◆ TAJI&HM の 兵庫の山めぐり <鳥取県の山> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
東山 とうせん | 1388.0m | 若桜町・智頭町(鳥取県) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1/2.5万地図 : 岩屋堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【2008年3月】 No.2 | 2008-31(TAJI) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「くらます」より 2008 / 3 |
中国山地の東部では氷ノ山の次に標高を誇る東山(とうせん)だが、登山コースの無いこともあってか知名度は低いようで、よほどの山好きで無い限り山登りの対象とされていないようである。この東山に1993年の11月という日の短い季節に訪れて、こっぴどくたたかれてしまった。まさかこれほどのネマガリダケのヤブとは思わず取り付いてしまい、山頂こそ踏んだものの山の雰囲気を味わう心の余裕は無く、転げ落ちるようにして下山したものだった。この強烈なヤブ山の印象を受けた東山にもう一度と言う気持ちはまだ起きて来ないが、雪山となると考えは別で、冬になると真っ白になるその山頂に一度は立ちたいと考えていた。そう考えながらも冬の好天の日はどうしても兵庫県内の身近な山に目が向いてしまい、ちょっと遠い東山は後回しになっていた。それが2008年の3月に東山に近いくらますを登ったとき、そのくらますから見えた東山の美しさに魅了されてしまった。これは是非とも登らねばとの思いが一気に湧いて来て、そこで次の週はこの山だと決めたものである。くらますを登ったのは3月15日。次の土曜日となる22日は快晴の予想だっためこの日に登るのが正解なのだが、その前日の21日も午後には晴れの予想だった。午後の晴れでは山頂は晴れないことも予想されたが、なぜか虫が知らせるように21日に登りたくなった。そしてその気持ちが段々強くなってしまい、休暇を取って登ることにした。但し平日とあってパートナーは同行できないため、単独行である。次にどのルートで登るかだったが、東山の情報量は少ないため、「岩屋堂」の地図を眺めて自分の判断で決めることにした。そして注目したのが東山山頂から北北東に延びている尾根で、地図では途中に906mの標高点が記されている。この尾根は比較的緩やかで、尾根端には糸白見林道が通じており、アプローチも容易と思えた。こう決めたと言っても糸白見林道の除雪状態が分からないので、林道が入口から雪で進めないときは一つ東隣の尾根を登るルートを代案として考えた。 登山時間が多少長くなることを考慮して姫路を離れたのは6時を15分ほど過ぎた時間だった。若桜町に入ると、一週間前にも来たとあって雪は少し減ったと思える程度で、路肩の雪の量はあまり変わっていなかった。それでも新戸倉トンネル辺りはまだ1メートル以上残っていた。心配した天気の方は、音水湖までは青空が多かったが、新戸倉トンネルが近づくにつれ、ガス雲が空を隠すようになった。そして若桜町の空はガス雲に広く覆われていた。但しその雲間から青空も覗いていたので、晴れる兆しは見えていた。糸白見集落を抜けて林道に入ると雪は除雪されているのか路面には全く見られなかった。おかげで順調に進んで予定していた作業道入口に着くことが出来た。作業道へは糸白見川に架かる橋を渡るが、その作業道は入口から除雪されていなかった。車は橋の上に止める。最初から尾根を歩き出しても良かったが、作業道を行ける所まで進もうと作業道歩きでスタートすることにした。そこで最初からスノーシューを履いて歩き出す。作業道の雪は50センチ以上あり、雪は良く締まってスノーシューはほとんど潜らなかった。作業道は谷川に沿って南へと進んで行くが、その谷の名を標識でアカシ谷と知った。作業道の距離は短く、10分ほど歩くと終わってしまった。近くに堰堤が見えている。そこからは右手となる西の斜面を登って尾根を目指すことにした。斜面は植林地になっており、雪はほとんど見られなかった。そこで一度スノーシューを脱いで登って行く。けっこう急坂だったが、20分ほど登ると傾斜は緩やかになって尾根に出たようだった。また雪が現れたためスノーシューを履いた。但し雪は50センチほどと少なく、木の幹回りの雪はすっかり溶けており、雪解け期の風景だった。一帯はなだらかになって尾根筋ははっきりしていなかったが、進むうちに次第にはっきりしてきた。この日は単独行だったが不安という気持ちはほとんど無く、初めてのコースで東山を目指すうれしさの方が優っており、山頂が近づくにつれどのような風景が広がるのだろうかと、その期待感で胸がふくらんだ。とにかく要らぬ怪我をしないように慎重さを第一にゆっくりと登って行く。上空は相変わらずガス雲に覆われていたが、ときおりは陽射しも出ていた。但し長くは続かなかったが。やがて左手の樹林が切れて東隣の尾根が眺められた。そこに林道の付いているのが見え、林道までのおおよその距離が想像出来た。尾根は木立が疎らとなったため陽当たりが良いのか、地表の現れている所も多くあってスノーシューは要らないほどだった。程なく行く手にもその林道のカーブミラーが見えて来た。尾根の一つのポイントと考えていた林道が近づいて一安心だった。林道が間近になると急坂になり、木に掴まりながら登って林道に出た。そこは標高1000mが近いとあって、林道はすっかり雪に覆われていた。一休みして尾根登りを続ける。上空は青空が多くなって来たが、東山山頂方向はまだまだガスがかかったままだった。この日は消えないのではと嫌な予感がしたが、あくまでも晴れることを期待して登って行く。標高は1000mを越えてきたが、いっとき雪の少ない所があり、地表の半分ほどが現れていた。そこを過ぎると杉を主体とした樹林の中を登ることになった。このとき上空の晴れ間が広がって陽が射して来た。そうなると杉木立に付いていた雪がいっせいに溶けて、雨粒となって落ちて来た。そこで雨具を着てザックカバーを付けたが、これではまるで雨中の登山だった。やがてブナの混じる雑木帯となると、そこはすっかり雪化粧だった。前日は雪だったようで、それがガスの中で溶けずに残っていたようだった。その雪もいっせいに落ちようとしていた。まるで登っている歩調に合わせるようにガスは上がっていたが、山頂はと見ると、そちらはまだガスに包まれていた。尾根の木立は途中から霧氷風景に変わって来た。それが陽射しに輝いている。それに見とれながらの登りとなって歩度はぐんと落ちた。もう一帯は冬そのままの景色だった。そして樹林帯の終わりが近づくと、この先で合流する左手の尾根が近づいて来た。そして前方には白銀の世界が広がっていた。もう山頂は近いと思えたが、その山頂はまだガスだった。その山頂へと雪の尾根を最後の登りにかかると、山頂のガスが一気に晴れて来た。そして霧氷の木立が点在する山頂が現れた。その山頂まで真っ白な尾根が続いている。これが東山の世界かと感激する思いで、山上に一人でいることなど全く気にならず、一歩一歩と山頂に近づいて行くのがたまらなくうれしかった。但し樹林帯を抜けたとあって、そこは強風の世界だった。吹き飛ばされそうと言うほどでは無かったが、風の強さに高い山を登っている実感だった。その風の勢いで、ガス雲が北から流れて来てはすぐに通り過ぎて行く。尾根に沿って北側に低木が疎らに続くが、樹林帯以上に見事な霧氷になっていた。それを見るのも楽しく、山頂への最後のひと登りだった。そして着いた山頂はネマガリダケのかけらも見えず、ただ真っ白な雪面に霧氷のブナの点在する優しげな風景だった。雪の東山のその清らかさにヤブ山のイメージはすっかり消えてしまった。その山頂は展望の山頂でもあり、北から東、南へと遮るものの無い展望が広がっていた。ただガスの影響かうっすらとした見え方で、氷ノ山の山頂はガスに包まれていた。そこで展望よりも山上の霧氷風景を楽しむことにした。山頂は西に向かって緩やかな坂になっており、そこにブナ林が広がっていた。そこが先ほどまでガスに包まれており、しかも強風とあってどの木も見事なエビのシッポを付けていた。それが陽射しの中、強風にあおられて瞬く間に落ちていた。まさに一瞬の世界の連続だった。暫く立っていると次第に木立の黒みが増しているように思われたが、それだけ霧氷が飛び散っているのだろう。一通り山上散策を終えて昼休憩とした。山頂より少し南側に下ると、全く風が来なくなった。そうなると陽射しの暖かさだけが感じられ、一気にのんびりムードとなった。その南斜面では足下に霧氷の尾根を、南に悠然と佇む沖ノ山を見ることになった。強風は次第にガスを吹き払って行くようで、周囲の山並みも分かるようになって来た。但しクリアな見え方には遠かったが。改めて山頂に立ち東を眺めると、北の氷ノ山こそ山頂はまだガスに包まれていたが、落折山から三室山、天児屋山と、兵庫鳥取県境の山並みが一望だった。山頂展望の後また霧氷へ目を向けると、もう半分以上は落ちてしまっており、最初に見た真っ白な風景は消えていた。そこで下山とする。下山は一つ東の尾根を下っても良かったが、それは次の機会としてすんなり来た道を戻ることにした。真っ白な尾根が急角度で真っ直ぐ延びている風景も悪くなかった。その先には氷ノ山が見えている。その風景を楽しみながらの下りだったが、樹林帯に入ると雪解けはいっそう進んでおり地表の見えている所が広がっていた。下り坂のスノーシューは扱いが不便とあって、そこで脱いだり履いたりを繰り返しながら下って行った。天気はどんどん回復しているようで、氷ノ山のガスは中腹を下る頃には消えていた。この下山ではほぼ尾根端まで尾根を辿り、緩やかな形で作業道に下り着いた。 ただ雪の東山に登りたい思いだけで登ったのだが、その山頂は想像とは違って何とも清らかな世界だったのは新鮮な驚きだった。下山中も山頂の雰囲気に包まれながらほのぼのとした気持ちで下って行け、そして下山を終えたときはそれがいっそうの幸福感となって心の中に広がっていくのを感じていた。 (2008/3記) |
<登山日> | 2008年3月21日 | 8:36スタート/8:48林道終点/9:10尾根に出る/9:51東向かいの尾根が見える/10:08[906m]標高点/10:21〜32林道に出る/11:30東隣の尾根と合流/12:00〜13:00山頂/13:55〜14:05林道に出る/15:05アカシ谷の林道に下り着く/15:16エンド。 | |
(天気) | 朝の若桜町の空はガス雲が広がっていた。ただガスは薄く、青空の覗いているところもあった。気温は麓で7℃ほど、登るほどに青空の部分は広くなってきたが、山頂方向はガスがかかったままだった。そのガスが薄れ出したのは山頂手前の樹林を抜けているときで、山頂に着くのを待っていたかのように山頂のガスが消えた。但し山頂は強風の世界だった。上空の雲の流れは速く、ガス雲が何度も来ては流れ去った。山頂の気温は4℃。視界はモヤがかっており、すっきりとはしていなかった。 | ||
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