2025年3月に実施した大隅半島山行の三日目は甫与志岳に向かった。22年前に登っていたが、そのときは単独行だった。パートナーが肝付山系の最高峰であり知名度も一番ではと思える甫与志岳には登ってみたいとの希望があり、そこで二度目の甫与志岳登山をすることになった。コースとしては前回と同様に甫与志林道の終点から始まる二股コースとした。県道542号線を走って南下すると、二股トンネルが近づいたとき左手に甫与志林道が分岐した。林道を終点まで走るつもりで林道に入ると、何と入口にはクサリが張られて通行禁止になっていた。クサリには鍵がかかっていた。こうなると林道を入口から歩くしかなかった。クサリのそばに僅かな駐車スペースを見たので、そこに駐車とした。クサリを越えて林道歩きを開始した。登山口まで3.5kmだった。林道はごく緩やかな道だったが、通行している車は無さそうな荒れ方だった。それもそのはずで、土砂崩れの箇所がすぐに現れて通行不能となっていた。その先もほぼ平坦と言える林道が沢に沿って続いた。ほぼ土道の林道が常緑樹林帯の中を続く様は、雰囲気として悪くなかった。その林道歩きを45分ほど続けたとき、「清純の滝」の標識が現れた。そちらに通じる小径に入ると、5分ほど歩いて滝の前に出た。清純の滝は名前に似合わずどっしりとした姿で風格が感じられた。来て良かったと思える滝だった。甫与志林道に戻って大きく半周するように歩くと、前方に甫与志岳が姿を現した。その位置より僅かな距離で甫与志林道は終点となった。林道入口から80分近く経っていたが、清純の滝への寄り道を除くとほぼ一時間だった。漸く登山道歩きとなった。登山道も緩やかだった。すぐに沢を横切ると、その先でもう一度沢を横切った。周囲は自然林で、緩やかな道とあってマイペースで歩いて行けた。その沢沿い歩きで三度目の沢の横断で左岸側に移り、四度目で右岸側に戻ったとき沢そばを離れて尾根筋に入った。やや傾斜のきつい尾根道は登るうちに抉れている所が現れて、少し歩き難さがあった。また傾斜もきつくなって急坂と言えそうだった。それでも季節的にひんやりとした空気感の中を登るので、あまりきつさは感じなかった。周囲はすっかり照葉樹林帯で、いかにも大隅の山を登っていることを実感出来た。「山頂まで5分」の標識が現れて、その先で現れたのがクサリが架かる大岩だった。その岩を登ってしまい、行き詰まってしまった。すぐに誤りに気付いて岩を下りると、岩の左手を巻いて先へと進んだ。山頂が近づくと、日陰に雪が残っているのを見た。また大きなツララも見た。樹林帯を抜け出ると、岩場が広がる所に出た。そこが甫与志岳の山頂だった。先着者が一人おり、聞くと姫門コースを登ってきたとのこと。そのコースは登山口まで姫門林道を走るのだが、姫門林道はスムーズに走れるとのことだった。そのため甫与志岳登山は姫門コースが主流になっているそうだった。先着者はすぐに下山したため、後はパートナーと二人きりになった。甫与志岳の山頂は好展望地だった。残念だったのは前日以上に春霞がひどく、開聞岳を含めて遠方はモヤに隠されていた。近くの山は見えており、北の方向に黒尊岳、南西に大尾岳を、南には岸良港をちらりと見た。ひとしきり山頂展望を楽しむと、岩の上で昼休憩とした。その山頂で45分ほど過ごすと下山に移った。下山は往路を戻るのみ。もう道の様子は分かっていたので気は楽だった。この下山では山頂に近い位置にある展望岩に立ち寄った。残念ながら木々の生長で見える範囲は狭かった。沢筋に下りてくると、目印テープを追って沢筋を歩いて、山頂から一時間少々で林道終点位置に戻ってきた。林道歩きでは清純の滝には立ち寄らず、緩やかな下り坂をひたすらマイペースを保って歩くと、一時間かかって入口到着となった。林道を入口から歩いたのは誤算だったが、登山としては特に問題も無く登れて、まずは楽しめた甫与志岳登山だった。
(2025/4記) |