2015年12月に出かけた鹿児島山行では、高隈山地の山を一つ登りたいと考えた。大篦柄岳、御岳、妻岳には既に登っていたので、残りの山からとなると自然と横岳を選ぶことになった。その横岳は御岳から西に延びる尾根上にあり、横岳とほぼ同じ高さで平岳が並んでいる。参考にしたガイドブックの「新・分県登山ガイド 鹿児島県の山」では横岳のみを対象にしていたのだが、平岳も併せて登ることにした。向かったのは山行三日目の12月26日。宿泊先は霧島市内のホテルだったので、東九州自動車道を国分ICで乗ると後はずっと高速道を走って南下した。鹿屋市で高速道が終わると、国道220号線に入って西へと走った。北には御岳が悠然とした姿を見せており、けっこう登高意欲をそそられたが、郷之原トンネルを抜けると今度は横岳と平岳の並ぶ姿が大きくなり、心はそちらに向かった。レンタカーのナビは花里町にセットしていたのだが、そこまで行かずに高隈山地の登山口への案内標識が現れた。その標識は北に見えている横岳に対してとなぜか思い込んでしまい、ナビを無視して案内標識に従った。北へと向かって行くと道はどんどん細くなったが、向かう先には横岳が見えていた。それで安心して車を進めていたところ、途中から北東方向に向かい出した。もう林道走行になっていたので、少々不安になってきた。その不安は正しかったようで、途中で現れたのは御岳の文字だった。どうやら御岳の登山口に向かっていたようだった。あわてて引き返して、改めて花里町を目指した。その花里町に入ったものの、最終目的地の自然の家キャンプ場の標識が現れなかった。もうナビは役に立たないので登山口がありそうな方向へと適当に車を走らせた。林道のような道をどんどん山の方向へと進めてみたところ、突然のように自然の家キャンプ場に着いた。管理棟は閉まっており、車は一台も見かけなかった。またキャンプ場の案内図を見ても、駐車場と書かれた所は無かった。但し目の前に広場があり、そこは案内図では「つどいの広場」となっていたのだが、無人でもあったので、そこに駐車とした。そのキャンプ場から始まるコースをガイドブックを頼りに歩き始めたときは、予定より少し遅れて10時過ぎになっていた。始めにキャンプ場内の小径を歩いて行くと、その奥より横岳への登山道が始まっていた。そこから横岳山頂まではガイドブック通りに歩いたので、ここでは登山道の様子については書かないが、照葉樹の多い自然林の雰囲気は悪くなかった。コースとしてもとんがり山までの急登、その先でも何度かきつい坂があって、しっかりと登る感があったのは良かった。一度、林道を横切ることがあり、そこより200mほど登って稜線に出ると、高隈山地の縦走コースに合流した。そこに着いて少し冷たい風を受けるようになったので、山頂では更に強い風があるのではと覚悟して登った。横岳山頂に着いたのは、稜線に出てから30分後だった。厳しい山頂と思っていたのだが、意外や山頂は明るい陽射しを受けており、ぽかぽか陽気だった。冷たい風はあるものの、ほとんど気にならなかった。その横岳山頂だが、ガイドブックでは360度の眺望があるように書かれていたが、それは以前のことのようで、樹木の生長により期待した高隈山地の眺めは、意外と木に邪魔されていた。南の方向は広く見えていたものの、そちらはモヤの強い視界のためにごくうっすらとしており、遠くは全く見えていなかった。桜島も木立の切れ目から覗いていたが、そちらもうっすらとした見え方だった。まずは暖かい山頂に立てたことを良しとして、暫し憩いのときを持った。昼休憩を終えると、横岳を後にして平岳に向かった。鞍部へと下るのだが、これがけっこうな急坂で、この日一番の急坂と思えた。鞍部に着くと南の方向に登山道が分かれていたが、それは下山で歩くコースで、平岳を目指して稜線歩きを続けた。平岳への道は平岳の名の通りに緩やかな道で、ほぼ平坦になったと思われた所が山頂だった。そこは横岳と同様に三角点は無く、更に樹林に囲まれて展望も無かった。山名標識が無いと、単なる通過点としか見えなかった。平岳は山頂に立てたことでもって良しとして、下山に移った。まずは横岳との鞍部まで引き返して、南へと分かれた登山道に入った。そこからは再びガイドブック通りに歩くことになった。また見事な照葉樹林帯を歩くことになり、林道まで下りて来ると林道を暫く東へと歩いた。その林道だが、登山に関する標識が全く無かったのは意外だった。どんどん東へ歩いて行くと、途中から南へと歩くようになった。そろそろ万滝コースが出てきてもよいのにと思いながら歩いていると、いきなりと言った感じで万滝の標識が現れて一安心することになった。その万滝コースは横岳からはけっこう離れることになったので、これは往路の道で下山しても良かったのではと、途中で思えてきた。その思いも漸く着いた万滝を目の前にすると、一瞬で吹き飛んだ。その迫力ある姿に回り道をしてきて良かったとしみじみ思えた。後はひたすらキャンプ場を目指して下るだけだったが、それが意外と苦労することになった。コースはどんどん下ると言った訳では無く、何度か上り坂があって、なかなか標高は下がらなかった。道もなぜかぼこぼことした所が多くあって、スムーズに歩けるとは言えなかった。それと標識が万滝を示すものはあってもキャンプ場を示すものは無く、あってもオリエンテーリングで使われる記号のみだった。その帰路で更に一苦労することになってしまった。途中で「青少年自然の家」の本館を示す標識が現れてそちらの道に入ったのだが、これは不正解だったようで、本館には早く着けるのだがキャンプ場からは遠くなってしまうことに途中で気が付いた。もう歩き続けるしかなく、結局万滝から1時間かかってのキャンプ場到着となった。最初は気楽なコースとしてスタートしたのだが、けっこう手厳しいコースであったことに、ちょっと心の準備不足だったと思いながらキャンプ場を後にした。
(2016/7記)(2020/9改訂) |