九重連山を代表する山として、久住山を初めて登ったのは、1993年5月のこと。前日の移動日が素晴らしい快晴だったのに、翌日の本番は天気が一気に下り坂となって、雨とガスの久住山になってしまった。これでは久住山を登ったとの思いは持てず、機会があれば再訪をと考えていたが、九州へ行くとなれば他にも登りたい山があり、一度は九重の山として大船山を登りはしたものの、なかなか久住山には足が向かなかった。
初登山から18年経った2011年9月は23日の秋分の日から三連休となって、その三日間とも快晴が予想された。その三日のうちの二日を登山に使いたいと考えたとき、久々に九州の山を登りたくなった。そして今回、漸く久住山の再訪を最優先と考えた。二日間を有効に使おうと、22日は会社からの帰宅後、すぐの出発とした。ひたすら山陽道を走って、九州を目指す。途中何度か仮眠をとり、玖珠SAで朝食を済ませた後、7時を回って九重ICを降りた。目指すは久住山の牧ノ戸登山口。朝の空は素晴らしい快晴だった。雲一つ無く、すんだ青空が広がっていた。四季彩ロードを走って飯田高原を目指して行くと、南の展望が開けたときにまず目に飛び込んできたのが、玖珠富士の涌蓋山だった。申し分なく、くっきりと見えていた。続いて現れた九重連山もしかりで、この日の登山に期待が膨らんだ。ところが牧ノ戸峠の駐車場に着くと、はや満車状態だった。200台駐車可とのことだったが、この快晴にこちらと同じく久住山登山を目指す人が集中したようだった。駐車場内に止めるのは諦めて、仕方なく県道11号線の路肩部に駐車としたが、その路肩部にも既に何十台と止められていた。準備を済ませてレストハウスの前に来ると、大勢のハイカーがたむろしていた。そしてレストハウス横の登山口には、ひっきりなしにハイカーが入っていた。その中にこちらも加わった。最初はコンクリート舗装の遊歩道を登って行く。背後には涌蓋山が見え、東の方向、遠く離れて耳双峰の由布岳もくっきりと見えていた。人が多いと言っても前後の人とは数十メートル離れており、急ぎもせずゆっくりし過ぎもせずで、抜くことも抜かれることも無く登って行く。見晴らし台が現れ、そこで一度足を止める。涌蓋山が広い風景の中で眺められた。そこより更に登ると、コンクリートと階段の遊歩道は小さな広場で終わった。そこに着いて前面に星生山と久住山の並ぶ姿が現れた。大きな姿で、快晴の下にくっきりと稜線を見せていた。またその右手、南西方向に見えるのは阿蘇の山並みだった。広場の位置で遊歩道は終わり、その先は普通の登山道の姿となり、沓掛山への登りが始まった。岩が増えて、山登りらしくなった。ただ久住山は子供も多く登る山なので、特に危険でも無く、目印通りに歩くのみ。小さなアップダウンがあって沓掛山のピークを過ぎると、ハシゴ場も現れたが、丁寧に下って行く。人が多いようでも、渋滞も無く沓掛山を通り抜けた。その先は平坦とも言える登山道となり、前方には久住山を、左手に星生山を見ながら進む。歩くうちに、右手に扇ヶ鼻への登山道が、また左手に星生山への道が分岐する。もう下山してくる人とすれ違うようにもなった。緩い登りがあってその先で下り坂となり、広々とした場所に出た。避難小屋がありトイレもあって、大勢の人が休んでいた。こちらも一休みをする。その位置では、もう久住山は間近に見上げるようにして眺められた。登山道は緩やかな登りとなったが、もう辺りは火山の風景が、登山道は岩がごろごろとしており、絶えず水蒸気が上がっている所もあった。この登りとなってまた少し前後の人と距離が詰まってきた。ただ一帯はどこも地肌がむき出しで適当に歩けるので、前の人に詰まって足が止まると言うことは無かった。特に急ぐ必要も無いので、出来るだけ前後の人と合わせるようにして登って行った。途中で中岳へのコースが分かれて登る方向が西へ変わると、少し傾斜がきつくなってきた。そこを登りきると、もう久住山の山頂は間近で、辺りは岩だらけになってきた。その岩の上を歩いたりして着いた山頂は、まさに人だらけだった。山頂もすっかり岩でごろごろと言った感じだったが、特に狭くもないので、大勢の人でも窮屈な感じは無かった。それにしても山頂の人の多さに、何とも人気のある山だと感心させられた。その山頂の一角にこちらも入って休憩とする。澄んだ空と鮮やかな視界、そして360度の展望が広がっていた。西に阿蘇山、北に涌蓋山、そして東から南へと九重の山並みだった。その展望を楽しみながら、伸び伸びとした気分となって過ごせた。その久住山からは次に中岳を目指そうと考えていたのだが、久住山に立って周囲を眺め渡すと、考えが変わった。稲星山も星生山もごく近くに見えているので、中岳だけでなく総てを歩こうと考えた。そこで登山地図を広げて考えたコースは、久住山から南隣りの稲星山に向かい、その次に中岳、天狗ヶ城と歩いて、最後に星生山に立とうと言うものだった。その登山の様子は文章で現すよりも写真で見ていただくのが分かり易いので、下の写真日記に譲るとして、終日快晴の下で、九重の山を思いっきり楽しむことが出来た。久住山こそ大賑わいだったが、稲星山に向かいだすと、人影はぐんと減って、一気に静かなハイキングになった。稲星山でのんびりした後は、九州本土で一番高い中岳に向かったが、こちらは急坂登りがあって、登山としても面白かった。そして天狗ヶ城へは御池を見ながらだった。最後に登った星生山は意外と岩場歩きが多くあって、アルプスを彷彿させる歩き味を味わえた。もうどの山にも個性があったのが面白かった。また久住山を色々な角度から眺められたのも良かった。おかげで7時間ほどのハイキングとなり、九重連山の中心部を思いっきり楽しめて、十分過ぎる満足感での下山となった。それにしてもこの日は終日雲の無い快晴が続いて、絶好の登山日和だった。
(2011/10記)(2020/11改訂) |