登る山の選び方として、一等三角点のある山を選ぶのも方法の一つと思えるが、淡路島には一等三角点の持つ山は諭鶴羽山(608m)に釜口山(476m)、そしてずっと標高の低い竜宝寺山の三山がある。2009年11月の最終土曜日に淡路島の低山を幾つか登ることを計画したとき、その一つとして選んだのが一等三角点を持つ山としての竜宝寺山だった。
朝の空は少し黒みのある雲が広がっていたが、天気予報では午後からは晴れてくるとなっていた。この日は三つの低山を登る予定だったが、淡路の低山を登る気になったのも、高速道の休日割引制度があってのことで、通常料金ではちょっと考え難いところだった。始めに津名一宮ICに近い高倉山を登って、下山を終えたのは12時。天気予報通り昼になって、いくぶん空は明るくなったようで、空の一部では青空が広がろうとしていた。県道466号線を走って竜宝寺山の方向を目指すと、山頂近くに建物の見える山が左手前方に見えてきた。それが竜宝寺山のようだった。竜宝寺への案内標識も現れてそれに従って走ると、南麓と言うか南側の中腹辺りに大きな寺院が建っていた。それが竜宝寺で、その前に広い駐車場があった。駐車場に車を止めて、左手前方に見える山門へと歩き出した。最近になって建て直されたのか、山門に通じる石畳みも山門もまだ新しさがあり、落ち着いた感じは出ていなかった。むしろ何やら立派に作っただけの仰々しさが感じられた。境内に入ると、ちらほら人を見かけた。さほど広くない境内だったが、カエデの紅葉が美しかった。その境内の脇から山頂方向に急角度で石段が続いていた。山頂そばに建つ奥之院への階段だった。奥之院との標高差は70メートルほど。階段には一定間隔で踊り場があったが、特にそこで足を休めることも無く、一定のリズムで登って行った。奥之院が近づくと背後に展望が広がってきて、高度感が感じられた。けっこう距離があるように思われたが、しっかり登ったので本堂から10分とかからず奥之院の前に出た。そこには奥之院と共に閻魔堂も建っていた。その背後の一段高い所が山頂だった。そこへの小径は見えなかったが、閻魔堂の左手より赤テープの目印が付いていた。こちらはそれに逆らって、奥之院の右手から山頂に立つことにした。ひょいと登って急斜面を越すと緩斜面となり、少し灌木ヤブに入った中に三角点を見つけた。一等三角点はさすがに大きく、この低山にしては場違いな大きさだと思ってしまった。その三角点周りは雑木が雑然と囲んでいた。あまり特徴の無い山頂だったが、奥之院を足下に見る位置に戻るとそこは展望地になっていた。南に淡路の尾根と呼べそうな山並みが眺められた。めぼしい山はと見ると、左から柏原山、先山、諭鶴羽山と、淡路を代表する山が頂を覗かせていた。その眺めを楽しんだ後は、奥之院の前に戻ってひと休みとした。そのさほど広いとは言えない境内からも山頂と同じく南の風景が一望で、悪くない場所だった。ただ空模様はまた雲が増えようとしていた。陽射しがあるとすっと暖かくなったが、陽が陰ると冷たい風も出て肌寒さを感じた。境内での休憩を終えると、後は石段を下るのみ。急階段を下るのは慎重さを必要とするのでゆっくりと下ったが、それでも奥之院から駐車地点までは16分だった。一等三角点を持つ山としては何とも簡単な山だったと言える。あまり登山らしさは無く参詣する雰囲気で終わってしまった感はあるが、その竜宝寺のことよりも山頂のやけに大きな三角点がやはり印象として残る山だった。
(2009/12記)(2019/4写真改訂) |