5月の声を聞くと、萌え出たばかりの新緑に触れたくなって、鳥取若桜の山に登りたくなるが、2010年5月はくらますに向かった。この季節のくらますはこれで4度目となるが、登山道の無い山を適度なヤブコギで登るのがちょっと面白く、リピート登山の山になってしまった。いつもならくらますに近づく支林道を起点に近い位置から歩いて、足慣らしをするのだが、今回は支林道の終点まで車を進めて、そこからのスタートとした。後はいつも通りに、始めに植林帯を登り、後はクマザサに覆われた斜面を山頂に向かって適当に登って行ったのだが、その斜面の様子がすっかり変わっていた。あれほど山肌を豊かに覆っていたクマザサがすっかり枯れようとしていた。まだ茎は立っているものの、どの葉にも青いところは見られなかった。場所によっては、茎も消えようとしていた。その風景になぜかもの悲しさを覚えてしまった。いずれ数年でササのあった痕跡さえ消えてしまうのではとも思えた。ただ登山としては楽だった。もともと林道に近い位置こそ植林の作業道があったものの、その先は適当に登るしかなかったのだが、それを以前はクマザサの中を歩き易い所を選んでヤブコギをしていたものだった。それがもう何処でも歩ける雰囲気だった。地形的に登り易そうな所を適当に登って行くだけだった。樹林帯では展望を得られなかったが、途中で樹林帯を抜け出ると一気に展望が広がった。南の後山から北の扇ノ山まで一望で、この雰囲気がくらますの良いところだった。本当に伸び伸びとした気分にさせられた。そして山頂近くでまた樹林の中に入り、そこを抜けると稜線に出た。そこは山頂より僅かに南に離れた位置だったが、どうも毎度適当に登っている割りには、同じような位置に出るようだった。その稜線にはまだササが残っていた。ササは大型のネマガリダケだったが、それも以前ほどの勢いは無さそうだった。特にヤブコギをすることも無く山頂に到着となった。楽に登って来られたためか、途中では展望を楽しむために暫く足を止めたりしていたのだが、山頂までにかかった時間は1時間半ほどだった。山頂に小さな岩が現れている様子は以前と変わらなかったが、やはりササは減っているようだった。山頂に着くと今度は東の方向、兵庫鳥取の県境尾根が現れた。視界はまずまず良く、赤谷山から三室山までが一望だった。その山頂を離れて北へと尾根を下ると、氷ノ山がくっきりと現れた。それにしてもこれまではヤブコギの後で出会える風景だっただけに、漸く巡り会えた思いを持ったものだが、ちょっと安易に出会えたように思えて、申し訳ない気分にもなった。山頂にいたのは30分ほど。本来なら今暫く山頂を楽しむところだが、さほど疲れず登って来たこともあって、午後にもう一山登りたくなった。そこで昼を待たずに下山に向かった。下山は登ってきたコースを引き返すのみ。展望地を過ぎると、その先は急斜面とあってずんずん下ると、一時間ほどで駐車地点に戻って来られた。 くらますの変わり様は少し残念だったが、更にどのように変わるのかに新たな興味も起きてきたので、数年経ってまた再訪を考えてみようかと思いながら、くらますを後にした。
(2010/5記)(2021/10改訂) |