは無く、県境尾根をそのまま歩くと程なくAコースに入ることになった。トレースのままに南東方向へと下ると、前方に見える1009mピークが次第に大きくなってきた。樹林帯に入っても特に急傾斜になることもなくどんどん下ると、林道に下り着いた。そこは1009mピークとの鞍部で、トレースは林道を西の方向に向かっていた。そちらに向かえばBコースに合流出来るようだった。Aコースは1009mピークへと向かうのだが、そちらはツボ足で歩いた一人分のトレースを見るだけだった。林道を西へと歩くと、すぐにBコースに通じる小径に入った。植林地の中を下って沢筋に出ると、そこでBコースに合流した。Bコースは沢とは付かず離れずの形で緩やかな下り坂だった。次第に雪は減ってほぼ雪が見えなくなったとき、スノーシューを脱いだ。そして小橋を渡って右岸側に出ると、その先で朝に歩いたCコースに合流した。もう登山口は近く、登山口に出ると林道を歩いて第3駐車場へと下りて行った。駐車場に戻るとそこは蛇淵ヶ滝への遊歩道が始まる位置でもあったので、ついでにと言った感じで蛇渕の滝を訪れて、その優美な姿を暫し眺めていた。
(2017/4記)(2020/4改訂) |