05年は桜の開花が遅く、4月も10日の日が近づき出した頃に、姫路の桜はようやく五分咲きになり出した。この分なら次の週は満開かと思われた、その10日に急な出張でニュージーランド北東の大都市オークランドに行くことになってしまった。11日の朝にオークランドに着いてみると、かの地は秋を迎えようかという逆の季節で、街路樹には黄色く色付いたものも見られた。そして爽やかに晴れており、空はどこまでも青く、恐ろしいほど澄み切った視界で迎えてくれた。そして滞在中はほぼこの上天気が続いて、短期の仕事ゆえ17日には帰ることになった。その前日の16日が帰国便待ちというか休日になった。そこでせっかくニュージーランドで一日空いたのだから、オークランド近郊でもハイキングを出来ないかと考えたが、いかんせん足が無いし、装備も無い。そこで市街地に山は無いかと調べると、市街地域と言える範囲内にイーデン山(Mt.Eden)のあることが分かった。小さな山にしては展望が素晴らしく、オークランド観光の定番コースにも入っているようである。このイーデン山を登るだけなら時間が短すぎるので、市街地の中心からアプローチして登ることにした。その16日土曜日も朝から快晴だったが、晴天続きでようやく視界にも多少にごりが出てきていた。それも遠方を見る限りで、まだまだ素晴らしい視界と言えるものだった。このオークランドは海岸近くの緩やかな丘に出来たような街で、しかも高層ビルが多いので、街の中心部からだとイーデン山は全く見えない。こういうときに地図を見るよりありがたいのはコンパスで、準備していたのは正解だった。(どうも太陽が北にあるのでは方向感覚が狂うのでは、と思って準備したものだった。)地図で街の概念をおおまかに掴んで、後はコンパスで方向を南東方向に定めて歩き出した。時間は朝の9時を過ぎたばかりで、休日の街はまだひっそりとした時間だった。その街中を走っている車はほとんどが日本車のようで、古い型の車が多い所を見ると、中古車を多く輸入しているものと思われた。もう気温は20℃近くに上がっており、歩いているうちにうっすらと汗ばんできた。緩やかな登り坂が多かったが、歩き始めて40分ほどすると小山が前方に見えてきた。山頂にモニュメントが見えており、バスもそのそばに見えている。どうやらイーデン山のようである。もう地図も要らない。更に10分ほど歩いてイーデン山の北麓に着いた。一帯は公園になっており、その一角に遊歩道のようなフットパスが見えた。そのフットパスを辿ることにした。ただイーデン山を見ると、山全体が公園化されているというか下草はあまり見られず、道が無くとも問題なく登って行けそうだった。フットパスはそのまま山頂に向かわず、一度西側に回り込んで車道と交差してから登り出した。山肌にはけっこう大きな木も見られ、うっそうとした所もあった。ただ小山だけにすぐに中腹で、一帯には大きな木が目立った。南方系の木が多いようで、どの大木も常緑樹だった。ほどなく芝地の広がる平らな所に出た。もう展望は良く、街の方向を見ると、この山よりもずっと高い328mあるスカイタワーが、ビル群の中から抜け出ているのがよく見えていた。この山は放牧地にもなっているのか、牛のフンが目立った。もう一帯の山肌はほとんど芝地で、ぽつりぽつりと木があるだけである。歩いているのはエクササイズの人か犬を散歩させている人で、どの犬も綱から放されて走り回っていた。その位置より芝地の中のフットパスをひと登りすると、もう山頂の一角だった。この山の成り立ちは火山だったようで、中央は火口跡なのか大きくえぐれていた。その火口の最高点、つまり山頂は南側にあり、そこにはモニュメントが建っていた。また舗装路がそこまで続いており、気楽に山頂に来られるようになっていた。まずは山頂に向かう。この山頂に着いて、近くで牛の放牧されているのが見えた。木陰で休んでおり、ちょっとした絵になる風景だった。山頂に着いて、辺りにいる観光客がほとんど中国系の人であることが分かった。この後にも何台かの観光バスが着いたが、総て中国系の人だった。(このイーデン山の後に市街地を歩いてみたのだが、街にはやたらと中国系の人が多かった。オークランドの街の3割以上を占めているのではと思えるほどだった。)ともかくイーデン山の山頂に立って、360度広がる素晴らしい展望を眺めることにした。ビル群のひしめく市街地から東西の湾、住宅地が麓から視野いっぱいに広がっている。またこのイーデン山と同じような砦のような小山が幾つか見られた。絶好の日和で視界も良く、申し分のない眺めだった。ただ陽射しは少し強すぎるようだった。(陽射しについてはニュージーランドの陽射しは少々強すぎるようで、午後の陽射しなどまぶしすぎるほどだった。それでいて暑さは感じない。どうも紫外線との関係もあるようである。)ただ湿度がかなり低いようで、陽が陰ったり木陰に入るとさっと涼しくなった。山頂は周遊出来るようになっており、それを巡ったりベンチで憩ったりと、好天の山上を十分に楽しんだ。下りは登りとは別のフットパスで北の方向へと下ったのだが、下るうちに北東へと向かい、下り着いた所は、登りで歩き始めた公園の別の一角だった。
(05/4記)(12/8改訂) |