伊勢山を過去に2回登っているのだが、いずれも林田町側からのアプローチだった。そこで次に登るときは東側の「打越木もれ日の森」側から登ろうと考えていた。それを実行したのは2006年の梅雨入り後の晴れの日で、午後からの登山だった。緑台の住宅地を抜けて「打越木もれ日の森」の駐車場に駐車する。そこからは北へと谷あいの遊歩道を歩き始めた。真昼どきにスタートしたのだが、まだ6月の前半とあって気温は25℃ほどで、蒸し暑さはほとんど感じなかった。むしろ雑木林の中はいくぶん涼しさも感じられた。その遊歩道を暫く進むと右手に向かう小径が分かれた。その道の方向は伊勢山から南東に延びる尾根へと向かっていた。まずその尾根に立つことを目的としていたため、その小径へと入った。すぐに登り坂となり10分も登れば尾根に出た。そこは伊勢山の本峰と298mピークとの中間地点辺りだった。尾根までも適度な山道だったが、尾根にもはっきりと山道が付いており、「西回りコース」と記された標識も見られた。「打越木もれ日の森」側の尾根からずっと続いていることを意味しているのだろう。すぐに伊勢山を目指して歩き始める。雑木に囲まれた尾根道だったが、ときおり露岩があって、そこに立つと北に展望が広がっていた。好展望の期待出来る伊勢山西峰でゆっくりするつもりだったので、長居はせずに先へと進んだ。尾根からの展望は北だけで無く、南の方向にもあって、夢前川河口部に近い山並みが眺められた。尾根からの展望を楽しみながら歩いたため、伊勢山本峰に着いたのは、尾根に出てから30分ほど経っていた。そこは三等三角点があるものの、木立に囲まれて相変わらず展望の無い山頂だった。一帯は少し裸地になっており、休むだけなら適度な所だったが、休憩場所なら西峰が断然良いので、すぐに西へと向かった。どうも本峰のピークは単なる通過点になってしまう。一度50mほど下り、登り返した所が西峰だった。そこには以前に見かけなかった神座の窟の案内板が設置されており、またロープも張られて、けっこう整備されて来ているようだった。まずは神座の窟の上となる西峰の最高点で一休みとした。そこは岩場とあって視界を遮るものは何も無く、一等の展望台だった。西から北へと姫路市北西部の山並みが一望だった。ただ梅雨どきとあって、空気は水気を含んでおり、くっきりとした視界にはなっていなかった。北に見える笠形山は、その存在がようやく分かる程度だった。一息ついたところで、今立っている岩場の下、神座の窟を訪れた。その空洞に入って薄暗い中に身を置いていると、やはり神聖な場所と思わずにはいられない。そこに祀られている石仏を自然と拝んでしまった。その窟も絶好の展望場所で、腰を下ろしてそこから見える風景を暫し楽しんだ。やはり繰り返し訪れたくなる場所である。この神座の窟に着いて本日の目的は達した訳だったが、この先は今少し尾根歩きを楽しむことにした。「打越木もれ日の森」側に回ることも考えたが、この日は引き返す形で、伊勢山から東へと延びる尾根を辿って、四等三角点のある奥山まで歩くことにした。尾根道は歩き易いままに続いており、適度なアップダウンもあって良い感じで歩いて行けた。298mピークを過ぎて奥山が近づくと、露岩の尾根も現れて、展望にも恵まれていた。そして奥山まで来ると、足元には緑台の住宅地が広がっており、この山がずいぶんと家並みに近いことが分かった。もう三角点も見たことでもあり、後はどうやって緑台に下りようかと考えながら次のピークとの鞍部へと下って行くと、その鞍部で尾根道から住宅地への小径が分かれていた。もう後はその小径を辿ればよいだけである。数分も下れば堰堤に出会い、そこはもう住宅地の外れだった。この日は伊勢山が目的だったため、伊勢山の東尾根だけを歩いたが、ここで一日を楽しむのであれば「打越木もれ日の森」から周回することも出来、姫路市の近郊のハイキングとしてはけっこう面白い所だと、認識を改めてさせられた。
ところでこの日、山上で悲しい出来事を見てしまった。伊勢山本峰を離れて西峰へと近づいていたときだったが、突然頭上で大きな羽ばたきが聞こえたかと思うと、小鳥が一羽落ちて来た。頭上を見ると大きな鳥がすっと飛び去った。一瞬の出来事で最初何が起きたか分からなかったが、落ちて来た鳥はまだ息があり苦しそうにしていたので、そっと拾ってみた。その鳥の軽さに驚いたが、腹部から内臓が少し出ていた。どうやら鳶か何かの大きな鳥に襲われたようだった。どう見ても助かりそうにないので、地表にそっと置いて離れたが、西峰から戻ってみると事切れていた。そのままにもしてもおけずまた拾い上げると、まだ身体には温もりが残っていた。どうしたものかと思案したあげく、本峰の三角点の上に置くことにした。そして弔いの言葉をかけて本峰を離れた。(後で鳥の名を調べたが、ジョウビタキに似ているように思えるものの、よく分からなかった。)
(2006/6記)(2011/12改訂)(2020/10改訂2) |