但馬海岸道路は、かつては有料道路だっただけに観光道路の性格があり、日本海の荒波に削られた厳しい海岸風景を楽しみながらのドライブが出来る。また山好きの者には海岸まで迫る峰々の眺めもうれしい。東から走ると日和山を過ぎた頃より海岸風景となり、田久日集落を過ぎて道が南に大きく曲がり出すと、視界が大きく開けてくる。竹野浜の白砂風景が広がるのである。海の青さも一際美しい。その海岸風景に大きなアクセントとなっているのが猫崎半島である。その中央のピークが賀嶋山で、東から遠望するとキューピーさんが寝ているように見え、賀嶋山はふくらんだお腹のようも見えてくる。別名、キューピー山と呼ばれているとか。2004年2月21日に、この猫崎半島のハイキングを楽しんだ。この日は午前を兵庫北東端となる堂山に登り、午後に入ってのハイキングだった。2月にしては異常に気温の高い日で、昼ともなると20℃を越しているようにも思われた。Tシャツ1枚でも、寒さは全く感じなかった。半島基部にある駐車場より、まずは柴栗山の西となる海岸縁を歩き始めた。海岸は荒波に洗われて、その浸食作用で様々な穴が空いていた。「波食甌穴群」と呼ばれるその珍しい風景に辺りをうろついたが、流れ着いたゴミの多さにも驚かされた。海岸を一巡りすると、猫崎半島ハイキングの基点となる賀嶋公園遊歩道の入口に着いた。ここからはコンクリート舗装された遊歩道が続き、ジグザグに登って行くと、短い時間で賀嶋公園に出た。さほど広くない公園だったが、桜が植えられており、その季節には賑わうのであろう。ここからはもう賀嶋山は目前である。公園の先からは尾根歩きとなるが、入口に立入禁止の標識があった。道が山道となるためで、ハイカー向きで無い人を対象にしてのことと思えた。歩き出すと、むしろ手頃と思える小径が続いており、十分に歩きやすい道だった。山頂へ向かって急坂登りになると、周囲に海岸風景が広がり、背後に竹野の家並みも見渡せた。急坂は長くは続かず、緩やかに樹林帯に入って行った。ヤブツバキを始めとして常緑樹がうっそうとしており、その薄暗い中に三角点があった。兵庫北端に居るとは思えず、その日の暖かさもあって、むしろ淡路島の南端に居るような錯覚さえ覚えた。このピークを抜けて下り坂となり、少し登り返すと、呆気なく灯台に着いた。灯台のスペースは狭く、足元には厳しい断崖風景が広がっていた。その先は大海原である。この季節なら波の荒々しさを目にするのだろうが、この日の天気と同様に波は穏やかで、遠方はモヤに霞んで春の海を眺めている風情だった。道は灯台までだったが、ロープが付けられて、今少し崖ぎわまで降りられそうだった。行ける所まで行ってみようと、ロープを伝って降りて行くと、なるほど波ぎわまで近づけたが、途中には少々危なっかしい所もあり、お薦めは出来ない。猫崎灯台で日本海を眺めるまでのハイキングが無難だろう。帰りは同じ道を戻るが、Tシャツでも暑いほどの陽気とあって、竹野浜に戻り着いたときは、すっかり汗まみれであった。ただうれしいのは、ごく近くに竹野温泉が有ったこと。400円と手頃な値段で、さっぱりすることが出来た。
(2004/3記)(2018/10写真改定) |