ソウルで気楽に山を楽しもうとなると、地下鉄沿線の山となる。地下鉄1号線の終点は逍遙山駅で、そこは隣町の東豆川市となり、ソウルの中心部からだと一時間半の距離となる。その逍遙山駅を起点として登れるのが駅名の由来となった逍遙山だった。
向かったのは2016年4月29日。前日にソウルに到着し、この日が山行の初日だった。空は快晴と呼んでもよかったが、少し濁りを帯びており青さは少なかった。逍遙山駅に降り立ったのは9時分過ぎだった。駅前には逍遙山の地図があるものと思っていたのだが、周辺を描いたものはあっても山が描かれた地図は無かった。案内標識があったかも知れなかったが、総てハングルで書かれており要領を得なかった。また逍遙山がある東の方向には近くの尾根こそ見えるものの、逍遙山らしき山は見えなかった。目の前の大通りを渡ると、すぐの所にあった登山用品店で逍遙山への道順を尋ねた。教えられたのはごく近くの角を曲がることだったので、その通りに歩くと商店街を抜けることになった。商店街の先で広い道に合流すると、そこに逍遙山と書かれた道路標識を見た。もう後は楽だった。逍遙山に通じる車道に入ると、もう観光通りと言えそうな佇まいとなった。広い車道に沿って歩道があり、その歩道を歩いた。歩道を囲む木々がちょうど新緑色になっていた。道そばには売店や食堂があり、トイレも点々とあった。車道側に広々とした駐車場が現れると、一般車はそこまでだったようで、その先も続く車道には車は見られなくなった。歩道は車道に沿って続いており、いつの間にか沢沿いを歩くようになっていた。新緑を愛でながら歩いていると、門になった建物が現れた。そこはチケット売場で、一人1000ウォン(約100円)の入山料を払って門を抜けることになった。そこを通過して次に現れたのが「逍遙山自在庵」の扁額が架かった一柱門(イルチュムン)で、そこがハイキングコースのスタート地点と言えそうな所だった。逍遙山は周回で歩ける山で、俗離橋(ソンニギョ)を渡った先でコースが二手に分かれると、左手のコースに入って右回りで歩くことにした。そこからのハイキングの様子は下の写真帳をご覧いただきたい。階段の道を登ったり岩場を登ったりと、韓国の低山ハイキングを十分に楽しめる山だった。下白雲台(ハベグンデ)辺りまで来ると尾根をチンダルレの花が飾るようになった。今が見頃のようで、色褪せた花は見なかった。この日は韓国では平日とあって道中ですれ違う人は少なく、どのピークに立ってもそこに人影は無かった。おかげで静かな山頂を楽しめた。羅漢台(ナハンデ)、義湘台(ウィサンデ)、公主峰(コンジュボン)と主だったピークを踏んで俗離橋に戻ってくると、意外と大勢の人がいて賑やかだった。尾根歩きを楽しむ人は少なかったものの、裾野で新緑を楽しむ人は多かったようである。逍遙山駅に戻ってきたときは16時が近い時間になっていたので、6時間ほどのハイキングになっていた。今少し短時間で終わるものと思っていたのだが、ゆっくり歩けばこれぐらいはかかるようだった。おかげで逍遙山は一日かけて楽しめる山だと分かって、ある意味良かったと思った。逍遙山駅は始発駅とあって、既に電車は着いていた。がらんとした電車に乗り込むと、この日の山行を思い出しながら出発を待った。
(2016/9記)(2020/7改訂) |