TAJIHM の 兵庫の山めぐり <沖縄県の山 
 
辺戸岳    へどだけ 248.0m 国頭村(沖縄県)
 
1/2.5万地図 : 奥
 
【2006年1月】 2006-06(TAJI&HM)
 
   東麓の辺戸集落より  2006 / 1

 沖縄本島は南北に長い島だが、その地形はというと、平野部はほぼ南半分にあり、北半分に山岳部と丘陵部が集中していると言ってよさそうである。そしてほとんど平野部の見られないまま北の果てとなり、辺戸(へど)岬で終わっている。2006年1月初めに沖縄本島へハイキング旅行に出かけたとき、主目的は沖縄本島の最高峰である与那覇岳だった。その与那覇岳を登り終えたのが10日の昼前で、午後の予定としては「やんばるの森」の一峰でもと考えていた。ところがパートナーがせっかく沖縄本島の北部にいるのだから、最北端の辺戸岬を見てみたいと言い出した。道路地図を見ると、岬のそばに辺戸御嶽の名で248mの山があるのが分かった。ついでに観光ガイド本を読むと、辺戸御嶽は辺戸岳として紹介されており、「琉球の祖神アマミキヨが沖縄の島々を造ったときに最初にこしらえたのが辺戸岳」と記されていた。その文には登山道のことは書かれていなかったが、内容からは有るようにも推測された。そこで辺戸岬のついでに辺戸岳を登れればの気持ちを持って与那覇岳山麓を離れた。
 奥間林道を走って、辺土名集落に戻ると、後は国道58号線を北上して行くのみ。与那覇岳ではまだ雲が多く見られた空もすっかり晴れ上がって、左手の海がコバルトブルーに輝いていた。そして右手は山が海岸線まで迫っている。この風景を見ていると、沖縄にいるのになぜか北海道の宗谷岬に近づいているような錯覚を覚えてしまった。海の色こそ違え、突端となると似たような風景になるのであろうか。辺戸岬が近づくと、行く手に尾根から角のように突き出た岩山が見えた。それがどうやら辺戸岳のようだった。一目見て登って面白いのではと思えた。その辺戸岳を回り込むようにして着いた辺戸岬は、レストハウスがあり、一帯は公園となって遊歩道も作られていた。そして荒々しい断崖と大海原が広がっていた。美しい風景だったが、いわゆる観光地の雰囲気だった。その辺戸岬からも当然、辺戸岳は仰ぎ見られたが、西海岸から見られた姿とは変わって、幾つもの岩のピークが並ぶ特異な姿だった。辺戸岬はすぐに切り上げて、さっそく辺戸岳へと向かった。向かったと言ってもどこに登山道があるのか全く知らない。ただ周囲を巡れば何か分かるのではと思って、国道58号線を辺戸岳東麓側へと走った。すぐに辺戸集落が現れ、その傍らを抜けたとき、国道から脇道が山中へと登っているのが見えた。その道の入口には2台ほどの駐車スペースがあり、そこに何かの案内板があって山の姿が描かれているのがちらりと見えた。気になって引き返すと、案内板には「ようこそアスモリ岳へ」と言う言葉と、描かれた山のピークの一つ一つに山名が付けられていた。ただ辺戸岳の名は見えない。それでも、どうもそこが登山口のように思えたので、少し歩いてみることにした。車は駐車スペースに止め、急坂の車道を登り出す。車道は程なく小さな空き地のような所で終わった。そこには祠があって「黄金山」の文字が見えた。そこにも辺戸岳の名は見えない。ただそこより岩の露出した山肌に道が見られて、山頂方向に急坂で続いていた。そしてその道の両側には鎖やロープがしっかりと張られて、それに捕まりながら登れるようになっていた。それを見て、辺戸岳山頂に出られるのではと確信し、登って行くことにした。太いロープに捕まりながら登っていると、登山をしていると言うよりも、修験の山を訪ねている雰囲気だった。急坂のため一気に高度を上げて行く。始めは薄暗い樹林帯だったが、登るほどに高い木は少なくなり、周囲が明るくなってきた。途中でトラバースして南へと回り込むところがあり、その辺りでは展望が良く、足下に辺戸集落が望まれた。そして再び急坂を登って行く。磐屋のそばを通り、一登りして尾根に出た。そこから北にも南にも尾根道が付いていたが、山頂に向かって南へと登って行く。尾根に着いた位置では土道だったが、また岩肌となり一気に展望が良くなってきた。そしてごく短い時間で山頂に着いた。けっこう時間をかけて登って来たと思っていたが、時計を見ると歩き始めてから15分しか経っていなかった。遠くから見たときは1時間はかかると思っていたのだが、急坂を一気に登るので、ごく短い時間で山頂に立てるようだった。山頂一帯は岩場となっており、そこに立派な白い祠が二つ置かれていた。その一つの祠の裏に貼られた案内板には「ここは聖地です 創造主が人類の保護育成のために遣わされた御地の神々を統率される男神へ地上の天使たちが御恩と願い筋を上げる場所であります」と記されていた。そのような聖なる地なのだが、そこは最高の展望台でもあった。一帯の岩が石灰岩のためか高い木は全く見られず、360度の眺望が広がっていた。まず目を奪われたのが、視野いっぱいに広がる大海原だった。明るい光に海の色が鮮やかだった。辺戸岬もよく見えており、その北の海上には平べったい島が見えた。どうやら与論島と思えたが、そうなるとそこはもう鹿児島県と言うことになる。翻って南を見ると、「やんばるの森」がどこまでも続いていた。山頂は南北に長くなっており、その南の端に立つと西の海岸線も見えて、本当に絶景だった。聖なる静かな山頂、明るい空に青い海と緑の森、そして快いばかりの風が吹いている。この風景に出会えて本当に良かったの思いで山頂を楽しんだ。この山頂に立つ前は、北へと続く尾根を辿って、幾つか並ぶピークも訪ねようかと考えていたが、もう山頂だけで十分に堪能した気分になってしまい、暫し佇んだ後はすんなりと往路を辿って下山へと向かった。
 ところで帰宅後に辺戸岳のことを調べてみたのだが、地図に書かれている「辺戸御嶽」は「へどうたき」と読むようだった。その「御嶽(うたき)」とは聖地または拝所の意味のようなので、それからすると山名としては辺戸岳が相応しいと思えた。また登山口に書かれていた「アスモリ岳」の名は、やはり辺戸岳の別称のようで、漢字では「安須森」と書かれていた。また案内板に描かれていた四つのピークと名前(シノクセ岳、アフリ岳、チシャラ岳、伊平屋(いへや)岳」は、辺戸岳の四つのピークを南から書いていたようで、そうなると三角点のある最高点はシノクセ岳と言うことになるのだろう。
(2006/1記)(2010/2改訂)(2023/1写真改訂)
<登山日> 2006年1月10日 13:28スタート/13:45〜14:03山頂/14:18エンド。
(天気) 午前の薄晴れから更に天気は良くなり、午後は快晴の空が広がった。気温も20℃と上がって、北から吹く風は春風のようで快いばかりだった。
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辺戸岬が近づくと、突然のように岩の固まりが現れたそれが辺戸岳のようだった 先に辺戸岬を訪れた 岬から見る辺戸岳は岩尾根の続く姿だった 辺戸岬は断崖となって海に臨んでいた   
登山口には数台分の駐車スペースがあった 車道の終点から薄暗い中を登山道が始まった 登山道は急坂になっており、ロープが張られていた
登山道のそばの磐屋を見る 祭壇があった 尾根に出ると一気に展望が広がった もう山頂は目前となった
山頂には琉球風の祠が建っていた 祠の裏にはここが聖地であることが書かれていた 祠のそばに三等三角点(点名・辺戸崎山)を見る
山頂は最高の展望台だった 辺戸岬の沖には鹿児島県の最南の島、与論島がごくうっすらと望まれた

(←)
上の写真に写る
辺戸岬を大きく
見る

 (→)
 山頂から少し離
 れて山頂方向を
 眺めた

南には「やんばる
の森」が広がって
いた

左の写真に写る高
い山は西銘岳かと
思われた
やんばるの森を見下ろす碑には「御天卯之大神」と書かれていた 山頂の南端に立って西海岸の風景を眺める 遠くには本部半島がうっすらと眺められた 下山は登ってきた道を下る クサリとロープに掴まりながらだった