基山の名は山名として知るよりも先に、JR鹿児島本線の基山駅で知ったのだが、基山(きざん)が基山(きやま)町の名山として、また山上には基肄城跡があって、手軽なハイキングを楽しめると知ったとき、機会があれば登ってみたいと思うようになった。その機会が2014年9月に訪れた。秋分の日のことで、久留米市で一日が空くことになった。それならば久留米市からさほど離れていない基山を登ってみようとの考えが浮かんだ。鉄道利用で登れるのが、一番の理由でもあった。スタートはJR原田(はるた)駅だった。久留米駅から博多行きの快速に乗ると、三つ目の駅だった。駅前に出ると、インターネットで得た情報を基に、線路を越えて西の方向を目指した。鳥栖筑紫野道路の下を通り、続けて九州自動車道の下を通ると林道に入った。林道は幾つか枝分かれの道があって、一度コースを外してしまったが、すぐに気付いて正規のコースに戻った。登山口は階段道で始まり、最初に「お滝の行場」が現れた。その先も手頃な登山道が続き、史跡巡りコースに合流すると、遊歩道と呼べそうな歩き易さになった。標識もよく立っており、迷うことなく登って行けた。子供でも無理なく登れそうな山である上に、南側からなら車道が中腹まで通じているので、ごく手短に登ることも出来るようだった。実際に小さな子供を連れたファミリーを見かけた。山頂が近づくと、コースは二手に分かれた。迂回しながら山頂に向かうコースと尾根を辿って山頂に向かうコースだった。迂回しながら山頂に近づくのがメインコースのようだったが、こちらは尾根を辿るコースに入った。少し草の被さる小径を登って山頂部の北端に出ると、一気に展望が広がった。200mほど離れている山頂まではずっと草地が広がっており、すっかり牧歌的な風景だった。その風景の中を山頂に近づいた。右手となる西の方向には九千部山から背振山へと続く山並み、左手にも宝満山の尾根が見えていた。山頂が近づくと、賑やかな声が聞こえてきた。その声の方向を見ると、十数人の子供が遠足に来ていた。山頂手前まで来ると西斜面は草スキー場のようで、その草のスロープでソリ遊びをする子供の姿が見られた。またスロープの先は公園になっており、車が数台止まっていた。どうやら基山は車で山頂そばまで来られるようだった。山頂に着くと、そこにはどっかりと巨石(タマタマ石)が座っており、祠が据えられていた。その巨石の前に一等三角点(点名・防住山)が置かれていた。山頂まで来ると南の方向が一望となり、かすんだ視界の中に基山町の町並みが見えていた。その風景を見るためなのか、山頂から南へ少し離れた位置に展望台が作られていた。そののんびりとした風景の山頂で、昼休憩として25分ほど過ごした。昼休憩を終えると、下山は基山駅の方向に下って行くことにした。少し戻った位置より、東の方向への登山道に入った。ごく普通の山道で、足の下りるままに下ると、中腹辺りで林道に合流した。後はその舗装林道を下って行くと、水門跡のそばを通り、丸林集落へと入った。集落内ではメイン道路に入って南東へと向かうと、鳥栖筑紫野道路の下を潜りことになった。更に南東へと歩いて行くと、鹿児島本線が見えてきた。その線路が間近になった所の交差点を右折すると、基山駅までは1kmほどの距離だった。上空はすっかり曇り空に変わっていた。
(2014/10記)(2020/11改訂) |